ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ソウル・サクリファイス (Soul Sacrifice)

2008年01月02日 | 名曲

 年末の片づけをしている時にしばし見入ってしまったのが、「ウッドストック 1969.8.16」のビデオです。
 俗に言うウッドストック・フェステイヴァル(Woodstock Music and Art Festival)の映像です。このビデオには、1969年8月16日に行われたセットが収録されています。DVD版と比べてやや編集が異なっているようです。
 テレビのバラエティー番組も少し観たら飽きてきたので、さっきまでこのウッドストックの、このビデオとDVDを観てました。



『ウッドストック 1969.8.16』


 「ウッドストック 1969.8.16」に収められているのは、サンタナ、キャンド・ヒート、マウンテン、ジャニス・ジョプリン、ジェファーソン・エアプレイン、ザ・フー、スライ&ファミリー・ストーン、クウィルの演奏です。
 DVDには収められていない映像も含まれていたりして、とても興味深く観ることができました。
 このビデオ、1994年に発売された時にすぐ買った記憶があるんですが、たしか「8.15」「8.17」の2本も同時に発売されていたはずです。つまり3日間にわたって行われたフェスティヴァルの模様を1日ごと、計3巻のビデオに詰め込んでいるんです。



DVD版『ウッドストック』


 この「8.16」の中ではなんといってもサンタナの演奏した「ソウル・サクリファイス」が白眉でしょう。映像そのものは、カットされている時間が短いのでDVDヴァージョンの方が好きなのですが、どちらにしてもこの演奏の熱さには血がたぎる思いがします。
 この曲は、1969年10月に発表されたサンタナのファースト・アルバムに収められていて、サンタナの重要なライヴ・レパートリーとしても知られています。


 ファースト・アルバムに収録されているヴァージョンは、どこかこぢんまりきれいにまとまっている印象があるのですが、ウッドストック・ヴァージョンはとにかく熱くてワイルド。血のたぎる思いがします。
 パーカッションとドラムスによるリズムの洪水、それに続くベースのリフに導かれて曲が始まります。
 すでにただならぬヒート・アップの予感です。
 そしてカルロス・サンタナのギターとグレッグ・ローリーが奏でるオルガンによるリフで曲が一気に爆発するのです。





 短めのフレーズを繋いだ、まるで気持ちを絞り出すようなサンタナのギター・ソロが終わると、これまた情熱的なパーカッション群のソロ。原始的なリズムのうねりがいやがうえにも気分を高揚させます。
 そして続くのがマイケル・シュリーヴによる迫力満点のドラム・ソロ。
 この時のマイケル、なんとまだ弱冠19歳です。
 物怖じしないプレイはとても熱く、それでいて清々しい。テクニックは申し分ないし、なにより自分自身の「歌」をドラムで歌っているのが素晴らしいです。
 ドラム・ソロのあとはサンタナのギターと、グレッグ・ローリーのオルガンの、それぞれのソロ。
 満を持してのサンタナのギター・ソロのなんとエモーショナルなこと。ギターを存分に泣かせていますね。







 時折り観客席の様子も映し出されています。おおいに盛り上がっています。
 全身でリズムをとる者、曲に合わせて打楽器を打ち鳴らす者、思わず踊りだす者。
 その熱い観客席に後押しされるように弾きまくるサンタナ、それに絡みつくパーカッション群とシュリーヴのみずみずしいドラム。
 曲は一気に頂点へと向かいます。
 クライマックスでは再びマイケル・シュリーヴの鬼気迫るプレイ。
 演奏が終わった時の大喝采、ちょっと感動ものです。





 ウッドストックに出演した時点でのサンタナは、全国的には全く無名といってよい存在でした。事実、ギャラも極端に安かったらしいのですが、この熱演で一躍その名は高まりました。そしてこれが、この2ヵ月後に発表されたファースト・アルバムの大セールスへ結びついたのは有名な話ですね。





 当時のサンタナは、デビュー前だったので全国的には全くといっていいほどの無名バンドでしたが、地元サンフランシスコでは「フィルモア・ウェスト」の人気バンドとして知られていました。しかしフィルモア・ウェストのオーナーであるビル・グラハムはサンタナの将来性を高く評価していたので、ウッドストックへの協力を要請されたときに、サンタナを土曜日の夜といういわばゴールデン・タイムに出演させることを条件として協力を了承したのだそうです。
 ところが本番当日、バック・ステージのごたごたから予定の6時間も前に「今すぐステージに立ってくれ。それがイヤなら出演はなしだ」と突然言われました。つまりサンタナのメンバーは、ほとんど心の準備もできないままに大観衆の前に出ていかざるをえなかったのです。しかしそれにもかかわらず素晴らしいパフォーマンスを繰り広げて、観る者すべてを圧倒したのです。


 このフェスティヴァルでの「ソウル・サクリファイス」の演奏は、数あるロックの名演の中でもひときわ輝く、魂のこもったものだと思います。



 サンタナ『ソウル・サクリファイス』
 Live at Woodstock Festival 1969.8.16



ソウル・サクリファイス/Soul Sacrifice
  ■演奏
    サンタナ/Santana
  ■発表
    1969年
  ■作曲
    カルロス・サンタナ、グレッグ・ローリー、デヴィッド・ブラウン、マーカス・マローン/Carlos Santana, Gregg Rolie, David Brown, Marcus Malone (Instrumental)

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  ■収録アルバム
    ウッドストック/Woodstock (1970)
  ■演奏メンバー
    カルロス・サンタナ/Carlos Santana (guitar, percussion)
    グレッグ・ローリー/Gregg Rolie (organ, percussion)
    デヴィッド・ブラウン/David Brown (bass)
    マイケル・シュリーヴ/Michael Shrieve (drums)
    マイケル・カラベロ/Michael Carabello (conga)
    ホセ・チェピート・アリアス/Josè "Chepito" Areas (timbales)
  ■プロデュース    
    エリック・ブラックステッド/Eric Blackstead

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  ■オリジナル版収録アルバム
    サンタナ/Santana (1969)
  ■プロデュース
    サンタナ、ブレント・ダンガーフィールド/Santana, Brent Dangerfield


コメント (12)
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