後座になり、席入りすると、初座の時よりお雛様たちが整然とお澄まししているように見えました。
点前座にまわると、先ほどご飯を炊いた釜から湯気が上り、熱い濃茶が楽しみです。色絵の四方水指に心惹かれ、その前に茶入が置かれていて、仕覆は「鳥襷緞子」でした。
お雛様も客もシーンと静かになり、濃茶点前が始まりました。
長年研鑽を積まれたご亭主様の小堀遠州流の所作を拝見するのがいつも楽しみなのですが、私からはお点前が見えにくく残念!
(上品な主菓子・・菓子銘が? 千歳船橋・東宮製)
茶入から濃茶が掬い出されると茶香が徐々に部屋へ満ちていき、たっぷり練られた濃茶を3人で頂戴しました。
この日は小堀遠州流に畳まれた出し袱紗を使って、使い方を教わりながら濃茶を飲みました。一口飲むと、薫りよく甘みのある濃茶が喉を潤していきます。
3人分ですが、一人で飲んでしまいたいほど美味しかったです。ご馳走様!でございました。濃茶は「松韻の昔」(一保堂詰)でした。
(濃茶点前中のご亭主)
主茶碗は伊羅保のような肌合いと形、黒と茶の釉薬が絶妙に交叉する景色、しっかりした茶溜りの作りが印象に残りました。赤膚焼で作者は楠部弥一でした。
もう一碗は朝日焼の「楽」茶碗。小堀遠州流・15代宗通の八十歳記念の茶碗で「楽」という字が書かれ、次のような和歌が書かれた箱書があるそうです。
たのしみは命のほかに何かあらむ
ながらえてこそ在明の月
茶入は唐物で「岩城文琳(写)」、茶杓は象牙(利休形)でした。
(薄茶の設え・・・茶碗に注目!千鳥茶巾の上に茶筅が上向きです)
薄茶になり、水指が色絵四方から染付菱形へ変わりましたが、どちらも素晴らしく、黒漆の点茶盤によくお似合いです。
薄茶では懐石担当のSさまもお席に入られて、茶飯釜や懐石のことなどいろいろお話が弾み、楽しゅうございました。
旅箪笥から春を感じる茶碗が次々と出され、薄茶が点てられました。
干菓子3種を頂きながら、各服で点ててくださった美味しい薄茶(山政小山園の「小倉山」)をたっぷり頂戴しました。
(干菓子は「梅とウグイスと雛あられ」・・・東宮製)
(春を感じるステキな茶碗がいっぱい・・・)
最後に薄器と茶杓が拝見に出されました。朱の薄器は黒と一双になっていて15代小堀宗通箱書です。
茶杓は紫野・大亀老師の銘「佐保姫」・・・冒頭のお手紙の和歌が頭をよぎりました。
佐保姫の 筆かとぞみる つくづくし
雪かきねくる 春のけしきは 藤原為家
お雛様に見守られながら和やかに楽しく時が過ぎて、いつまでもこのままでいたい・・・そんな居心地の好いお茶事でございました。
茶事終了後、仕覆師Uさまが仕覆用の裂地を見せてくださいました。珍しい古裂、インドやヨーロッパの古い更紗やモールなどめったに見れない貴重な布たち・・・Uさま、ありがとう!
皆様、ステキな春の一日をご一緒できて、ありがとうございました。
(カメラと携帯を忘れてしまい、写真はFさまのご提供です。ありがとうございます)
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