(春の海へ・・・伊良湖岬にて 令和6年3月28日撮影)
令和6年4月14日(日)に「ひねもすのたり正午の茶事」をしました。
昨年5月から始めた立礼の茶事ですが、今年もなんとか再開できました・・・
実は半年ぶりに立礼の茶事を4月から再開しようと決めたものの、手術後の体力不足もあり、身体が思うように動かず、なかなか気が進みませんでした。このまま茶事を止めてしまうのも良いかも?・・・と悪魔のささやきが耳元でします。でも、アートフェアで出逢ったSKさまとの約束を思い出し、ご案内の手紙を差し上げました。
・・・すると、スイッチが入って茶事のあれこれを考えるのが楽しくなりました。加えて、半東Y氏と懐石小梶由香さんがお手伝いを快諾してくださったのも心強く、気合が入りました。
(伊良湖オーシャンリゾートから恋路ヶ浜をのぞむ)
「4月なのでどんな茶事にしようかしら?」と考えていた時に頭を過ったのが与謝野蕪村の俳句でした。
春の海 ひねもすのたり のたりかな 蕪村
「ひねもす」は「日経(ひへ)もすがら」から転じた言葉という説が有力で、「日が空を通って行く(経る)時間ずっ~と」と言う意味だそうです。
春の海を日が出ている時間ずっ~とぼっ~と眺めているような、のどかな一日をご一緒に過ごしたい・・・と思い、「ひねもすのたり正午の茶事」と名付けました。
お客さまは、SKさま(正客)、MWさま(次客)、KYさま(三客)、ASさま(詰)の4名様で全員が裏千家流です。
お正客SKさまとは昨年10月の東京美術倶楽部のアートフェアで15年ぶりに奇跡的な再会を果たし、他の3人のお客さまも七事式の会や茶事で切磋琢磨した懐かしい茶友の方々です。
板木が4つ打たれ、さぁ~!「ひねもすのたり正午の茶事」が始まりました。
半東Y氏が相馬焼の汲出しに入れた桜湯をお出しし、腰掛待合へご案内しています。
待合の掛物は坐忘斎家元の寿扇「松風傳古今」、教授拝受の折に頂いた宝物です。
「松林を吹き渡る風は昔も今も変わらないように、茶の湯の教えを変わることなく伝えていきたい・・・」という坐忘斎家元の御気持ちが伝わってくる気がして、そのようにお話ししました。
待合に躑躅を生けました。
前日のこと、買い物の帰りに野菜や花の直売所へ寄ると、躑躅の花束が1つ残っていました。本来待合に花はいらないのですが、15年ぶりの茶事での再会がもう嬉しくって、躑躅を唐華文壷(神奈川焼・井上良斎造)に生けると、待合がとても華やかになりました。
むせ返るような若葉に包まれた露地で、お正客様や連客様と嬉しい一礼を交わしました。
本席の床は「閑眠 高臥対青山」、4月19日に目出度く百一歳を迎えられた鵬雲斎大宗匠の御筆です。
「ひねもすのたり・・・」にもぴったりですが、お正客SKさまが大宗匠の熱烈なファンなので迷わず選びました。
七事式の員茶之式の偈頌「老倒疎庸無事日 閑眠高臥対青山」を思いながら
「いつの間にか年を重ねてしまい、何をするにも面倒になったけれど、お茶だけは何とか続けています。今日は懐かしい皆さまと無事を喜び、春の一日をお茶事でのんびりと楽しく過ごせたら・・・」とお話ししました。(つづく)
ひねもすのたり正午の茶事・・・(2)へ続く (3)へ (4)へ