
(つづき)
毎年、「さくらの茶事」をお客さまと愉しみたい・・・と願いながら、なかなか難しいです。
昨年4月2日は桜が全く咲いてない状態でしたが、今年の4月8日(日)はすっかり散ってしまいました。
しかも、茶事の3日前に暴風雨に見舞われ、けなげに残っていた花たちも去って行き・・・それで、次のようなメールを差上げました。

「さくらの茶事」のお客さまへ
いよいよ「さくらの茶事」まであとわずかとなりましたが、
皆さまにはお変わりなくお過ごしでしょうか?
今日、横浜では暴風雨が吹き荒れ、明日も雨だそうです。
我が家の前の公園に「私のさくら」と名付けた桜樹がありまして、朝な夕なに台所の窓から花を纏った優雅な姿を愛でています。

今朝までけなげに残り花を留めていた「私のさくら」もすべて散っていることでしょう。
泰山府君(命を司る道教の神さま)に「さくら」の延命をお願いしましたが、今日の嵐で心配や未練が消えて清々しました。
・・・それで、お客さまにお願いがあります。
できましたら、「さくら」色の物を身に着けて頂き、お客さまに「さくら」になっていただけませんか?
暁庵より

茶事当日、胸躍らせて・・・半東Fさんとお客さまをお待ちしました。
お客さまは同門社中の方々、正客I氏は初めてお越しいただきました。
恐れ多くとてもS先生をお招きすることはできませんので、I氏をS先生と思って一生懸命おもてなししたい・・・と気合を入れました。
次客Iさま、三客Oさま、四客Yさま、詰Yさま・・・素敵な「さくら」の着物や帯の装いで、席中に花を添えて頂きました。
ありがとうございます!
桜色に衣は深く染めて着む
花の散りなむ後の片身に 紀有朋 (古今集)

・・・お客さまに優しく見守られ、濃茶点前をし一心に濃茶を練りました。
「美味しいです」のお言葉に安堵しました。
一碗目は黒楽、銘「不老門」、二碗目は赤楽、銘「玉三郎」です。
濃茶は「松花の昔」(小山園詰)でした。
覚束ない足取りながらお点前できたことに充実感を感じ、茶事の再スタートができて幸せでした。

半東Fさんに後炭と薄茶をお願いし、お客さまと出会った「さくら」の思い出を語り合い、それぞれの心に咲く「さくら」を思いました。
京都・今日庵近辺のさくら
神田川や目黒川沿いのさくら逍遥
近所の山間にある一本のさくらと、その下での家族の団欒
弘前城の桜と津軽三味線の競演にカルチャーショックを受けたこと
京都御苑の近衛池近くの上品な糸桜・・・・などなど

近衛池と桜
来年も趣向は多少変わると思いますが、「さくらの茶事」を続けることが出来たらと願っています。
茶事の次第と献立を忘備録として記します。
「さくらの茶事」次第
待合~腰掛待合~初座席入~挨拶~香~初炭~(動座)懐石~菓子~中立~後入~濃茶~後炭~薄茶~終いの挨拶
懐石献立(懐石は暁庵とFさんで手分けして・・・)
向付 鯛昆布締め 穂紫蘇 山葵加減酢
飯 一文字
汁 蓬麩 合わせ味噌 辛子
飯 白飯
煮物椀 竹の子と海老の真蒸 竹の子 ワカメ 木の芽
焼き物 鰆の西京漬
炊き合せ 里芋 鳥治部煮 桜麩 春菊
和え物 独活 芹 蕗味噌
箸洗 結びワカメ
八寸 甘エビ鱈子和え 空豆
香の物 沢庵 胡瓜 柴漬
湯斗
酒 越後桜

干菓子「蝶々煎餅と紅わらび」 打出庵大黒屋製 干菓子盆は大内塗盆