ジャズの魅力。
いろんな魅力を自由に感じることができるのが"魅力"だと思います。
心地よいスウィング感。創造性。演奏技術の素晴らしさ。即興演奏。ほかにもいろんな要素はあると思います。
「スタンダーズ」と呼ばれるキース・ジャレットのトリオは、文字通りスタンダード・ナンバーを、彼らならではの斬新な解釈で聴かせてくれます。
より自由度の増した展開の面白さ、とでも言ったらいいのでしょうか。
キース・ジャレット・トリオ "スタンダーズ" 左からK・ジャレット、G・ピーコック、J・ディジョネット
目の前で繰り広げられるスリリングな即興演奏、緊張感のある音の構築、そして演奏が行われている場所を支配している熱気などが、生で演奏を聴くことの楽しみではないか、と思うのですが、このアルバムを聴いていると、部屋がまるでライヴ・ハウスのような空気に変わっていくのが感じられて、とても面白い。
仲の良い友人同士で交わされる話は、互いの言葉が互いを刺激して、どんどん会話が発展してゆくものですが、このトリオの演奏もそれに似たものを感じます。メンバー三人による、会話にも似た音のやりとりがとても新鮮で、見事に調和しているんですよね。
『星影のステラ』『ロング・ブルース』『恋に恋して』『トゥー・ヤング・トゥ・ゴー・ステディ』『今宵の君は』『オールド・カントリー』の6曲が収められていますが、どれも美しくて質の高い名演奏と言えるのではないでしょうか。
中でもに『星影のステラ』のスピリチュアルなまでの美しさは「素晴らしい」の一語に尽きると思います。
そして、6曲目の『オールド・カントリー』が終わったあとに聴かれる熱のこもった拍手と歓声、それがこのアルバムの本質を端的に伝えているような気がします。
三人の創造力と演奏技術の高さは言うまでもありません。そしてそれぞれが互いに影響を及ぼし合い、研ぎ澄まされた音を生み出してゆきます。
聴いているぼくは陶酔感に満たされます。
そう、「ジャズの楽しさ」を充分に味わうことができるんです。
◆"スタンダーズ"ライヴ!/星影のステラ (Standards Live)
■演奏
キース・ジャレット・トリオ
キース・ジャレット/Keith Jarrett (piano)
ゲイリー・ピーコック/Gary Peacock (bass)
ジャック・ディジョネット/Jack DeJohnette (drums)
■録音
1985年7月2日 パリ、パリ・デ・コングレ
■リリース
1986年
■レーベル
ECM
■プロデュース
マンフレート・アイヒャー/Manfred Eicher
■収録曲
① 星影のステラ/Stella by Starlight (Ned Washington, Victor Young)
② ザ・ロング・ブルース/The Wrong Blues (William Engvick, Alec Wilder)
③ 恋に恋して/Falling in Love with Love (Lorenz Hart, Richard Rodgers)
④ トゥー・ヤング・トゥ・ゴー・ステディ/Too Young to Go Steady (Harold Adamson, Jimmy McHugh)
⑤ 今宵の君は/The Way You Look Tonight (Dorothy Fields, Jerome Kern)
⑥ オールド・カントリー/The Old Country (Nat Adderley, Curtis Lewis)