昨年(2015年)のことで恐縮ですが、12月23日(祝)に「ご近所さんとクリスマスの茶会」をしました。
ブログ休暇中でしたが、備忘録として記しておきます。
「サンタクロースって本当にいるの?」
子ども達の疑問とときめきを想い思い出しながら「クリスマスの茶会」をいたします。
どうぞお越しくださいませ。
12月23日 14:00~16:30
恐れ入りますが、御猪口かぐい飲みを数個お持ちください。
・・・とご案内のカードを差し上げました。
お客さまは5名様、数軒隣のTさん夫妻、徒歩10分のIさん夫妻、社中のSさんです。

サン・アントニオ(米)のメキシカンツリーがお出迎え
14時頃にお客様が到着し、Sさんの打つ板木の音が高らかに聞こえ、柚子を入れた白湯をお持ちしました。
自己紹介のあと、腰掛と蹲は省略し、茶席へ入って頂きました。
前回(風炉)は喫架と椅子席でしたが、炉なので正座が難しいT氏だけ腰掛を用意しました。
「お炭を置かせて頂きます」
初炭手前を炉の近くへ寄って見て頂きました。
風炉とは違い、目の前で炉縁が羽根で清められ、下火が動かされ、湿灰が撒かれ・・・
そして大きな胴炭など、次々と炭が置かれる様子を息を呑むように見つめています。
丁度私が庸軒流や南坊流の炭手前を興味津々目を丸くして見ていたように。
湿灰(しめしばい)が注目の的でした。
「それは何ですか?」「あとで触らせてください」
「これは湿灰と言って、この炉灰と同じものですが、少し湿り気と色を加えています。
このように湿り気のある灰を周りに撒くことで、空気の対流が起こり、火の熾りをよくします。
湿灰を撒くパーフォーマンスは炭手前の一番の見せ場かもしれませんね。
湿灰を撒く様子や撒かれた炉中の風情を観賞するのも楽しみの一つです・・・」

香を焚き、香合を拝見に出し、お客さまに元の席へ戻って頂きます。
朝茶事のようにヤカンを持ち出し、水を注ぎ、たっぷりの濡れ茶巾で釜を清めました。
「濡れ茶巾で清めた釜から上がる湯気、濡れた釜肌の美しさ、すぐに乾いていく様子、この変化が鑑賞の壺です」
「お~っ・・・!」
お客さまの反応が素直で嬉しくって、つい普段しないような解説をしています。
香合は1820年頃にイギリスで作られた錫の小箱、横浜開港150周年を祝う茶事以来の登場でしょうか。
香は松寿、松栄堂です。
湯が沸くまで時間がかかるので待合へ戻り、趣向係(ツレ)へバトンタッチです。
クリスマスとは何の関係もありませんが、「利き酒」がその日の趣向でした。

(人数×3)個の酒杯がいります
簡単なレクチャーのあとに3種の酒を用意しました。
銘柄の分かっている2種の酒(A、B)を味わって頂き、次に神鍋に入っている酒(X)を飲んであててもらいます。
ちょうど七事式の茶カブキと同じです。
お酒だけでは・・・と思い、鯛や甘エビの向付を用意しましたが
「お酒を味わうにはいらないかな・・・・」だったみたいです。
グルメ、趣味、Iさん夫妻の田舎暮らしなど会話が賑やかに飛び交い、おちゃならぬおちゃけの魔法かも・・・。
茶席担当の私も傍で会話やSさん持参のステキな硝子杯を楽しみました。

利き酒の間に茶室を暗くし、蝋燭の明かりの元、再び席入して頂きました。
お軸は「無事」、尺八に蝋梅と紅い椿、吉野棚に緑釉金襴手の水指、唐松文朱棗を飾りました。
きんとんのクリスマスツリー(暁庵製)を銘々皿で運び、召し上がって頂きます。
暗い茶室で真っ赤に熾った火が炉縁に映り、当りを浄めるように釜から湯気が立ち上ります。
伴天連の燭台の灯がゆらめく中、薄茶点前が始まりました。
クリスマスのミサのように厳かで敬虔な心持ちで帛紗を捌き、棗と茶杓を清めます。
茶碗をゆっくり温め、薄茶を点てました。
「お服加減はいかかでしょうか?」
「お菓子の後なので、とても美味しいです・・・」
薄茶は松柏と長松の昔のブレンド、薄茶席なので会話を楽しみながら味わってくださったようです。

時が過ぎ、名残惜しくお開きになりましたが、ここで「クリスマスの茶会」最大の魔法が・・・。
先に帰られたT夫人があわてて戻ってきて
「今日はありがとうございます! 杖を忘れたので取りにきました」
Iさん、Sさんと顔を見合わせて思わずニッコリです。


T氏は杖をついてやっとの様子で来られたのに、杖を忘れるくらい元気になって帰られたのでした。
”お茶の魔法(力)”をまたまた実感したクリスマス茶会でした。
Merry Christmas! and Happy New Year!