とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

「ダイヤモンドと希望」

2018-05-24 08:06:03 | 国語
 教育出版の国語総合の教科書の一番最初に「ダイヤモンドと希望」という教材がある。筆者は森岡正博氏。哲学者である。現在は早稲田大学人間科学部教授のようである。

 この教材は教科書の一番最初にあるのにふさわしいいい文章である。

 最初にギリシア神話の「パンドラの箱」のエピソードが描かれ、「どんなに苦しいことに襲われたとしても、希望だけは飛び去ることな」いということを語る。次にカントが人間の中には誰も破壊いてはならないダイヤモンドが埋まっているといったことを紹介する。ダイヤモンドとは「人間の尊厳」である。「パンドラの箱」とカントの言葉をうけて、最後に筆者は人は「ダイヤモンド」を破壊することは不可能だと考えることを主張する。「そう考えることによって、私たちは、つらさや苦しみに見舞われた時に、それでもなお自分の人生を生きていくための小さな希望を与えられる可能性があるのではないか。」と筆者は主張するのだ。つまり人は生まれた時からそこに希望があり、その希望はたとえ死んでも消えることはないと言っているのである。

 この筆者の主張は阪神大震災や東日本大震災を経験して到達したもののようである。生と死を深く見つめて生まれてきた言葉で感動的な文章となっている。

 ただし、この教材は「評論」という位置づけで教科書に載っているのだが、これは評論とは言えないのではないかと思われる。評論ならばもっと根拠が明確になっていなければならないが、根拠が漠然としているのである。だから一見すると宗教のおさそいのようにも思われるのである。

 森岡氏の他の文章を読むことによって森岡氏の主張がもう少し見えてくる。扱い方を丁寧にして、他の森岡氏の文章を紹介するなどしないと変な誤解を与えて終わってしまうので注意が必要だと感じた。
コメント (13)
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