夏目漱石の『草枕』を読みました。学生時代に一度読んだのですが、その時はなんとなく面白く、わりとすらすら読めた印象でした。しかし今回読んでみるとそれは勘違いでした。やはり読みにくし。難しい言葉が多く簡単に読める本ではありませんでした。内容的にも難しく、どこに焦点をあてたらいいのかがよくわからないままです。芸術的な文章であることはよくわかりますし、芸術論であることもよくわかります。その内容がまだしっかりと落ちてこないのです。
私が気になるのは「九」です。那美が「余」の部屋にやってくる。「余」は小説を読んでいる。「余」は何が書いてあるかわからないという。なぜかと言えば「只机の上に、こう開けて、開いたところをいい加減に読んでいる」からだという。そしてそれがいいのだと言うのです。画工はそういう「非人情」なのだと言います。一方「普通の小説はみんな探偵が発明したものですよ。非人情な所がないからちっとも趣がない。」と言います。小説は心理の脈絡を探るもの、つまり隠されている心理を理屈立てて探していくものだということなのだと思います。
漱石はイギリスに留学し、当時流行していた探偵小説を読んだのだと思われます。探偵小説こそが漱石の文学の形を作ったものなのではないかというのが私の仮説です。このテーマで形ある文章が書けたらいいと考えています。
テーマは見つかりましたが、そこから先には今回はいきませんでした。できるだけはやく再読したいとおもいます。
