読み聞かせの会で、この「100ぴきのくまさん」を初めて知ったのですが、絵が
あまりにもチャーミングで惹きつけられました。
くまの子どもが、風邪を引いたおじいさんのために町へ薬を買いに行くのですが、
猟師がそれを見ていて、帰ってきた時に撃ってやろうと思います。くまの子は、
おじいさんを心配する大勢の子どもたちと一緒に薬を買って戻ってきます。み
のかさをつけた子どもたちが、みんなくまだと思った猟師は怖くなって逃げて
いきます。
何だか理不尽な話でしすよね。絵本にしても。くまの子といっても、人間の子と
同じに、お話もできるし、おじいさん思いです。それなのに、くまだったら、鉄
砲で撃って、熊汁にしてしまうつもりなんです。絵本ならでこその矛盾といって
しまえばそれまでですが、人間の思い上がりのようなものが見えませんか?
絵があまりに可愛いので、最初はとても惹かれたのですが、よくよく考えると、
複雑な気持ちになる絵本です。
絵本には熊がとても良く出てきます。これほど現実の存在とお話の中の存在が
かけ離れた動物もいないかも知れません。現実のくまさんは結構やっかいがられ
ています。森や山で出会ったら、可愛いなんて言っていられません。結局人間の
側の都合でということですが。
おなじみの童話「3びきのくま」は、イギリスの民話で、トルストイが
再話したことで有名ですが、20世紀初頭に作られたこの絵本の挿絵は、
ものすごくリアルで、三匹の熊は獰猛そのもの、森でこんな熊に会った
ら大慌てで逃げるか、死んだふりをするか。くまの家のおかゆを食べて
くまの家のベッドで寝た主人公のゴルデロックスも、結局追いかけられ
命からがら逃げていくのですが、もし捕まっていたら、なんて考えるの
は絵本の読み方じゃないですよね。もっとも、絵本からは少し離れます
が、「本当は怖いグリム童話」なんていうのがあるように、民話はハッピー
ハッピーだけで終わらない、人間動物その他も諸々森羅万象の奥深さ
を表す凄みみたいなものを持っていることがありますからね。