日本人は宗教離れがすすんでいるのは誰もが認めるであろう。日本人は仏教徒が多くいるが、とは言え本気で仏教を信仰しているとは思われれない。とは言え、それは昔からそういうわけだったわけではない。私よりも古い世代の人は墓参りはかかせないし、法事に関してもきちんとやっている。さらに古い世代ではもっと信仰心が強かったことを示す歴史的もある。宗教心の低下は現代的な現象なのではないかとも考えられる。
最近のテレビ番組で(何のテレビだったかは忘れてしまった)、欧米でも宗教離れが進んでいるという話題があった。キリスト教文化圏でも宗教離れが進んでいるというのである。
このことから、いわゆる「先進国」で宗教離れが進んでいると考えられる。その背景はどういうことか。
私は「死」を間近に感じられない状況が宗教離れを生んでいるのではないかと考える。今の日本では身近な人間の「死」を経験することがほとんどなくなった。「死」が身近にないために「死」を意識する機会自体がなくなってしまった。そのために宗教の必要性がなくなったのである。
先進国は長寿化が進んでいる。高齢者もさらに長生きになったし、生まれてきた子供が若くして死ぬということもほとんどない。そのために「死」の感覚を学ぶことなく大人になってしまうのである。そういう人たちは「死」を恐れるという気持ちと直面しなくなる。だから宗教が必要だと感じなくなるのである。
それではそういう「死」を遠ざけてきた人間は自分の「死」が間近になったときどうなるであろうか。
宗教は死を受け入れるための人類の知恵のような気がする。それを失った今、果たして「死」に対処できるのだろうか。私自身の問題として逃げずに向かいあわなければいけないのだろうと感じている。