東京・紀伊國屋サザンシアターでこまつ座『闇に咲く花』を見ました。何度も見た作品ですが、この年になってきてわかることも多く、しかも「今」の社会状況と重なることもあり、改めてこの作品のすごさがわかりました。すばらしい舞台でした。
この作品はは、井上ひさしによる「昭和庶民伝三部作」の2作目として1987年に初演された作品です。戦時中の庶民の不条理な現実を描いています。こんな時代は二度と作ってはいけないと感じながら、日本、あるいは世界の状況がどんどん「ものがいえない」状況になっている今を感じてしまいます。恐ろしさと怒りと、何とかしなければいけないと言う思いが強くなります。
劇中の「忘れちゃだめだ。忘れたふりはなおいけない。」というセリフは耳に残ります。人間はなんでもすぐに忘れてしまいます。そしていざとなれば忘れたふりをしてごまかしてしまいます。それが社会を崩壊させるのです。
神社の存在意義も強く訴えかけます。おそらく多くの神社関係者は不快に感じるはずです。しかし権力と結びついた宗教は本来の姿から変質します。それは伝統ある宗教でも新興宗教でも変わりはありません。人を救うのではなく、組織を救うものになってしまうのです。
演出は栗山民也。この作品を初演の時から演出している。山西惇、松下洸平、浅利陽介、尾上寛之、田中茂弘、阿岐之将一、増子倭文江、枝元萌、占部房子、尾身美詞、伊藤安那、塚瀬香名子が出演する。水村直也さんは生のギター演奏で劇中の音楽を奏でます。山西惇と松下洸平は、こまつ座で『木の下の軍隊』で共演していました。
今こそ必要な演劇でした。
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