暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

雛祭り・茶飯釜の茶事へ招かれて・・・(2)

2025年03月23日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

 

つづき)

後座になり、席入りすると、初座の時よりお雛様たちが整然とお澄まししているように見えました。

点前座にまわると、先ほどご飯を炊いた釜から湯気が上り、熱い濃茶が楽しみです。色絵の四方水指に心惹かれ、その前に茶入が置かれていて、仕覆は「鳥襷緞子」でした。

お雛様も客もシーンと静かになり、濃茶点前が始まりました。

長年研鑽を積まれたご亭主様の小堀遠州流の所作を拝見するのがいつも楽しみなのですが、私からはお点前が見えにくく残念! 

  (上品な主菓子・・菓子銘が?  千歳船橋・東宮製)

茶入から濃茶が掬い出されると茶香が徐々に部屋へ満ちていき、たっぷり練られた濃茶を3人で頂戴しました。

この日は小堀遠州流に畳まれた出し袱紗を使って、使い方を教わりながら濃茶を飲みました。一口飲むと、薫りよく甘みのある濃茶が喉を潤していきます。

3人分ですが、一人で飲んでしまいたいほど美味しかったです。ご馳走様!でございました。濃茶は「松韻の昔」(一保堂詰)でした。

    (濃茶点前中のご亭主)

主茶碗は伊羅保のような肌合いと形、黒と茶の釉薬が絶妙に交叉する景色、しっかりした茶溜りの作りが印象に残りました。赤膚焼で作者は楠部弥一でした。

もう一碗は朝日焼の「楽」茶碗。小堀遠州流・15代宗通の八十歳記念の茶碗で「楽」という字が書かれ、次のような和歌が書かれた箱書があるそうです。

   たのしみは命のほかに何かあらむ

        ながらえてこそ在明の月

茶入は唐物で「岩城文琳(写)」、茶杓は象牙(利休形)でした。

   (薄茶の設え・・・茶碗に注目!千鳥茶巾の上に茶筅が上向きです)

薄茶になり、水指が色絵四方から染付菱形へ変わりましたが、どちらも素晴らしく、黒漆の点茶盤によくお似合いです。

薄茶では懐石担当のSさまもお席に入られて、茶飯釜や懐石のことなどいろいろお話が弾み、楽しゅうございました。

旅箪笥から春を感じる茶碗が次々と出され、薄茶が点てられました。

干菓子3種を頂きながら、各服で点ててくださった美味しい薄茶(山政小山園の「小倉山」)をたっぷり頂戴しました。

(干菓子は「梅とウグイスと雛あられ」・・・東宮製)

      (春を感じるステキな茶碗がいっぱい・・・)

最後に薄器と茶杓が拝見に出されました。朱の薄器は黒と一双になっていて15代小堀宗通箱書です。

茶杓は紫野・大亀老師の銘「佐保姫」・・・冒頭のお手紙の和歌が頭をよぎりました。

    佐保姫の 筆かとぞみる つくづくし 

        雪かきねくる 春のけしきは      藤原為家

お雛様に見守られながら和やかに楽しく時が過ぎて、いつまでもこのままでいたい・・・そんな居心地の好いお茶事でございました。

茶事終了後、仕覆師Uさまが仕覆用の裂地を見せてくださいました。珍しい古裂、インドやヨーロッパの古い更紗やモールなどめったに見れない貴重な布たち・・・Uさま、ありがとう!

皆様、ステキな春の一日をご一緒できて、ありがとうございました。 

(カメラと携帯を忘れてしまい、写真はFさまのご提供です。ありがとうございます

 

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雛祭り・茶飯釜の茶事へ招かれて・・・(1)

2025年03月21日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

 

令和7年3月14日に小堀遠州流の茶友Yさまと茶友Sさまから「雛祭り・茶飯釜の茶事」へ招かれました。

次のような春の和歌が書かれた案内状がYさまから届きました。

   佐保姫の

      筆かとぞみる

     つくづくし 雪かきねくる

          春のけしきは         藤原為家

 

いろいろな茶事がありますが、茶飯釜の茶事は応用の茶事で特に決まったやり方はなく、亭主がいろいろ工夫するものと昔お習いしました。

15年?前に伺った茶道会館・北見宗峰先生の茶飯釜の茶事以来かもしれません。その時の印象や思い出が今なお鮮明で、その茶事で満足していたのかもしれません・・・。

風流な茶飯釜鉄風炉を茶友からいただいたので、YさまとSさまに茶飯釜の茶事のご指導をお願いしたところ、急に御二人から茶事へお招きを受け、喜び勇んで出かけました。

不肖暁庵が正客、暁庵社中のAYさまとY氏、仕覆師・Uさま、茶友Fさまが詰、懐石はSさまです。

待合で甘茶を頂戴し、詰Fさまが喚鐘を打ってから外の腰掛待合へ出ました。

しばらくすると、ご亭主が桶を持って現われ、蹲の水を周囲に撒いて清め、手や口を漱いでから桶を戻し、今度は手に羽箒を持って枝折戸を開け、無言で全員とご挨拶を交わし、茶室へ戻りました。

蹲を使い席入すると、立礼席の設えでした。

八畳の床には所狭しとばかりお雛様が飾られ、雪洞の灯りの元、桃の花と菜の花が雛飾りを華やかに引き立てています。素晴らしい雛と雛道具を拝見してから点前座に回ると、点茶盤にあの風流な鉄風炉が、左下には道庫代わりの旅箪笥が置かれています。

ご亭主が一人一人と挨拶を交わされ、ご挨拶を伺いながら今日の茶事を全員が心待ちにしていたようで私まで嬉しくなりました。

風炉の炭手前が始まり、風炉を羽根で清める所作が裏千家流とは違うのが興味深く、釜を下ろす位置や道具の置き方も違います。茶飯釜には火力が必要なので、びっくりするほどたくさん炭が継がれ、傍に寄って拝見させてもらいました。

香合は「都鳥」(隅田川焼、白井半七作)、香は梅が香(鳩居堂)です。

   (「都鳥」香合・・・隅田川焼、白井半七作)

いよいよ茶飯釜です。釜がいったん水屋へ引かれ、濡れ釜(見どころ?)として登場しました。米の入った竹籠や茶巾などの盆一式が運び出され、竹籠からコメがさらさらと入れられました。

釜が据えられると、早く火が熾きるように全員で火吹き竹で吹いてコメが煮立つのを待ちますが、その間に客同士でいろいろなお話をしながらも釜の様子を気遣います。火力が心配で2度も吹いてしまいました・・・まさにここが茶飯釜ならではの一座建立でしょうか。

     (釜から吹きこぼれ始めました)

思ったより早く煮えが付いて釜から白い汁が吹きこぼれ出しました。吹きこぼしをご亭主は濡れふきんで丁寧に優しく拭いています。

詰Fさまが「そろそろかしら? チリチリという音がしたら釜を上げるのだけれど・・・」と言いながら釜へ近づくと、音が聞こえたのでしょうか、亭主が釜を上げて炊きあがりです。

本来はここから10分くらい蒸らすのですが、懐石の最初のご飯は少し芯の残るくらいの炊き立てを出すことになっているので、すぐに飯碗へよそいます。暁庵の裏千家流ではその場で飯碗によそいますが、小堀遠州流では水屋へ引いてそちらでよそうようです。

汁の入った鉄鍋を風炉へ掛け、汁がよそわれ、向付、飯、汁が載った折敷が運び出され、ご飯を頂くと少し芯が残るアルデンテ、釜上げのタイミングがぴったりだったことがわかります。

この頃、湯を入れた釜が戻され、風炉に掛けられました(釜をゴシゴシ洗うと鉄さびが出るので、ぬめりを残すくらいが湯が美味しいそうです・・・う~ん!奥が深そう)。

斬新なトマトの汁が美味しく、ここからはSさまのセンス満開の懐石が次々に登場・・・もうもう舌鼓を打ちながらすべて美味しく頂き、これも茶事の楽しみですね!   つづく)

    向付(烏賊、ウド、菜の花)

    煮物椀(ピンクと白の真蒸、筍、ウド?)

   焼物(ステーキ、椎茸・クリームソース添え)

 

      雛祭り・茶飯釜の茶事へ招かれて・・・(2)へつづく

 

 


大炉の夜咄の茶事へ

2025年03月18日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

令和7年如月26日に「大炉の夜咄の茶事」へ出かけました。やっとできました。

Sさまに誘われ、Yさまと3人で星岡(杉並区阿佐ヶ谷)へ初めて伺いました。

いろいろお心こもるおもてなしや素晴らしい体験があり、思い出すままに書きとどめておきます。

15時のお席入りでした。寄付に入ると、座敷行灯や床に置かれた手燭が時代を感じるもので興味深く、これからどのような灯火が登場するのか楽しみになりました。煙草盆の隣に置かれた小さな手あぶりに懐かしさを感じます。

手に取ると赤い火種が温かく、可愛らしい座布団付きでした。後でご亭主に伺うと、修行僧が僧衣の袂に入れて暖をとったという手あぶりで、その昔、淡路島の茶事で出会った手あぶりを思い出したのです。

席入すると、八畳と六畳が続いた広いお部屋で、六畳に大炉が切られています。

床の御軸は、有栖川熾仁親王の和歌の短冊でお読み上げ頂いたのですが・・・「みよしのの・・・」

ご挨拶のあと、夜咄なのでお菓子「越の雪」が出され、前茶を頂きました。

大炉の初炭になり、初履きで客9名が大炉近くに寄って炭手前を見守ります。大きな釜は野溝釜、炉中の雪輪瓦の向こうに置かれた湿し灰が赤い下火を囲むようにさらさらと撒かれ、胴炭から炭がつがれ点炭で席へ戻りました。

その後も大きな野溝釜の蓋の置き位置が亭主の動きやすいように変化して面白かったです・・・。

香は淡々斎好みの「加寿美」(松栄堂)、香合は信楽焼の「狸」、かわいらしい顔の狸でございました。

懐石になると茶室内はうす暗くなり、最初にご亭主が折敷を全員へ、次いで膳燭が運び出されました。これらの燭台が全部違っていて見ごたえがあり、唐銅、楽焼(慶入作)、美濃・黄瀬戸、徳島・大谷焼の4つでした。

魯山人の「星岡茶寮」の流れを受け継いだ懐石は、春の食材を使い薄味でどれも美味しゅうございましたが、もう頂戴するのが夢中で、詳細を思い出せません・・・トホホ  辛うじて、最初の折敷の写真だけが・・・。

  (最初の折敷と近くの膳燭、こちらは楽慶入作)

中立で庭へ出ると、そこには灯篭や足元行灯が幽玄な世界を創り出していて、2月終わりだというのに夜風が心地よく感じます。銅鑼の響きにうっとりし、蹲を使い後座の席入りをしました。

(後座の床には払子とセキショウ)

濃茶が各服で出され、すべてご亭主様が練ってくださいました。暁庵は鉄絵の今高麗茶碗で、よく練られた甘みのある濃茶を頂戴しました。

大炉の一番のハイライトの後炭手前ですが。ベテランのご亭主は自然体でさらさらと行われ、ちょっと物足りないくらいです・・・やはり、炭手前は拝見するよりも亭主としてするのが一番ですね。

次いで薄茶になり、薄茶をまたまた全員分(9人分)を各服で点ててくださり、干菓子と共に頂戴しました。

ご亭主はいろいろなお話をしながらお茶を点てられ、半東さんが絶妙なタイミングでご亭主をさりげなく助けられて、お二人の見事な連携プレー(?)が心に残りました。半東さんは無駄のない美しい動きで茶碗を用意したり、運び出されたり、凄かったです・・・。

もう一つは灯り、小灯しがいくつか用意され、その透かしの花も好かったのですが、ご亭主のお好みの灯りが随所に配され、今でもその一つ一つが個性的で目に浮かびます。

「大炉の夜咄の茶事」を茶友と3人で大いに楽しんで、心に残る茶事となりました。

車で送り迎えしてくださった茶友Sさまに感謝でございます。  

 

 


「初風炉・みどりの茶会」のご案内・・・追伸

2025年03月08日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

(樹齢100年以上の藪椿の大木が満開です・・・三島神社にて)

 

ブログ「暁庵の茶事クロスロード」の閲覧数が令和7年3月3日に5百万頁に達し、訪問者数2百万人も数か月後になりそうです・・・ここまで続けられたことが夢のようです。

時には大海に浮かぶ小舟のように心細く思いながらも、ブログ読者の方がいらっしゃることに励まされながら・・・続けることが出来ました。 ありがとうございます!   

閲覧数5百万頁と訪問者数2百万人を記念し感謝の気持ちを込めて、5月4日(日)に「初風炉・みどりの茶会」を開催いたします。

暁庵一人ではとてもできませんし、お客さまとゆっくりお話もしたいので、暁庵社中の方にお手伝いをお願いしています。

どうぞお気軽にお茶飲みと茶談義にお出かけくださいませ。

暁庵へ初めての方、流派を問わずどなたさまも大歓迎!でございます。椅子席をご希望の方はお知らせください。

     (釣釜で茶碗荘の稽古中です)

    (かわいい椿、「玉の浦」を頂きました)

 

「初風炉・みどりの茶会」のご案内

日時 令和7年5月4日(日) 

席  拙宅・暁庵(相鉄線二俣川駅よりバスまたはタクシー、参加者に後ほど詳しくお知らせします)

 ① 1席目 10時待合集合~濃茶~薄茶と茶談義~点心 12時30分頃解散

 ② 2席目 13時20分待合集合~点心~濃茶~薄茶と茶談義 16時頃解散

人数  各席 5名様 

会費  お一人5000円 (当日お持ちください) 

お申込み期間 3月8日(土)~3月25日(火)

どうぞ下記メールへお申し込み(お名前、住所、連絡先電話、流派、席の希望など)くださいませ。先着順にて受け付けさせていただきます。お席の状況は追伸でお知らせいたします。

    暁庵のメール:akatuki-ane@grace.ocn.ne.jp

 

追伸)1席目は満席になりましたが、2席目はお席がございます。お早めにお申し込みください。

 

 


ブログ閲覧数5百万頁に達しました!

2025年03月05日 | 暮らし

  (眼下の川の中の小魚を狙っているカワセミ・・・帷子川にて)

 

昨日3月3日にブログ「暁庵の茶事クロスロード」の閲覧数が5百万頁に達しました。

2月になってから「あれっ!5百万頁に近づいている・・・」と気が付きましたが、思いのほか早くその日がやってきました。3月3日のひな祭りの日というのも嬉しいですね。

訪問者数2百万人も数か月後になりそうで、夢のようです・・・。

2009年6月に「四国遍路」のことを記録しておきたい、大好きな茶事のことを書き留めておきたい・・・と始めたブログですが、よくぞここまで続けられた・・・と感無量です。

ブログの向こうにいらっしゃる読者の皆様に何度も励ましを頂いて、ここまで続けることが出来ました・・・。

ありがとうございます   

 

(暖かな日差しに誘われて散歩ランチへ・・・矢指谷戸の菜の花畑、横浜市旭区)

感激と感謝を込めて・・・閲覧数5百万頁と訪問者数2百万人(まだ先ですが・・・)を記念して「みどりの茶会または茶事」を開催したいと思っています。

よろしかったらお気軽にお出かけくださいませ。

GW中の5月4日(日、祭、みどりの日)を予定しています。空けておいてくださると嬉しいです。

近々、詳細をこちらのブログでお知らせいたします。

 

(満開の菜の花畑・・・むせ返るような香りがいっぱい)

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アクセス解析(読者のアクセス記事がわかる)から次の記事を懐かしく読み返しています。

〇 四国遍路 再びお遍路さんへ

〇 「桜の茶事」(ブログ4百万頁記念)

〇 「桜の森の満開の下で」の茶事

〇 「夜長姫と耳男」を読む