映画『テーラー 人生の仕立て屋』を見ました。古い時代の職業の大人があらたな挑戦をする物語で、そこに淋しさと喜びがあります。映画は人々を淡々と描きます。だからこそ理屈ではなく、人々の心が直接見るものに伝わる味わい深い作品でした。
監督:ソニア・リザ・ケンターマン
キャスト:ディミトリス・イメロス、タミラ・クリエヴァ、タナシス・パパヨルギウ、スタシス・スタムラカトス
(あらすじ)
ニコスと父親は、アテネで男性用スーツの仕立て屋を営んできたが、時代の変化とともにオーダーメイドのスーツの注文が減り、銀行に店を差し押さえられてしまう。そのショックで父親が倒れたため、ニコスは手作りの屋台を引いて、移動式の仕立て屋をすることを思いつく。ある日彼はウエディングドレスの注文を受け、初めて女性服の仕立てに取り組み、うまくいき始める。燐家の妻が女性服の製造に興味を持ち、手伝い始めたことから、ふたりの間に愛情も芽生え始め、ニコスの人生は動き始める。
時代の移り変わりの中で自分を変えなくてはいけなくなることは現代では「当たり前」となってしまいました。「古い自分を捨てながら生きる」のが現代です。大人はアイデンティティをうしなってしまいます。それはつらいことだと思います。しかし、年はとってもチャレンジしてしまえばそこに楽しみを見つけます。その間の心の揺れがみごとに映像で描かれています。
生まれ故郷の島では、若い人が減り結婚式がなくなり、ウェディングドレスは売れないというニコスのセリフからは、さまざまな思いが伝わってきます。
この映画は何かを主張するわけではありません。この時代に生きている人たちの心を描く名作です。
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