○ 種類株式についての規定が会社法第二編株式会社第二章株式第一節総則の108条に規定されています。これを受けて第四節第三款・第四款(166-173条)等にも規定されています。おかしな規定の仕方です。
○ 108①各号に種類株式を規定しています。
- I,II,IIIは、剰余金の配当、残余財産の分配、議決権行使条件付株式で、内容に差を設けることができるとしています。株式の内容ですから、内容が異なれば異なる種類だと言えますけど、他の内容と組み合わせもできますね、例えば、配当優先株にしても取得請求権等をつけて普通株への転換条項等も付けることもできます。IIIの議決権行使条件付株式を、議決権制限株式として、株主総会の全部または一部の事項について議決権を行使することができない株式であると学者等が定義しています(神田会社法7版P74)。条文では「株主総会において議決権を行使することができる事項」と規定しています。「できる」と「できない」は、この場合はコインの表裏なのでそれでも良いのかもしれませんが、ちょっとひっかかります。議決権制限の制限という言葉が良くないのかもしれません。例えば、「この種類株式の株主は、309②の特別決議事項(+特殊決議)については、議決権を有する」と定めると行使できる事項を定めた事になりますね。
- IVは、譲渡制限株式です。これは、株式の属性であり、単独で成り立ちえません。これを種類株式の一つとして構成するのは、全くおかしな話です。
- V,VIは、取得請求権付株式、取得条項付株式ですね。これは、株式の種類と言っても、株式の内容と言ってもいいですね。従来は償還株式と言ったものですね。償還株式とか償還請求権付株式となぜ言わなかったのでしょうか。従来は、強制償還株式、義務償還株式、任意償還株式と言っていたものですね。変な用語です。
取得請求権付株式というのは、株主から見たときに会社に取得請求できる権利が付されたものですね。一方、取得条項付というのは、会社から見たときに取得できる株式ですね。V,VIでは、会社側、株主側と見方が異なります。
取得して自己株式として消却する場合、あるいは、株式の取得と引き換えに他の財産(主として他の種類の株式)に転換する旨の規定をします。株式の内容として上記のI,II,IIIの内容・性質を持たせることもできます。例えば、優先配当の優先株式を普通配当・普通の議決権を有する普通株式に転換できる場合等ですね。従来は、転換株式とか転換予約権付株式と言っていたものですね。
取得して自己株式にしても、株式の種類は変わりませんね。消却すればなくなります。転換という、一種の変身する内容を持つものもあります。
引き換えに交付する財産ということで、例えば普通株式に転換しない場合もありますので、転換株式というわかりやすいコンセプトを無くしてしまいましたね。分かりにくくしています。
- VIIは、全部取得条項付種類株式ですね。100%減資をやりやすくするために設けられた制度趣旨とは異なり、現実的には、SPCを組成して、少数株主を排除して、その100%完全子会社化する方法として利用されていますね。
- IIXは、拒否権付株式ですね。まあ、あっても良いかもしれませんが、IIIの議決権行使条件付株式の内容として定めることもできると思いますね。
- IXは、取締役・監査役選解任権付株式ですね。IIIの議決権行使条件付株式の内容の一種として規定すれば足りますね。委員会設置会社及び公開会社は、この種類の株式は発行できないですけどね。
○ 種類株式の規定は、性質・内容、コンセプトの違い、従来の考え方との一貫性等を無視して、主な種類の株式及び株式の異なる内容を「ごちゃまぜ」にした規定です。この規定の仕方は、「なんやねん!」ですね。I&IIは、株主の権利としては自益権です。IIIは共益権という視点での規定です。IVは属性です。V,VI&VIIは、株式の種類です。IIX&IXは、IIIの議決権行使条件付株式の内容の一つです。全くおかしな規定の仕方です。もっと、考え方に筋の通った規定に変更すべきですね。その切り口としては、以下ぐらいでしょうか、この切り口に、付随的属性として譲渡制限付きか否かということではないかと思います。
1) 剰余金の配当、
2) 残余財産の分配
3) 議決権行使の範囲と内容、
4) 償還株式か否か、どちら側がその請求ができるのか
5) 転換権付きか否かと、何に転換されるのか
もうちょっとすっきりした規定に出来なかったのですかね。
なぜ特殊決議と特別決議は別々にあつかうのでしょうか。
株主のしらない間に譲渡制限株式にされ非公開会社になったり、更に剰余金が均等でなくなった場合などがあるからでしょうか。
309条IVには、特別特殊決議というのがあります。上記に加え更に、株主平等原則の例外で株主の有する権利内容に重大な影響がでるからですね。総株主の半数以上+議決権の3/4以上というのは、昔の有限会社法の特別決議要件ですね。
MBOなどをしたら一般の個人株主は株を手放さざるを得ない
でしょうね。特殊決議を開催する場合はすでに個人の投資家
はもういないのではないでしょうか。
完全子会社化の方法
http://masaru320.mo-blog.jp/business/2009/03/post_e96f.html
全部取得条項付種類株式による少数株主整理
http://masaru320.mo-blog.jp/business/2008/07/post_1452.html
公示するときは保有期間も銘記しています。
以下未公開会社の自己株取得に関してです。
1.建前上、官報の公告にださないとだめか
2.自己株取得の目的を開示しないとだめか
3.どういう時に自己株を取得するのでしょうか。
会社法上は、株主資本等変動計算書で、自己株式について前期末残高、当期変動額、当期末残高が記載されますが。金融商品取引法では、上場企業などの有価証券報告書に自己株式の保有状況は記載されますね。
未公開会社(=全株式譲渡制限会社)の自己株式取得についてですが、
1) 株主との合意による自己株式の取得の場合は、株主に通知をしなければなりませんが、公開会社の場合は、通知に代えて公告(官報公告、日刊紙による公告、又は電子公告であるかは定款に記載あり)というのがあります。それ以外は、自己株式取得に関して、会社法上は公告の義務は規定されていないと思います。
2) 現行会社法では、自己株式取得については、手続・財源規制が主であり、取得目的と数量は規制しておりませんね。従い、目的を開示する会社法上の義務はありません。しかし、普通は取得目的を開示しています。といっても、曖昧といいますか、適当といいますか、例えば「経営環境の変化などに対応した機動的な資本政策を可能とする為に」というわかったような、わからないような文言でごまかしているようですね。
3) 消却、募集による処分、新株の代用に使われます。例えば、従業員等へのストックオプション等にも使えますね。