とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

夏目漱石作『坑夫』の読書メモ①

2023-09-10 13:28:37 | 夏目漱石
『坑夫』は、夏目漱石の長編小説で、明治41年の元日から東京の『朝日新聞』に91回にわたって掲載された。『虞美人草』についで、漱石が職業作家として書いた2作目の作品。 

〔あらすじ〕
恋愛関係のもつれから着の身着のままで家を飛び出した青年が行く当てもなくさまようっていると、ポン引きの長蔵と出会う。自暴自棄になっていた青年は誘われるまま鉱山で坑夫として働くことを承諾する。鉱山町の飯場に到着する。鉱山の飯場は異様な世界だった。そこでの生活に不安を覚えながら、翌日、「初さん」に案内をされ、坑内へ降りていく。「シキ」(=坑内)は命がけである。青年は「死」を決意する。しかしここで死ぬことは虚栄心が許さない。鉱山から出て死にたい。そう考える。「シキ」の中で道に迷っていると坑夫の「安さん」と出会う。「安さん」は東京に帰った方がいいと忠告する。その言葉に心を動かされたものの、逆に坑夫として働くことを決意する。翌日診療所で健康診断を受けた青年は気管支炎と診断され、坑夫として働けないことが判明する。結局、青年は飯場頭と相談して飯場の帳簿付の仕事を5か月間やり遂げた後、東京へ帰ることになる。

〔この小説ができた理由〕
漱石のもとに荒井伴男という若者が現れて「自分の身の上にこういう材料があるが小説に書いて下さらんか。その報酬を頂いて実は信州へ行きたいのです」という話を持ちかける。漱石は当初、その話を断るが、時を同じくして、明治41年の元日から『朝日新聞』に掲載予定だった島崎藤村の『春』の執筆がはかどらず、急遽漱石がその穴を埋めることとなる。そこで漱石は若者の申し出を受け入れ、漱石作品としては若者の話を小説化した作品を書き上げる。それが『坑夫』である。

続く。
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