ユキオは早速応募することにして、説明会に参加した
毎回体温と血圧を測定し、看護師の問診を受けること
シャワーは浴びずに開始時間までプールサイドで待つこと
キャップには名前を書いた布を貼り付けること
など、注意点を確認する
「あなたも受けるの?なに、平泳ぎ?」
声をかけてきたのは、いつもプールで顔なじみの金子さんだ
噂に聞いたところでは、中国残留孤児なのだそうだ
金子さんという名前も、中国で金という名字を
日本では金子とか金沢に直す人が多いのだそうだ
「はいっ一緒なんですね、いやぁ心強いな」
「何言ってんの、こんなお婆さんじゃ何の役にもたたないわよ」
「でも、知ってる顔って1人だけですよ」
「そう言えばそうねぇ」
「ちゃんと泳げるようになりますかね」
「アタシはそれより血圧が心配よ」
「高いんですか?」
「ほら、基準が160/90以下ってことじゃない、アタシはぎりぎりかも」
「適当に書いちゃえばいいじゃないですか」
「ほら、あそこに座ってる看護師、あの人が厳重にチェックしますって言ってたよ」
「まぁまぁ大丈夫ですよ、いつも泳いでるんだし」
「ならいいけど…」
と言うわけで泳法別水泳教室が始まるのだ
つづく