暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

さくらの茶事を終えて・・・

2018年04月13日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)


(つづき)
毎年、「さくらの茶事」をお客さまと愉しみたい・・・と願いながら、なかなか難しいです。
昨年4月2日は桜が全く咲いてない状態でしたが、今年の4月8日(日)はすっかり散ってしまいました。
しかも、茶事の3日前に暴風雨に見舞われ、けなげに残っていた花たちも去って行き・・・それで、次のようなメールを差上げました。


「さくらの茶事」のお客さまへ

いよいよ「さくらの茶事」まであとわずかとなりましたが、
皆さまにはお変わりなくお過ごしでしょうか?

今日、横浜では暴風雨が吹き荒れ、明日も雨だそうです。
我が家の前の公園に「私のさくら」と名付けた桜樹がありまして、朝な夕なに台所の窓から花を纏った優雅な姿を愛でています。



今朝までけなげに残り花を留めていた「私のさくら」もすべて散っていることでしょう。
泰山府君(命を司る道教の神さま)に「さくら」の延命をお願いしましたが、今日の嵐で心配や未練が消えて清々しました。

・・・それで、お客さまにお願いがあります。
できましたら、「さくら」色の物を身に着けて頂き、お客さまに「さくら」になっていただけませんか?
                     暁庵より 





茶事当日、胸躍らせて・・・半東Fさんとお客さまをお待ちしました。
お客さまは同門社中の方々、正客I氏は初めてお越しいただきました。
恐れ多くとてもS先生をお招きすることはできませんので、I氏をS先生と思って一生懸命おもてなししたい・・・と気合を入れました。
次客Iさま、三客Oさま、四客Yさま、詰Yさま・・・素敵な「さくら」の着物や帯の装いで、席中に花を添えて頂きました。
ありがとうございます!

   桜色に衣は深く染めて着む
      花の散りなむ後の片身に     紀有朋 (古今集)





・・・お客さまに優しく見守られ、濃茶点前をし一心に濃茶を練りました。
「美味しいです」のお言葉に安堵しました。
一碗目は黒楽、銘「不老門」、二碗目は赤楽、銘「玉三郎」です。
濃茶は「松花の昔」(小山園詰)でした。
覚束ない足取りながらお点前できたことに充実感を感じ、茶事の再スタートができて幸せでした。



半東Fさんに後炭と薄茶をお願いし、お客さまと出会った「さくら」の思い出を語り合い、それぞれの心に咲く「さくら」を思いました。

京都・今日庵近辺のさくら
神田川や目黒川沿いのさくら逍遥
近所の山間にある一本のさくらと、その下での家族の団欒
弘前城の桜と津軽三味線の競演にカルチャーショックを受けたこと
京都御苑の近衛池近くの上品な糸桜・・・・などなど


       近衛池と桜

来年も趣向は多少変わると思いますが、「さくらの茶事」を続けることが出来たらと願っています。
茶事の次第と献立を忘備録として記します。

「さくらの茶事」次第
待合~腰掛待合~初座席入~挨拶~香~初炭~(動座)懐石~菓子~中立~後入~濃茶~後炭~薄茶~終いの挨拶

懐石献立(懐石は暁庵とFさんで手分けして・・・)
  向付   鯛昆布締め 穂紫蘇 山葵加減酢
  飯    一文字  
  汁    蓬麩  合わせ味噌  辛子
  飯    白飯
  煮物椀  竹の子と海老の真蒸 竹の子 ワカメ 木の芽
  焼き物  鰆の西京漬
  炊き合せ 里芋 鳥治部煮 桜麩 春菊
  和え物  独活 芹  蕗味噌 
  箸洗   結びワカメ
  八寸   甘エビ鱈子和え  空豆
  香の物  沢庵  胡瓜  柴漬
  湯斗
  酒    越後桜


 干菓子「蝶々煎餅と紅わらび」 打出庵大黒屋製  干菓子盆は大内塗盆