まさるのビジネス雑記帳

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監査・監督委員会設置会社制度の新設

2012-08-11 10:54:46 | 商事法務

 

 法制審議会会社法制部会は、8月1日に「会社法制の見直しに関する要綱案(案)」を公表しました。6日の日経新聞では、「多重代表訴訟、制約多く」と「社外取締役義務化見送り」の記事がメインで、監査・監督委員会設置会社制度の新設については、殆ど触れられていません。<o:p></o:p>

 

 

 社外取締役については、例外(例えば、親会社の主管部門の責任者等)を除き機能しないということは、このブログで何回か述べました。また、会社法で定めるべき事とは思われません。むしろ累積投票排除の定款規定を廃止する方がまだ機能すると思います。社外取締役とするか独立取締役とするか、その構成などは上場規則などで考えれば良いことだと思います。多重代表訴訟については、持株会社が増えているので、範囲は別として導入自体は良いことだと思います。<o:p></o:p>

 

 

 この要綱案には、変な制度の新設が盛り込まれております。監査・監督委員会設置会社の制度です。監査・監督機能強化の流れの中で、機関として監査・監督委員会を作ろうという発想のようです。現行の委員会設置会社と監査役会制度を足して半分にしたような制度というか、監査役会設置会社の監査役会を取締役会の中に入れ込んだ制度ですね。<o:p></o:p>

 

 

 監査・監督委員会設置会社では、監査・監督委員会を置く。取締役会と会計監査人を設置する。監査役は置かない。委員会設置会社は、監査・監督委員会を置いてはならない。業務執行取締役(=代表取締役+選定業務執行取締役)が業務を執行するというのが枠組みですね。

監査・監督委員会の委員は取締役ですが、委員会の過半数の委員は社外取締役、総会決議は、他取締役と区別して選任、解任は特別決議、任期は2年で、一般の取締役の任期は1年としています。<o:p></o:p>

 

 

 監査・監督委員会設置会社の取締役会の権限としては、経営の基本方針等と「重要な業務執行の決定」と既存の取締役会の職務(法3624項各号)であり、これらの決定は取締役に委任できません。即ち、監査・監督の部分以外は、既存の取締役会設置会社と考え方は一緒です。委員会設置会社では、代表執行役・執行役の選任を取締役会が行わなければならないですが、この監査・監督委員会設置会社では、執行は既存の取締役会設置会社と同じです。考え方としては、監査・監督の部分だけを切り出して委員会を新設するという発想だからですね。<o:p></o:p>

 

 

 私は、今回の会社法制部会の要綱案は如何にも、発想の乏しさ、硬直的、仏作って魂入れず、役所的と言った日本の審議会の悪い特徴が出た要綱案だと思います。

既存の委員会設置会社の制度に柔軟性を持たせれば済むことです。指名委員会や報酬委員会がどれだけ機能しているのですか、実態をどれだけ調査したのですか?会社法制部会は、多分実態調査をすることも無く頭だけで考える人が多いのではないでしょうか?<o:p></o:p>

 

指名委員会・報酬委員会でも過半数は社外取締役です。しかし、会社の事情に疎い社外取締役が、社内の誰が次の役員として良いか、社内の報酬体系を熟知して自分たちの適切な報酬額を決めてるか疑問です。結局指名・報酬委員会では、1-2人の社内出身取締役が実質決めており、社外取締役はそれに単なるお墨付きを与える役しか果たしていないのではないでしょうか。例えば、東芝の例を見てみましょう。指名委員は、取締役会長の西田さんですね。報酬委員は、西田さんと取締役代表執行役社長の佐々木さんですね。要するに、会長・社長が決めているのです(但し、東芝ぐらいの大企業になると報酬などは一定の社内ルール基準があるのでそれを基にしていると思いますが)。これじゃ従来の日本の取締役会設置会社と変わらないですね。監査委員会は、管理部門統括の前副社長の村岡さんです。即ち、取締役会設置会社で言えば、取締役副社長を退任して、常勤監査役になったということです。<o:p></o:p>

 

 

 要するに、監査・監督委員会設置会社制度という珍妙なものを作るのでは無く、機能がどれだけ発揮されているか疑わしい現在の委員会設置会社制度を変更し、これに柔軟性を持たせて、監査委員会だけを必須にして、後はそれぞれの会社に制度設計を任せれば良いことです。委員会設置会社は、米国のまねをしたものですが、米国の会社法(例えば模範事業会社法)には、3委員会等の規定はありません。取締役会は委員会を設置することができるとしか規定していないので、その会社の状況に応じたいろんな委員会を設置することができます。米国の委員会設置会社の形は会社法ではなく、New York 証券取引所の上場会社マニュアル(303A)等で、決まっているのです。取締役会の過半数は独立取締役(同マニュアルに定める独立性の要件を満たす)とする。監査委員会は、3名以上の独立取締役だけで構成、独立取締役のみからなる指名(推薦)委員会・コーポレートガバナンス委員会を設置すること、報酬委員会も独立取締役のみで構成すること等が規定されているからなのですね。

 

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 今回の要綱案を見ると、日本の法制審議会・会社法制部会というのも、柔軟な発想が無い役所機関かと思います。<u1:p></u1:p><o:p></o:p>

 



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