○ 今回は、久しぶりに米国法の話しです。その中で日本でも有名なChapter 11の手続きの概要を書いてみましょう。まず、最初に、キーワードからです。<o:p></o:p>
・ DIP = Debtor in Possession (占有継続債務者)とは、再建型倒産手続である連邦倒産法第11章の手続に入った企業のことです。また、参考までに、「DIPファイナンス」とは、Chapter 11に入った企業(DIP)に対する与信のことですね。DIPは厳密には非管財人型の倒産企業を指しますが、日本では、会社更生法等の手続申立後、計画認可決定前の与信を広くDIPファイナンスと言っている場合があります。<o:p></o:p>
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○ 大きな流れは以下です。<o:p></o:p>
1) 手続開始:債務者企業からの裁判所へのFilingにより開始するのが多いです。Voluntary型ですね。債権者からでもFilingができるInvoluntary型もありますが、債務者が異議を唱えれば裁判所は倒産状態かどうかの審査を行ないます。<o:p></o:p>
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2) 申立から手続開始までの債務者の保護:Automatic Stayが適用されます。“Automatic Stay (Stayの期間は最大90日未満)“とは全ての関係企業等が直接的・間接的に倒産手続を妨げることを禁止するもの(362条)で、倒産時点のEstate(倒産財団資産)の減少を防ぐことを目的とした倒産者に与えられる規定です。Chapter11の申立(Petition)と同時に、債権者の債権回収行為一切がは禁止されます。債務者の全世界の財産を対象にしています。勿論、Automatic Stayの対象外の行為(Negotiable Securities=流通証券等)」も法定されています。<o:p></o:p>
Automatic Stayと共に、裁判所は救済命令を出します。<o:p></o:p>
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3) 開始決定と債務者(倒産企業):倒産企業(DIP)は原則として業務執行権・財産管理権を失いません。勿論、裁判所はDIPを調査するために調査員を選任できます。利害関係者は要求により経営陣に詐欺・不誠実・無能力・重大な経営過誤等あれば、Trusteeを選任しなければなりません。 <o:p></o:p>
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4) 再建計画(Reorganization Plan)の策定:DIPが主体になって作成しますが、Trusteeが選任されればTrusteeが作成します。それでも策定できないときは、Filing後18ヶ月以降は債権者が作成できます。<o:p></o:p>
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5) 再建計画の承認:各Class毎(担保付債権者とか無担保債権者等)の債権者の債権額の<o:p></o:p>
2/3又は債権者集会出席の債権者の債権額の1/2で承認されます。また、株主は出資額の2 / 3で承認です。<o:p></o:p>
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6) 裁判所の関与:原則DIP が主導的に債権者委員会と交渉しながら取り進めますが、必要手続きや協議が整わないときは裁判所が決定を下します。<o:p></o:p>
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再建計画が承認されれば、それに従い実行します(Substantial Consummation)。否決されれば、破産手続きであるChapter 7に移行したり、計画の再提出を行なったりします。<o:p></o:p>
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○ 上記が主な流れですが、いくつかのポイントについて補足します。<o:p></o:p>
(a) Relief from Stay:Automatic Stayの債権者に対する影響が大きいため、担保権者等は裁判所に救済の申立(Relief from Stay)、即ちAutomatic Stayの終了、あるいはAutomatic Stayに条件を付け加えることを申し立てることが出来ます。<o:p></o:p>
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(b)
債権者委員会の組成:倒産企業の状況説明の為、救済命令後20~40日の間に、債権者集会が開催されます。US Trusteeがアレンジします(US Trusteeはいわゆる管財人ではありません)。同集会では宣誓した上でDIPからの説明があり、Trustee(管財人)の要否について議論されるとともに、債権者委員会の委員の選任が行われます。
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・ Class毎の債権者委員会=Classes of Creditors’committee]<o:p></o:p>
- Unsecured Creditors committee:無担保債権者委員会 (必須)
社債権者を含め全てのUnsecured Creditorsを代表するものです。 - Secured Creditors’committee :被担保債権者委員会 (任意)
- Stockholders’committee : (任意)
- その他の委員会:年金関連ファンドやsubordinated bond等の保有者の委員会等です。(状況による)<o:p></o:p>
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・ 債権者委員会の権限<o:p></o:p>
- 倒産手続や債権計画案についてDIPと相談する。
- Trusteeが選任されていない場合のDIP作成の再建計画、財政状態等について調査する。
- 再建計画案の策定に参加し、策定された計画案について他の債権者等に対してアドバイスをする。債権者等の同意を募集して裁判所に提出する。
- Trustee或いはExaminer(調査員)の選出依頼。
- 債権者等の利益に適合する役務を提供する。
6. 裁判所の許可を得た上で、倒産財団のために訴訟を提起することができる。
(Preference=偏頗譲渡やFraudulent Conveyances =詐欺的譲渡等に対し、DIPが不合理に追求しない場合。)
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