1月、ミス・マギリカディーの庭に奇妙な木が生えました。「鳥たちの贈り物ね、でも
なんて不思議な形でしょう」3月、木はどんどん大きくなって、緑の葉が茂りました。
ところが、その葉っぱは緑のお札だったのです! 5月、ミス・マギリカディーは近
所の子供たちにそのお札をあげました。6月、当然ながら、お札をもらった子どもの
親たちがやって来たので、ミス・マギリカディーは気前よくお札を分けてあげました。
7月、8月、9月、うわさを聞きつけた人々が、お札を手に入れようとわんさかやって来
ました。昼も夜も、はしごをかける者、木をゆする者。10月になって、木のお札は茶
色くなってミス・マギリカディーはほっとしました。もう誰も来ないでしょう。いえいえ
11月の吹雪の朝も、木の下の雪を掘り返してお札を探している人たちがいました。
12月、ミス・マギリカディーは近所の子どもたちに木を切り倒させました。そうして、
その木で作った薪を暖炉にくべて、一冬を暖かく過ごしました。
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私なら、お金のなる木があって、それが採り放題だったら、やっぱり行くでしょうね。
節分の豆まきやお餅まきなどで、争って拾い合い、人の分までもぎ取ろうとしたこ
とがあります。ただ、お金がほしいというだけじゃなく、そういうのって人の性じゃ
ないかという気もします。でもミス・マギリカディーは違います。一年間、お札を奪
い合う人々を見続けて、さっさと木を切ってしまいます。すると、読んでいる私も、
ほっとしたような気分になりました。こんな厄介なお宝なんかない方が良いという
ような。人間、どちらの気持ちもあるのでしょうか。この本の書きぶりも、別に善悪
を決め付けるようなものではありません。
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何より淡々とした文章と、パステルカラーのふんわりした美しい絵が、本当によくマ
ッチしていて、癒しの絵本です。最初絵が女性で、文が男性かと思ったのですが、
絵が夫のデイヴィッド・スモ-ル、文が妻のサラ・スチュワートのご夫妻の作でした。
このご夫妻、ほかにも数冊共作絵本がありますが、どれもわが道を行く女主人公の
お話で、庭師でもあるデイヴィッド・スモールの庭や花や動物たちの絵が目を見張
るすばらしさです。