まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

社外取締役の忠実義務・利益相反取引

2008-08-13 15:24:40 | 商事法務

     会社と取締役との法律関係は委任の規定が適用されますね(会社法330)。従い、取締役が取締役会の構成員として職務を行う場合は、民法644条の善管注意義務を負います。また、取締役には忠実義務があります(355)。これは自己または第三者の利益を会社の利益よりも上位においてはならないとする義務であると解されています。最高裁の判例では(最大判S.45.6.24 民集24-6-625)、「忠実義務は、民法644条に定める善管義務を敷衍し、かつ一層明確にしたにとどまり、通常の委任関係に伴う善管義務とは別個の高度な義務を規定したものではない」としています。

     善管注意義務・忠実義務は取締役の一般的な義務であり、この一般的な義務から具体的な義務が生まれ、それには(1)監視義務と(大会社の場合はMUST)内部統制構築義務(36246)(2)特別の規制として取締役会の事前承認を求める①競業取引②利益相反取引や、定款・総会決議で少なくとも総額を決める③取締役の報酬の規制がありますね(356/361/365条)。競業取引・利益相反取承認の取締役会決議には、利害関係を有する取締役は決議に加わることが出来ませんね。

     利益相反取引の規制の趣旨からいって、取締役会承認の必要な取引は、裁量によって会社の利益を害する恐れのある行為に限られるべきである。従い、普通取引約款による契約など、性質上利益相反の恐れがない行為は含まれないと解されています。まあ取引約款による契約で、取締役会承認を要する取引というのはあまりないですけれどもね。日本ではMUSTではありませんが、海外では銀行取引を取締役会承認が必要としている国もありますので、あえて言いますと銀行取引約定書を銀行と締結する場合ぐらいでしょうか。

     ここでの問題です。例えば、社外取締役の本業は商社の代表取締役で、取引関係を構築・円満に拡大するために、メーカの非常勤社外取締役に就任しているケースがあります。商社が、輸入食料を食品メーカに売ったり、メーカの機器を商社が輸出したりする場合ですね。売主と買主ですから当然利益は相反します。しかし、定常的な業務は取締役会の決議事項ではありません。つまり利益相反取引は、社外取締役の派遣元企業と当該企業で結構行われているということですね。

     社外取締役は、当然本業の企業の利益を優先します。派遣元企業の利益を派遣先企業の利益よりも上位において考えます。忙しければ当然本業の業務を優先しますし、派遣先企業の取締役会に出ても、事前配布資料もきちんと読まない・読む時間もない、せいぜい適当なコメントでお茶を濁し、しばしば欠席する場合も多いです。これで忠実義務を果たしているのですか? 社外取締役の忠実義務・利益相反取引についてどのように考えれば良いのでしょう。

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