キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

読み聞かせ

2014-11-14 11:14:39 | 絵本
              

              春には白やピンクの可愛い花をつける花水木ですが、秋にも美しい木

              です。赤く色づいた葉と鮮やかな赤い実が青空に映えます。もう11月

              も半ば、昨日は毎月1度の小学校での「読み聞かせ」に行きました。

              「読み聞かせ」という言葉、「読んで聞かせてやるぞ」という感じの

              上から目線の言い方で、あんまり好きじゃないのですが、じゃあ、どう

              いうかというと、良い言葉も思いつきませんが。まあ、呼び方なんてど

              うでもいいか。

ざぼんじいさんのかきのき (のびのび・えほん)
織茂 恭子
岩崎書店

              今回は季節柄、柿の話です。ケチンボのおじさんが、自分の甘い柿の

              実を人にあげるのがいやで、結局柿の木を切ってしまって、元も子も

              なくし後悔するという、なにやら「金の卵を生むガチョウ」のような、お

              伽話っぽいお話です。のんびりした感じの絵が秀逸で、柿の実がほん

              とにおいしそう。日本の秋の色、秋の風景です。
            
しっぽのはたらき (かがくのとも傑作集―どきどきしぜん)
薮内 正幸
福音館書店

             打って変わってこれは科学絵本。1冊こういうのを入れると、お話し会

             全体の雰囲気がピリッとします。絵が緻密でリアルで、前のページに

             しっぽだけを出し、一体何のしっぽかを推測させ、次のページでその

             動物の全体の姿を見せるという賢い進め方をしています。人間にも

             昔はあったかもしれないしっぽ。こうやって見ると面白いものです。

             そういえば、うちのなっちゃん、お散歩に行こうというと、ものすごい

             勢いでしっぽを振ります。「犬がじぶんのしっぽを見て歌う歌」という

             やなせたかしさん作詞、木下牧子さん作曲の歌があります。「ぼくはな

             ぜしっぽがあるんだろ、、、」

へびのクリクター
中野 完二
文化出版局

             最後にドイツのトミー・ウンゲラーの楽しい絵本を読みました。ウンゲ

             ラーには、動物を主人公にした素敵な絵本がいくつかありますが、この

             へびのクリクターを初め、タコやコウモリなど、あまり絵本の主人公に

             なりそうにないちょっと気味悪い動物が多いのが面白いところです。

             でもどの動物も気が良いんですよね。賢いやさしいクリクターは人気者

             になり、銅像まで作られ、幸せに暮らします。世界中で一番愛されてい

             るヘビかもしれません。誰だって主人公になれる、絵本っていいですね。
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初秋の山中湖

2014-09-17 15:03:11 | 絵本
             

             イタリアのペルージャで、9月初めに「世界湖沼会議」というのが

             開かれました。1984年琵琶湖畔で「人と湖の共存」というテーマで

             開かれてから、世界の様々な地域で、湖沼の環境問題について、

             それに対する取り組みについて様々な議論が行われ、意見が交

             換されています。15回目の今年の副題は「Lakes:湖沼は地球の鏡

             生態系と人間活動の健やかな調和に向けて」です。

             

             世界で一番透明度の高い湖はバイカル湖、日本では摩周湖だ

             そうですが、ここ山中湖もそれには遠く及ばないものの、きれい

             な湖です。とは言え地球全体の環境変化を、湖だけが免れる

             ことができるわけではないので、様々な問題をはらんでいます。

             有名な観光地故に過剰に利用され、動植物種が減少している

             のも事実のようです。エコツーリズムの考えに沿った取り組みが

             真剣に行われているようですが。

             

               湖岸では、春に可憐な白い花の咲くエゾノコリンゴの木が、黄色い

               小さい実をつけていました。
 
                  

                 盆花にするミソハギがあちこちに生い茂っています。

                 濃い紅色の小花が筒状に咲くきれいな花です。でも

                 この花、世界の侵略的外来種ワースト100に入ってい

                 る植物です。本来の生息地以外に侵入した外来種の

                 うちで、生態系に影響の大きい植物に入るそうです。

                 こんなに可愛いのにね。どんどん減って、絶滅が危惧

                 される生物も多い中、こんなのもあるんですね。厄介

                 なことです。      
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なつのおとずれ

2014-07-17 11:19:45 | 絵本
                 

             まだ梅雨は開けないようですが、だれかと出会うと「暑いですね」が挨拶

             になるこの頃です。

                 

             春のモンシロチョウやモンキチョウより、アゲハチョウを見ることが多

             くなってきました。

                 

                    マツバボタンの赤い花が元気です。

                 

               なっちゃんもそろそろエアコン無しではいられなくなってきました。

             
なつのおとずれ (PHPわたしのえほんシリーズ)
かがくい ひろし
PHP研究所

            そんな季節にピッタリの絵本を見つけました。「なつのおとずれ」。

            こどもたちに大人気の「だるまさんシリーズ」の作者かがくいひろし

            さんの絵本です。メロン、スイカ、扇風機、ヒマワリ、かきごおり、

            アイスクリーム、カブトムシ、セミ、夏のスターたちの出番到来、

            梅雨明けの雷の下を走りぬけ、そうめん流しに乗って全速力で

            やってきます。真っ赤なお日さまのパッカーと開いた口から、は

            ーい、到着!暑い暑い日本の夏が到着!おひさまギラギラ、み

            んな汗だらだら、犬はハーハー。でもね、夏はこうでなくっちゃ。

            「ねっちゅうしょうには、ごちゅういください」

            
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The Carrot Seed-にんじんのたね、または、ぼくのにんじん

2014-07-08 09:45:02 | 絵本
The Carrot Seed
Crockett Johnson
Perfection Learning

           ルース・クラウスのお話、クロケット・ジョンソンの絵の"The Carrot Seed"は

           もう随分前、1945年初版の絵本です。星の数ほどある絵本、その中でなぜ

           だかクロケット・ジョンソンの絵と文がとても好きです。極端に単純な線だけ

           で書かれていて、色も2色か3色。芸術的な絵を好む人にはちょっと物足り

           ないかも知れません。でもそれが魅力です。小さい男の子、女の子のまるっ

           こさ、愛らしさがたまりません。The Carrot Seedには「ぼくのにんじん」と「に

           んじんのたね」と2種類の訳本が出ています。

にんじんのたね
クロケット ジョンソン,Ruth Krauss,Crockett Johnson,小塩 節
こぐま社

ぼくのにんじん
クロケット・ジョンソン,渡辺 茂男
ペンギン社

            A little boy planted a carrot seed.

            1ページ目の文章はたったこれだけ。

            His mother said'I'm afraid it won't come up.'

            2ページ目の文章はたったこれだけ。

           それなのに、2種類の訳本が出ています。こぐま社のおしおたかしさんのは、

           タイトルが「にんじんのたね」で、原文に忠実な訳です。

            「にんじんのたねをひとつぶ、おとこのこがつちにまきました。」

           ペンギン社のわたなべしげおさんのは、タイトルが「ぼくのにんじん」となり、

            「ぼく にんじんのたね まいたんだ」と一人称になり、主人公の主張が

           強くなっています。客観的な原文の調子を変えて、「ぼくが、、、」とする理

           由があるのかな?とちょっと思います。子どもにはその方が自分と一体化

           できて良いのでしょうか?こんな短い単純な英語を日本語にするだけでも、

           どこまで変えていいのか?そもそも原文に忠実な翻訳とか、こなれた日本

           語訳なんていうのが、どんなものなのか、キッチン・トランスレーターとし

           ては、なかなか考えさせられる題材ではあります。

           
           
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10までかぞえられるこやぎ--北欧の魅力的な児童文学

2014-06-27 22:10:57 | 絵本
10(とお)までかぞえられるこやぎ (日本傑作絵本シリーズ)
林 明子,山内 清子
福音館書店

           数ってなんでしょう?「数える」ということの意味を考えさせる絵本です。

           10まで数えられるコヤギがいました。ウシやウマやブタや、周りにいる動物を

           どんどん数えます。数えられた動物たちは、なんだか侮辱されたような気がし

           て、コヤギを追いかけます。数えるということの意味が分からないからです。

           だけど、結局コヤギが数を数えられたお陰で、みんなが助かります。定員10人

           の船に10人以上乗っていないのがわかり、無事に向こう岸に着けたからです。

           コヤギは船の乗客の数を数えるかかりになりました。

           

           一芸は身を助くでしょうか。ある意味バカバカしいようなでもとても楽しい

           北欧の広々としたのや山野を背景に動物たちが生き生き描かれた絵が

           秀逸な絵本です。それもそのはず、書いたのは「スプーンおばさん」でお

           なじみのノルウエーの人気児童作家アルフ・プリョイセンです。のどかな

           ちょっととぼけた雰囲気が良い味わいです。

小さなスプーンおばさん (新しい世界の童話シリーズ)
大塚 勇三,ビョールン・ベルイ
学習研究社
星のひとみ (こどものための世界童話の森)
箕田 美子,渡部 翠
集英社
こんにちは、長くつ下のピッピ
イングリッド・ニイマン,いしいとしこ
徳間書店

          昔から、北欧の子供向けのお話が何故か好きでした。スプーンおばさんはノルウエー、

          星のひとみを書いたトペリウスはフィンランド、長くつ下のピッピはスエーデンのアスト

          リリッド・リンドグレーンの作ったお話です。どれも北欧の澄んだ空気と、素朴なやさし

          い心根が感じられて、悲しい時や、苛立っている時、心を和ませてくれる鎮静剤のよ

          うな絵本たちです。
北欧神話 (岩波少年文庫)
ウィリー・ポガニー,Padraic Colum,尾崎 義
岩波書店

          北欧というとバイキングの国々で、勇猛果敢で荒々しいイメージがあるのですが、

          神話からして、ギリシャの神話と比べると、なんだか神様たちがほのぼのして

          人間味に溢れ、親しみが持てます。なぜかはわかりませんが、今私の中に北欧

          ブームが来ています。
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そらまめくんのベッド

2014-05-27 09:28:08 | 絵本
そらまめくんのベッド (こどものとも傑作集)
なかや みわ
福音館書店

            そらまめくんのベッドはふわふわ、雲のよう。こんなにぐっすり眠れるベッドは

            他にありません。えだまめくんも、グリーンピースの兄弟も、さやえんどうさん

            も、ピーナッツくんも、ふかふかベッドで寝てみたいとやってきますが、そらま

            めくんはだれにも貸してあげません。そんなあるひ、「あっ!ベッドがない!」

            そらまめくんのベッドが行方不明。他の豆たちが同情して、自分のベッドを貸し

            てあげようとしますが、えだまめくんのベッドは小さい。クリーンピース兄弟の

            は細い。さやえんどうさんのはうすい。ピーナッツくんのはかたい。そらまめく

            んはベッドをさがす旅にでました。すると、うずらがそらまめくんのベッドでた

            まごをあたためていました。しかたがない、たまごがかえるまで待ちましょう。

            やがて「パリッ、パリッ、ピヨッ、ピヨッ」ひよこが生まれて、うずらのお母さん

            とひよこたちは行ってしまいました。やっと取り返したふかふかベッド、そ

            らまめくんはみんなをベッドに招待しました。みんなぐっすりねむってね。

            

            「そらまめくんのベッド」は、なかやみわさんのとても可愛らしい絵本です。

            ふかふかの綿毛の中で寝ているそらまめくんが、ほんとに気持ちよさそう。

            実際にそらまめをさやから取り出すのが私は大好きです。ふかふかベッド

            から大きな豆がゴロンと出てきます。その感覚を素直に描いた本当にチャ

            ーミングな絵本です。

            

                 peaやbeanや、豆の美味しい季節です。

            

               そらまめはその形状から幅広の豆broad beanというようです。

            

            グリーンピースはgreen peas。英語ではえんどう豆の類はpea。それ以外の

            いんげん豆やそら豆や大豆はbeanと呼ぶようです。 あっ、なんきん豆は

            peanutだけど。
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おべんとう

2014-03-23 11:21:00 | 絵本
わたしのおべんとう
スギヤマ カナヨ
アリス館
ぼくのおべんとう
スギヤマ カナヨ
アリス館
 
         夫のお弁当、子どものお弁当、三十数年作り続けてきましたが、去年で卒業。作っ

         ているときは、けっこうマンネリで、前夜の残り物、冷凍食品多用。面倒だなと思

         うとも多かったのですが、今となっては懐かしい。まして、こんなかわいい本を見

         ると、また作ってみたくなります。今度は義務感からじゃなくて、もっと楽しんで。

         

         パカーンとフタを開けると、白いご飯に海苔、玉子焼きと唐揚げ、グラタン、プチト

         マト。これはもう子どものお弁当の王道メニュー。唐揚げと隣のお友達のミートボ

         ールを取り替えっこ。これも楽しい。どんどん美味しく食べていくと、おやおや、お

         母さんやりますね、ご飯の下にタコさんウインナーが隠れてた。ああおいしかった!

         

         NHKの朝の連ドラ「ごちそうさん」じゃないけれど、食べることって人生のかなりの

         部分を占めています。もっとも、食に興味のない人というのもいるようです、信じら

         れないのですが。その上、世界には飢えに苦しむ人が無数にいる。テレビを点け

         ると、食の番組ばかり。複雑な気持ちにもなりますが、豊かさに感謝して、食材を

         有効に使わなくてはと思います。

おさるのパティシエ
中谷 靖彦
小学館

         ちなみに、食べることがますます楽しくなるこんな絵本もあります。ヒット商品を

         作って欲しいと頼まれたおさるのパティシエくん。おさるらしく、バナナを多用し

         た大胆かつ破壊的な試行錯誤の後に、たくさんのユニークなお菓子を作ります。

         でもね、1回作ったら、レシピをみんな忘れちゃった。二度と同じものは作れま

         せん。私とおんなじ!

         
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The Happy Day - はなをくんくん

2014-03-19 15:47:52 | 絵本
The Happy Day
Marc Simont
HarperCollins

はなをくんくん (世界傑作絵本シリーズ―アメリカの絵本)
マーク・シーモント,きじま はじめ
福音館書店
              深い雪の森の中、クマもネズミもカタツムリもリスもウッドチャック

              も穴の中で、土の下で眠っています。だけど今、みんな目を覚まし

              て、はなをくんくん、走り出します。クマもネズミもカタツムリもリスも

              ウッドチャックもくんくん。みんなで一斉に同じ方へ走り出します。そ

              して「オー!」かわいい花が一輪、雪の中から顔を出していました。

              

              雪の森も、可愛いけれど妙にリアルな動物たちも、1ページ目から

              全て白黒で描かれています。だから、最後のページで、動物たちに

              囲まれて雪の中から、ぽっと顔を出した花の"黄色"が目に染みます。

              春が来る喜びが、とてもすてきに表現された「A Happy Dayうれしい日」

              の絵本ですが、日本語訳本のタイトルの「はなをくんくん」というのも言

              い得て妙の題名です。踊る動物たちの嬉しそうな様子に心和みます。

                   

              北海道や東北ではまだ雪の日が続いているようですが、関東のこの辺り

              では、白モクレンが咲き始めています。コブシの花の咲く北国の春もあと

              もう一歩というところまで来ています。

                

                薄紫のオダマキの鉢を買いました。春の花です。英名をcolumbine(ハト)と

                言います。蕾がハトに似ているからだそうです。

                
            
                 ピンクの馬酔木の花を見つけました。これも春の花です。昔、関西に住んで

                 いた頃、奈良公園でみた馬酔木の花をなぜとはなく思い出しました。

                   馬酔木咲く奈良に戻るや花巡り        碧梧桐

                
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あたまにつまった石ころが

2014-03-13 09:54:06 | 絵本
あたまにつまった石ころが
ジェイムズ スティーブンソン,Carol Otis Hurst,James Stevenson,千葉 茂樹
光村教育図書

                Rocks in ones head(頭に石ころがつまっている)という英語の表現は

                「ばか」と同意語です。日本語なら反対に頭がカラッポというところ

                でしょうか。でもね、この絵本の主人公、作者のハーストさんのお父

                さんの頭の中にはぎっしり石が詰まっていたけれど、「ばか」からは

                程遠い人だったんです。

Rocks in His Head (Avenues)
James Stevenson
Greenwillow Books

                大恐慌の時代、貧しくて大学にも行けず、自動車修理屋さんとして

                一生懸命働くのですが、生まれた時から石が好き。暇を見つけては

                石を集めました。頭もポケットも何時も石でいっぱい。仕事が無い

                時には、科学博物館へ行って、終日石を眺めてすごします。そんな

                姿が館長さんの目に止まり、博物館の守衛となり、やがて鉱物学

                部長に!「好きこそものの上手なれ」、「芸は身を助すく」。サッカー

                のカズや、ジャンプの葛西や、バイオリニストの五嶋みどりや、先

                に紹介した雪の写真家ベントレーなど、何かに打ち込み続けてい

                る人って惚れ惚れしますね。そんな一途な人生、羨ましい限りです。
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冬のお話

2013-12-26 16:28:16 | 絵本
                        
            
            街路樹の葉がもうすっかり落ちて、寒い季節になりました。数カ月前の

            猛暑が嘘のようです。今夜は雨になるようですが、朝起きてみると、辺

            りが真っ白、なんてこともありそうな寒さです。こんな季節になると読

            みたくなる本や絵本がいくつかあります。日本のお話だと、

手ぶくろを買いに (日本の童話名作選)
黒井 健
偕成社

            新見南吉の「手ぶくろを買いに」など。特に黒井健さんの絵の本。ふんわか

            たキツネの毛並みの感じがたまりません。寒くて「かあちゃん、お手々が冷

            たい、お手々がちんちんする、、、」と言った子ギツネを、母さんギツネは

            人間の町に手ぶくろを買いに行かせます。人間に化けた手じゃない、キツネ

            のままの手を出したのに、赤い手ぶくろを売ってくれたおじさん。人間不信

            の母さんギツネは、そこで考えを改めようかと思います。でも、そんな人間

            の所へ子どもを一人で行かせた時点で、ちょっとどうかなと思うお話ではあ

            るのですが、そのほのぼのとして、それでいて切ない語り口が、そんな矛盾

            など吹き飛ばしてしまう名作です。
            
水晶 他三篇―石さまざま (岩波文庫)
手塚 富雄,藤村 宏
岩波書店

            外国物で好きなのは、アーダルベルト・シュティフターの「水晶」という短篇

            です。「みかげ石」、「石灰石」など入った「石さまざま」という短編集の中

            の一編です。あるクリスマスイブ、スイスの小さな村に住むコンラートとザ

            ンナという幼い兄妹が峠を超えてお母さんのお里に行くことになりました。

            その帰り道二人は雪の山で道に迷ってしまいます。一晩山の中で過ごす

            ことになった二人。妹を守り眠らせまいとする兄、素直に兄の言うことを聞

            く妹。読んでいて、その健気さに熱いものがこみ上げてきます。えも言われ

            ず美しい氷の壁(これを水晶に見立てています)を通って、二人はどんどん

            山の上へと登って行ってしまうのですが。その日はクリスマス、神様のお恵

            みでしょうか、二人は村人の捜索隊に無事助けられます。やさしい、やさしい

            気持ちになるお話です。
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