わたしたちの脳をどうするか―ニューロサイエンスとグローバル資本主義春秋社このアイテムの詳細を見る |
私たちは脳の主体でもあり、生産物でもある。
この本の視点はここから始まる。
そして、脳には、可塑性がある。そのことにより、議論を従来、脳についていわれているニューロンサイエンスへの批判への試みから、現代資本主義社会とニューロンシステムの類似の発見という風に発展していく。
これはあたかも、著者が、
「世界のカリカチュアのレプリカにならないこと、これが私たちの脳についてなすべきことである。爆発を恐れるあまり、永遠の自己制御と、諸々の流れ・移動・交流のままに自らを変えていく能力とを結合した柔軟な個人であることを拒否すること」はあってはならないといっている主張のベクトルに一致するような論理の展開である。
著者のいう脳の可塑性とは、以下の3つの性質を伴う。
*可塑性:固体に外から力を加えると、力をとりさってもそのままの形を残す性質。
a.形を受け取る能力=発達の可能性
b.形を与える能力=歴史を形成し、記憶を加工する能力
c.固体、つまり脳への形質を消滅させる能力
の3つである。
これらの3つの議論を展開させていくことで、著者は、巷でささやかれる、「私たちの人生というのは、遺伝で決定されてしまっている」という議論に一撃を加えようとしている。
これが本書の大まかな主張の流れといえるであろう。
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