残りわずかとは、ネット通販のことでも、バーゲンセールのことでもない。
自分が生まれた時、生家には祖母、両親、姉と二人の兄が居たので7人家族であったようだ。
あれから3/4世紀が過ぎた今、5歳違いの兄と自分の二人だけになってしまった。順番に欠けているから自然なのだが、人は必ず消え去って行く。
今宵二人きりになった兄の誕生日を祝った。その兄も傘寿の歳になった。
自分が盛岡に落ち着いたのも、会社を起業したのもこの兄の影響が大きい。
社会に出て何を目指すのかもなく、東京や仙台でその日暮らしをしていた自分が、薄氷を履みながら何とかなったのも、この兄のお陰であった。
何年か前、気まずい仲になったこともあるが、今は兄が居なくなるのを思いたくもない。
幼少の頃、兄は野鳥捕りの名人だった。その頃から自分は兄の後ろ姿に着いて来たことになる。
兄は学業も優秀で社会人に出てからも常にトップランナーを走って来た。盛岡に落ち着いてからも兄の名声に触れる事が多かった。
次第に自分の中で最大のライバルは兄になっていた。
兄の後ろ姿を追いかけながら、経営者の道を切磋琢磨しながら歩いて来た。
兄弟に流れているDNAは潔さにも繋がり、今はおたがい後進に道を譲った世捨て人となっている。
=おわり=
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