まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

相当性を装う会社法の制度

2010-08-02 00:30:27 | 商事法務

       会社法には、相当・妥当であることを装うことができる制度がいくつかありますので、今回はその話です。勿論、装うことが出来るであって、別に装う事なく真面目にやっている会社も多いのですが、中には、種々の意図を持って、こういった制度を利用(悪用)しようとする会社もありますね。装う制度として2つ挙げてみましょう。

       ①現物出資財産の価値の相当性を装う裁判所選任検査役調査(これに代わる、弁護士等の証明書)、②企業再編、例えば、合併対価とその割当の相当性を示す合併比率算定書など(会社法施行規則182条等)ですね。

【1:裁判所選任検査役調査】

       現物出資は、過大評価の危険性があります。過大評価して現物出資者に株式を割り当てると株式の水増し発行であり資本の充実が計られません。1株当たり価値が低下して、現金出資の株主が不利益を被り、また、債権者も害しかねませんね。

出資する事が出来る財産は、BSに計上できるものですね。土地・建物のみならず、特許、ソフトウェア、あるいは営業権でも良いですね。中国では、土地(使用権)に法外な価格をつけて、錬金術として利用されましたが。

       規制の趣旨はわかるのですが、検査役(選任を申し立てた弁護士が裁判所により選任されるケースが多いと理解)の調査や、弁護士・会計士・税理士等の証明書って、そんなに信用できるんですかね?信用できませんね。証明書を出せるように資料を作成して、弁護士等に出してもらうのですが、この資料は当然意図を持って作成される。そうかと言って、どうもちょっと過大評価と思っても、そもそもきちんと評価する能力など弁護士さん等がもっていませんね。ソフトウェア、特許等、どうして弁護士等が、価値を見る能力があるのですか。この特許は、1億円の価値があります。この特許で、今後これだけの収益が得られます。2億円の価値があります等という説明は、まあ嘘が多いのです。これで事業を行う。事業計画はこうですと、細かい数字を並べて、如何にも事業をきちんと計画してる振りをしますが、事業計画などその通りになることなどあり得ないですよね。その事業計画をもとにネットキャッシュフローを算出して、(NPV等の)価値はこれだけですと決める場合もあります。あり得ない事を前提に、価値を評価するのですか?

       株式全部譲渡制限会社では、新株発行は総会特別決議なので、そちらで歯止めがかかりますね。私は、現物出資の場合は、検査役の制度は廃止して「出資の財産の概要とそれに対する株式数を登記事項とする」のが良いと考えています。それを見れば内容を経営陣の聞くことも出来ます。債権者もチェックできます。

【2:企業再編の比率算定書】

       例えば、2社の合併・交換比率の算定のときには、会社法施行規則の規定に従い相当性を示す算定書などが必要ですね。合併当事会社が、上場企業の場合には、一応市場価格がありますので、これを基準にすることにより、株主の理解と納得性が得られる場合(あるいは、やむを得ないと株主に判断させる場合)が多いと思います。問題は、非上場企業間の企業再編、あるいは一方のみが上場企業で、もう一方の企業が非上場企業の場合の算定理由書ですね。特に、両当事会社の有力株主が同じ場合には、種々の目的があり、正当な評価をしてから合併比率等を算出しようということが少ないのではないでしょうか。要するに、最初に意図があり、それのシナリオに沿って、意図的な数字を作る。そして自分の意図を組んでくれる、会計士さんに算定書の作成を依頼する事が多いのでは、ないでしょうか。

○ 数字というのは、背後に意図があります。ところが数字になると、相手の意図が消されて成る程と思ってしまうことがあります。また株主に開示する算定理由書等は、結論しか開示しません。そういう結論を導くように、操作している人もいるということを、やはり理解することも重要だと思います。


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