僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

前夜

2007年01月09日 | SF小説ハートマン
「お帰りなさい。お父さん今日は早いんだね。」
「宇宙(ひろし)ただ今。おっ、今日は焼き肉か。」
「どうして分かるの?何かにおう?」
玄関でお父さんが笑っている。

「ママー、お父さん帰ってきたよー。焼き肉だって言ってるよー。」
「あらぁ早いのねぇ、お帰りなさい。」
「お父さんが、今日は焼き肉だって言ってるけど本当なの?」
「そうよ、あなたが切ってくれた玉ねぎも沢山焼くわよ。」
「どうして分かるんだろうね。」
「さっき電話で言ったからじゃない?」
「えーっなぁんだぁ、初めっから知ってたのかぁ。」

「はははっ超能力かと思ったか?」
お父さんがキッチンをのぞき込んでウインクした。
「いいけどさ、もうご飯の準備するよ。」
「あぁ、そうしとくれ、お父さんはシャワー浴びてくるから。電車がすごく混んでてね、マフラーはずしたんだけど汗かいちゃったよ。」

明日はいよいよ僕の試験の日だ。高原大学附属、ちょっと心配だけど吉田先生も『宇宙君はいつも通りすれば大丈夫です』って言ってたし…。

「宇宙、なにぼんやりしてるの。こっちに来て手伝って。」
「はーい。」
「ほら、このお肉朝からマーマレード入りのママ特性ダレに漬けといたから、おいしいわよぅ。でも、あなたは玉ねぎだけでいいんだっけ?」
「お肉だってもちろん食べるよ。後さぁアレも作ってよね。」
「アレって?」
「アレだよ、お好み焼きの。」
「あっそうだったわね。あれ美味しいものね。じゃ小麦粉出すから宇宙が作ってくれる?」
「うん、いいよ。お父さんが来るまでに作ろう。」

何も具が入っていないお好み焼きを薄く焼いて餃子の皮みたいにしてお肉を乗せて食べると美味しいんだ。玉ねぎも大好きだけど、これも大好き。

「ママぁ、もうホットプレートのスイッチ入れていい?」
「そうね、そろそろパパも来るかしらね。」
「パパじゃないでしょ。」
「あら、パパって言っちゃったかしら。」
「ママいつも言ってるよ。お父さんって言って下さいって吉田先生が言ってたでしょ。」
「宇宙はママって言ってていいの?」
「僕は面接ないからいいんだよ。」
「はいはい、分かったわ。はい、小麦粉ね。スプーンは自分で出してね。」

鼻歌なんか歌っちゃってママは嬉しそうだった。もちろん僕もだ。
コメント (7)
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