♪作曲家にして建築家、ジョン・ケージ(John Cage 1912~1992)
何かと慌しい今の世の中に生きているわれわれですが、時には何もかも忘れてのんびりしたい、と思ったりします。
こういう考え方を持つ人はあちこちにいるとみえて、「変化の早い現代社会における平静と緩慢な時の流れの再発見」というコンセプトをもとに、今、ドイツである曲が演奏されるプロジェクトがゆっくり進行しています。
曲のタイトルは、その名も『できる限りゆっくりと』。
この曲の演奏時間、なんと639年(!)なんだそうです。
正確なタイトルは、『Organ2/ASLSP"(As Slow As Possible)』
作曲者は、アメリカの作曲家ジョン・ケージ。
ん? ジョン・ケージ?
この人、たしかあの稀代の"怪曲"『4分33秒』を作った人ですよ。
うーむ、ジョン・ケージって人、いろいろやってくれますね~。
演奏されている場所は、ドイツのハルバーシュタットにある、ブキャルディ廃教会です。
演奏は2001年9月5日に始まり、2639年まで続きます。
最初の1年半は全くの無音(!)。
2003年2月に、ようやく最初のコード(ソ♯、シ、ソ♯)が鳴らされ、2004年になって新たなオモリが鍵盤に置かれて、1オクターブ下の「ミ」の音が加えられました。
そして今年、演奏開始から5年目にして、今後数年間鳴り続ける予定の第二のコード(シ、ド、ファ♯)へと曲は進行したんだそうです。
この『できる限りゆっくりと』という曲は、もともとは20分間のピアノ曲として発表されたものです。
今回の演奏プロジェクトを推進している「ジョン・ケージ・オルガン・プロジェクト」は、この曲のタイトルに込められた思想を尊重して、演奏を639年もの長きに渡って行うことにしたのだそうです。
「639年」という演奏時間は、この教会に初めてオルガンが設置された1361年から、プロジェクトが開始された2001年までの年月を元に設定された、ということです。
この演奏、何世代にも渡って脈々と受け継がれてゆくんですね。考えてみると、ロマンティックでさえあります。数百年後の人は、何百年もの間鳴り続けるオルガンの音を聴くことができるんですからね。
プロジェクトに参加している人たちは、「3年後にラの音を出すのを忘れるなよ!」なんて言い伝え合うのかな。
ジョン・ケージという人は、尽きることのない数々のアイディアを持っていることで知られています。ケージの師であるシェーンベルクは、彼を「天才的な発明家」と呼んでいたほどです。
代表曲に、音を一切発しない『4分33秒』や何をしてもよい『0分00秒』などを持つケージに対しては、「現代音楽界最大の作曲家」と絶賛する者もいれば、「ただの詐欺師」と言う者もいるようです。
これは演奏というより、もはや「パフォーマンス」といった方がいいかもしれません。それにしても気の長い話です。
でも、時間に追われる一方の現代の中でのこういう発想は、「時間に縛られない自由」もあるということのささやかな主張なのかもしれません。
ひとつだけはっきり言えること、それは「この曲を最初から最後まで通して鑑賞することはできない」ということです。
この廃教会だけが曲のすべてを聴いているのです。
【同プロジェクトの公式サイト】
ASLSP - John-Cage-Orgelprojekt Halberstadt
ページ右上のカウントが残り演奏時間(秒)です。
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何かと慌しい今の世の中に生きているわれわれですが、時には何もかも忘れてのんびりしたい、と思ったりします。
こういう考え方を持つ人はあちこちにいるとみえて、「変化の早い現代社会における平静と緩慢な時の流れの再発見」というコンセプトをもとに、今、ドイツである曲が演奏されるプロジェクトがゆっくり進行しています。
曲のタイトルは、その名も『できる限りゆっくりと』。
この曲の演奏時間、なんと639年(!)なんだそうです。
正確なタイトルは、『Organ2/ASLSP"(As Slow As Possible)』
作曲者は、アメリカの作曲家ジョン・ケージ。
ん? ジョン・ケージ?
この人、たしかあの稀代の"怪曲"『4分33秒』を作った人ですよ。
うーむ、ジョン・ケージって人、いろいろやってくれますね~。
演奏されている場所は、ドイツのハルバーシュタットにある、ブキャルディ廃教会です。
演奏は2001年9月5日に始まり、2639年まで続きます。
最初の1年半は全くの無音(!)。
2003年2月に、ようやく最初のコード(ソ♯、シ、ソ♯)が鳴らされ、2004年になって新たなオモリが鍵盤に置かれて、1オクターブ下の「ミ」の音が加えられました。
そして今年、演奏開始から5年目にして、今後数年間鳴り続ける予定の第二のコード(シ、ド、ファ♯)へと曲は進行したんだそうです。
この『できる限りゆっくりと』という曲は、もともとは20分間のピアノ曲として発表されたものです。
今回の演奏プロジェクトを推進している「ジョン・ケージ・オルガン・プロジェクト」は、この曲のタイトルに込められた思想を尊重して、演奏を639年もの長きに渡って行うことにしたのだそうです。
「639年」という演奏時間は、この教会に初めてオルガンが設置された1361年から、プロジェクトが開始された2001年までの年月を元に設定された、ということです。
この演奏、何世代にも渡って脈々と受け継がれてゆくんですね。考えてみると、ロマンティックでさえあります。数百年後の人は、何百年もの間鳴り続けるオルガンの音を聴くことができるんですからね。
プロジェクトに参加している人たちは、「3年後にラの音を出すのを忘れるなよ!」なんて言い伝え合うのかな。
ジョン・ケージという人は、尽きることのない数々のアイディアを持っていることで知られています。ケージの師であるシェーンベルクは、彼を「天才的な発明家」と呼んでいたほどです。
代表曲に、音を一切発しない『4分33秒』や何をしてもよい『0分00秒』などを持つケージに対しては、「現代音楽界最大の作曲家」と絶賛する者もいれば、「ただの詐欺師」と言う者もいるようです。
これは演奏というより、もはや「パフォーマンス」といった方がいいかもしれません。それにしても気の長い話です。
でも、時間に追われる一方の現代の中でのこういう発想は、「時間に縛られない自由」もあるということのささやかな主張なのかもしれません。
ひとつだけはっきり言えること、それは「この曲を最初から最後まで通して鑑賞することはできない」ということです。
この廃教会だけが曲のすべてを聴いているのです。
【同プロジェクトの公式サイト】
ASLSP - John-Cage-Orgelprojekt Halberstadt
ページ右上のカウントが残り演奏時間(秒)です。
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とてつもない時間をかけた音楽ですね!
あまりにも唐突なお話で、思わず口をあけっぱなしで読ませていただいてしまいました。
おどろいた後で、だんだん面白さがこみ上げて来ました。不思議。
考えることがケタ違いというか・・・
でも、このスケールのデカさが一種のロマンを感じるんです。
こういうところにも「遊び心」が生きているんじゃないでしょうか。