山形市中央公民館ホールで開催された『立川志の輔独演会』に行きました。志の輔師匠はもはや人間国宝級と言ってもいいのではないかと思えます。すばらしい話芸でした。
山形県の山辺町の「やまのべどんぶり亭」が主催の落語会です。山辺町の峯田さんという方が努力なさって山形にたくさんの落語家を呼んできます。峯田さんは明治大学の落研出身で、志の輔師匠の後輩にあたる方だそうです。その縁で志の輔師匠が毎年山形で独演会を開催しています。
今回は「異議なし」と「唐茄子屋政談」の2席。
「異議なし」は志の輔師匠による創作落語。マンションのエレベーターに監視カメラをつけるかつけないかでマンション住民がもめるという話。人間描写が見事です。そんなことありえないだろうと思いながら、でも実際の会議でありえるような会話です。
「唐茄子屋政談」は、親から勘当され、食うこともできない生活をしていたボンボンの若旦那の話。世をはかなんで身を投げようとしていたところを叔父に助けられる。叔父は若旦那に唐茄子を売るように命じるが、若旦那は売ることができない。重くて街中で倒れたところを町民が助けてほとんど売ってしまう。のこり二つになったところで自分で売ろうとしたところに、貧乏な母親が唐茄子を半分売ってくれと言ってくる。その貧乏さを哀れんだ若旦那が自分の稼いだお金を母親に渡してしまう。それが大事件を起こしてしまうのだが、そ結局は丸く収まるという話。厳しさと優しさそして、様々な身分の人間の描写が見事に演じ分けられます。
小三治師匠が亡くなって、落語家の人間国宝がいなくなったという記事を読みました。確かに最近の落語ブームを考えても、落語家がもう少し優遇されてもいいのかなと思いますし、それだけの話芸を持っている落語家は多いと思います。ですからたくさんの人間国宝候補がいると思います。その中でも志の輔師匠はそれに値する落語家だと思います。立川流の落語家は人間国宝にはなりづらいのかなという気もしますが、これだけ客を呼べる落語家はほかにはいません。
私が子供のころは落語は当たり前の芸能でした。しかし今は落語はたくさんの芸能のうちのひとつにすぎません。そんな落語が今輝いているのは、志の輔師匠をはじめとする優れた落語家さんが努力してきたからです。ぜひ落語家さんをもっと評価してほしいと思います。
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