新興国に進出する場合、新興国企業と合弁会社を設立し、その会社にノウハウ移植の技術支援契約や特許等のライセンス契約を締結する場合があります。一般的に契約は自由と考えても良いでしょうが、注意点としては、(a)中国の場合は「技術輸出入管理条例」その他の法令で規制されている。その他の国でも(b)ライセンス料の支払いについて租税条約通りの限度税率適用の際には、受領する日本の親会社自身の現地国での登録が必要等の規制がある場合がありますのでチェックが必要ですね。
中国企業への技術輸出の注意点は、Jetroが解説を出していますが、注意点を列挙すると、技術輸出入管理条例(強行規定)では、中国への輸入禁止、輸入制限、輸入自由技術を分類し、輸入制限技術の場合は契約締結の前に許可申請が必要ですね。しかし、民間企業の技術の場合は、殆どが輸入自由技術です。この場合は、契約は自由に締結できますが契約登録(地方政府の知識産権局→国家知識産権局)が必要で、登録後登録証が発行されます。この登録証がないとロイヤルティの日本への送金が出来ないですね。尚、ソフトウェアライセンスの場合は国家版権局への登録になります。ソフトをライセンスする際に、暗号かける場合には、政府の許可が要りますし、許可は実際上おりません。つまり、中国では政府が内容を知る(盗む?)ことができる仕掛けになっているのですね。
1) ライセンス契約:①独占的実施許諾(ライセンサーも実施できない)、②排他的実施許諾(ライセンシーとライセンサーのみ実施OK)、③普通実施許諾の3種類(日本は、①の専用実施権と③の通常実施権の2種類)
2) ライセンサーは、技術供与の正当な権限を有し、供与技術は完全で瑕疵が無く、技術目標を達成できることを保証する。(ソフトウェアはバグがあっても勿論OK)
3) 改良技術のグラントバックの禁止(ライセンシーに帰属し、共有・無償使用も禁止)、また改良技術を開発することを禁じることも出来ない。
4) 供与技術の類似技術を第三者から供与を受けることを制限する規定も不当制限として認められない。
5) 技術供与により生産される製品の原材料・部品等の供給元を制限することも不当 制限とされ、また生産量・品種・販売価格を拘束することも不可。
その他の国の企業への技術支援・ライセンス契約締結については、比較的自由だと思われますが、送金にあたり契約書オリジナル等の提示を求められたり、租税条約に定める源泉徴収税の限度税率(普通は10%が多い)適用に当たっては、源泉税は当然技術提供者の所得ですので、当該国での技術提供者の税務登録、更には会社だけでなく担当役員個人の税務登録、現地での税務申告などを義務付ける(インド等)とか、移転価格の証明書を提出を求められる等、契約そのものでは無く、送金・税務で規制をかけている国がありますので、種々の手続きが必要ですね。
では、租税条約の限度税率ではなく、普通の税率の源泉税を支払えばどうでしょうか?これについては、日本側の法人税基本通達に規制があります。損金の額に算入できませんね。即ち、16-3-8 (租税条約による限度税率超過税額)では、「内国法人が我が国と租税条約を締結している国に源泉のある所得を有する場合において、当該所得につき当該租税条約に定める限度税率を超える税率により外国法人税を課されたときは、当該外国法人税の額のうち限度税率によって計算した税額を超える部分の金額については、原則としてその還付を受けるまでは仮払金等として損金の額に算入しない」としています。
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