まさるのビジネス雑記帳

勉強ノート代わりに書いています。

株式報酬型ストックオプションについて

2008-12-15 16:42:44 | 商事法務

     職務執行の対価として会社から受ける財産上の利益には、報酬・給与、賞与・その他(企業年金)等がありますが、最近はインセンティブ報酬としてのストック・オプションを、役職員に付与する企業が増えて来ているようです。今回は、この株式報酬型ストック・オプションの、最近の発行のパターンについて見てみましょう。理論的な事は、会社法体系や葉玉弁護士の著作物等を御参照下さい。

 役職員にストック・オプションを付与するときは、やはり少しは有利な条件でないと役職員も納得行きません。募集新株予約権の第三者割当方式により発行され、役職員が払い込む新株予約権の対価としての金額を、無償又はそれに近い金額としていますね。238IIでは、募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨を募集事項で定めないといけないと規定しています。また同条3①では、この場合(=新株予約権の対価)、金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件(=有利発行)であるときは、取締役は、株主総会で、その理由を説明しなければなりません。新株予約権の払込金額、即ち行使価額についても、同様な規制が、238IIIと③IIにあります。

     有利発行の場合は、株主総会の特別決議ですが、公開会社の場合で、公正価値に相当する価額での発行の場合は、取締役会決議で行えます。①新株予約権につき金銭等を払い込むか無償(特に有利)かと、②新株予約権の払込金額が、公正価値に相当する金額か特に有利かですね。有利発行なら特別決議、公正発行なら取締役会決議ということです。

 最近多い例は、上記①について無償、上記②について市場時価が多いですね。例えば、行使価額の決定日に先立つ取引所の45取引日目に始まる30取引日の各日における当社普通株式の終値平均値等としています。しかし、①について無償とすることをどのように考えるかについては、見方が2つに分かれている様子です。

a. どうせ②が時価だから有利発行に該当しない(特に有利とまでは言えない)ので、取締役会決議で新株予約権を発行しよう。(この場合は、払い込みを要しない事は有利発行に該当しないと記載するのが一般的ですね)

b. ②が時価だから有利発行に該当しないかもしれないが、念の為手数がかかるけど、どうせ総会決議は可決されるから特別決議の承認をとっておこう。あるいはやはり無償なので、特別決議の承認をとっておこう。

・ 対応が分かれている原因は、条文の規定の仕方をどのように読むかが原因だと思います。240条で、238③各号の場合は、総会決議としており、238Iは、「金銭の払込みを要しないこととすることが当該者に特に有利な条件であるとき。」と規定していますしね。「特に有利な条件」かどうかは当事者の判断ということですね。当事者の判断でどちらでも出来そうな条文の規定は如何なものでしょうか。

・ 企業としては、取締役会で行った方がコスト的に安くなるし、何時でも出来ますからね。まさかこの為だけに臨時総会を開くわけにも行きません。bを選ぶ慎重派は年一回の定時総会のときしか現実的には出来ません。

・ 上記②即ち払込金額(=行使価額)は時価が多いと言いました。では役職員は、結局個人で購入するのと変わらないことになりますが、上場企業の役員等ですと、インサイダー取引疑惑を招きかねませんし、種々の規制もありますから、こういった制度に従って自社株を購入し、頑張って(運に恵まれて)会社の業績が好調で株価が上昇すれば、それだけ儲かりますから、業務の遂行に意欲・貼りが出てくるかもしれません。ただ最近の株式市場は突然奈落の底に落ちた感じですので、どうしようも無いですけどもね。まあ、不労所得でがっぽり儲けるのは、「時の運」次第ですね。(どうして私には運がないのでしょうか?)

     所得税が課されない税制適格ストック・オプションもあります。租税特別措置法第29条の2に規定されています。税制適格要件を満たした場合だけですね。権利行使は、付与決議日から2年後10年以内、譲渡禁止、年間の権利行使価額の上限は1,200万円、権利行使価額が契約締結時の時価以上、証券会社経由の売却等が条件で大株主には適用されません。税務署に調書等の提出も必要ですね。税金を払わないようにするのも大作業ですね。詳しくは専門家に聞いて下さい、私には縁が無いので実務は知りません。


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