キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

孤木

2014-01-30 16:21:43 | 季節の花々
                       

                 山の上のいっぽんの さびしいさびしいカシの木

                 とおくの国へ行きたいと 空行く雲にたのんだが

                 雲は流れて消えてしまった

                 
                 山の上のいっぽんの さびしさびしいカシの木が

                 私といっしょにくらしてと やさしい風にたのんだが

                 風はどこかへきえてしまった

       
                 山の上のいっぽんの さびしさびしいカシの木は

                 今ではとても年をとり ほほえみながら立っている

                 さびしいことになれてしまった         

                          作詞:やなせたかし 作曲:木下牧子 「愛する歌」より 


                やなせたかしさんのしみじみした詩に、木下牧子さんが素朴な美しいメロディーを付

                けた心にしみる歌です。最後の「さびしいことになれてしまった」というところなんか、

                この高齢化社会、身につまされるような歌詞です。でもね「ほほえみながら立ってい

                る」んです。雲や風とつかの間でも触れ合ったことを思い出しているのでしょうか、

                穏やかな良い一生だったという悟りの境地でしょうか、長生きなさったやなせさんの

                心象風景でしょうか。

静かな木 (新潮文庫)
藤沢 周平
新潮社

                コーラスで歌った「さびしいカシの木」を不意に思い出したのは、藤沢周平の

                「静かな木」を読んだからでしょうか。でも、この本の主人公の老人は、さびしい

                樫の木とは違って、寺の境内にたった一本すっくと立つ葉を落とした欅の老木

                に我が身をなぞらえ、このように一人孤高に枯れていきたいと思っているので

                すが、俗世のしがらみや愛憎に絡め取られ、なかなかそのような境地に達する

                ことが出来ません。まあ、それはそれでよしとする、藤沢周平らしい穏やかな顛

                末の話です。
山本周五郎長篇小説全集 第一巻 樅ノ木は残った(上)
山本 周五郎
新潮社

                山本周五郎の「樅の木は残った」もまた、孤高の樅の大木に己を重ねあわせる

                原田甲斐の話です。「私はこの木が好きだ。この木は何も語らない。だから私は

                この木が好きだ」ここでも、樅の木に自分を投影しています。誹りを受けても、何

                一つ語らず、弁明せず、ただ藩の存続だけを望んで絶命した原田甲斐の崇高な

                姿が樅の木に凝縮されています。

                樫、欅、樅、種類は違うけれど、孤木には人に訴えかける崇高さがあります。
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雪の写真

2014-01-25 15:13:51 | 地球
          

          ある冬の朝目覚めると、いつになく辺りがシンと静まり返っているとき、カー

          テンを開けてみると、そこは一面の銀世界で、感動することがあります。

          でもそれは、ほんの時たま雪が降る我が家のあたりの話で、豪雪地帯で

          はそんな悠長なことは言っていられないでしょうね。雪かきの大変さは、想

          像を超えるものがあるようです。

雪の写真家ベントレー
メアリー アゼアリアン,Jacqueline Briggs Martin,Mary Azarian,千葉 茂樹
BL出版

          でも、アメリカ、バーモント州のジェリコという豪雪地帯の小村に生まれ、一生

          何にもまして雪を愛して雪の写真を撮り続けたベントレーという農夫がいました。

          これは彼の一生を描いた美しい絵本です。メアリー・アザリアンという画家の独

          特の風合いの版画がいい味を出しています。

Snowflake Bentley
Mary Azarian
Turtleback Books

          雪の結晶の美しさに魅了され、皆にもそれを見せてあげたいと思うのですが、

          雪片の命は儚く、写生し終わる前に消えてしまいます。貧乏な農家の息子で、

          お母さんに読み書きを習っただけで、ろくに学校にも行けなかったベントレー。

          しかも時代は未だ19世紀。写真機は手の届かないほど高価です。でも家族は

          温かく、特に息子を愛するお父さんは、雪の写真を撮って何になると言いながら

          も、無理をして写真機を買ってくれます。そこからベントレーの雪の結晶の終生

          の研究が始まりました。雪の結晶って、6角形なのは共通していますが、同じ形

          のものは2つとないのだとか。本当に美しく神秘的です。温かい家族の愛に支

          えられ、名誉も私欲も求めず、ひたすら美しい雪の結晶を追い求め続けた生涯。

          今も世界中で、彼の美しい写真集は版を重ねの愛読されています。

Snowflakes in Photographs (Dover Pictorial Archive)
W. A. Bentley
Dover Publications
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梅一輪

2014-01-23 18:02:11 | 季節
           

           なっちゃんは風邪をひいたのか下痢気味で、いつにもまして元気がありません。

              

           でもね、お友だちが来ました。柴犬?いえ、千葉犬さんです。しっぽが

           ピーナッツ型ですから。娘のお友だちが贈ってくれました。

           

           そんななっちゃんにも春の気配が忍び寄っています。これはおおきな蝋梅の木。

           

           猫柳のようにあったかそうな衣をまった新芽も出てきました。

           

           そして梅も咲き始めています。

           

           きれいな紅梅。 梅一輪一輪ほどの暖かさ    服部風雪

           ですね。明日は暖かいそうです。
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寒酒

2014-01-22 16:13:39 | 季節
             

             夫が酒蔵見学会に行き、大満足で帰ってきました。茨城県の蔵元で

             これは途中に寄った道の駅「しもつま」。どこかで聞いたような名前だ

             と思ったら「下妻物語」という映画がありましたね。コミックが原作の。

             深田恭子と土屋アンナのロリータとヤンキーの友情物語でしたっけ。

             なかなか、面白い土地柄のところのようです。

             

             来福酒造という、良い名前の蔵元さんです。

             

             

             その名も「来福」といういろいろな種類のお酒をつくっているとか。

             寒酒とは寒造りのお酒のことで、昔厳冬の時期に造ったものを

             言ったそうで、技術の進んだ今では、あまりそんな区別もなくなっ

             ているようですが。「寒」がつくと何となく美味しそうな気がします。

             

             おみやげに持ってかえった出来たての発泡日本酒の美味しかったこと!

             このごろ発泡日本酒(スパークリング日本酒)が流行りのようです。この

             来福の発泡酒も、とても軽くてフルーティ。高級なシャンパンは飲んだこ

             とがないのでわからないけれど、普通のスパークリングワインには、まっ

             たく負けていない美味しさです。
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寒雀

2014-01-21 10:55:19 | 季節
            

              さかしまに小鳥が揺るる青木の実       大場志津子

            寒い朝、小鳥の声に目が覚めます。寒いのに小鳥は元気です。

              寒雀顔見知るまで親しみぬ          富安風生

            なんていう句もあります。寒くなって、餌を求めて民家に近づく雀を

            寒雀とかふくら雀か言うそうです。その雀の顔を、識別できるほど

            日がな一日眺めていたのでしょうか。風生は高級官僚を退官した後

            句作三昧の優雅な生活を送った人のようです。でも寒雀は滋養があ

            ると言って昔は好んで食べられた食鳥でもあったとか。

            

            機嫌良く川辺で遊んでいるカモだって、可愛い、可愛いなんて言いながら、

            鴨鍋なんかにして食べるんですからね。人間なんて勝手なものです。

            

            

            野草だって逃れられません。人間はたいていの野草は食べますからね。

            でもこの水仙は大丈夫。毒性があるから、人間に食べられる気遣いはあ

            りません。時々ニラと間違えて食べて中毒を起こす人がいるようですが。

               水仙や寒き都のここかしこ          与謝蕪村
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なっちゃん、礼儀正しい小学生に出会う

2014-01-16 09:32:43 | ペット
            

            連日の寒さに、こたつ犬となって丸まっているなっちゃんですが、

            

            暖房が入ってあったまってくると、丸まっていたのがだんだん解けて

            

            こんな、あられもない格好に伸びていきます。

            

            でも、一旦外にでると、寒いのもなんのその、散歩好きななっちゃんは、がん

            ばってシャカシャカ歩きます。昨日、散歩の途中に公園へ入って行くと、「こん

            にちは、触ってもいいですか」と小学校3,4年ぐらいの男の子が近寄って来ま

            した。「この子はお手ができますか?」「できないの」「おすわりができますか?」

            「できないの」「じゃあ、速く走れますか?」「気が向けばね」「そうですか、あり

            がとうございました」 敬語の少年と触れ合ったひとときでした。
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残った趣味

2014-01-14 10:35:54 | 趣味
           

           スポーツは見るのは好きだけど、する方は全くダメな私、どうしても趣味は

           室内でするものになってしまいます。油絵、水彩画、粘土の人形作り、グラ

           スリッチェンetc。色々手を出しましたが、唯一残ったのが、ビーズのネックレ

           ス作り。テグスにビーズを通すだけですから。ネットオークションという便利

           なものがあって、ガラス玉なら驚くほど安く手に入ります。この一見真珠とも

           見紛うきれいなビーズも、2000円ほどで落札した大量のビーズ詰め合わせ

           に入っていたもの。

           

               雪の結晶のような可愛い玉ビーズや、

           

           上品なトランスパレント・グリーンの小丸ビーズなど、様々な形、大き

           さのビーズの詰め合わせで、かなり長く楽しめそうです。後必要なの

           は組み合わせのセンスだけ。みんなにあげると結構喜ばれるし。
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山茶花

2014-01-10 10:58:34 | 季節の花々
             

             花の少ないこの季節にサザンカの赤や白はことさら目に美しく映ります。

             かなり前、徹子の部屋にフランスの大女優カトリーヌ・ドゥヌーブが出演し

             「庭にサザンカを植えましたの」なんて言っていました。サザンカ-山茶花

             が日本語だとはご存じないようでしたが。ツバキ科の花ですが、一般の

             椿より柔らかく、親しみやすい感じがします。椿のように花ごと落ちない

             で、花びらが一枚一枚散るところも違いますね。「サザンカ、サザンカ咲い

             た道、焚き火だ焚き火だ落ち葉焚き、、、」だれでも知っている童謡です。

             「サザンカの宿」なんていう歌もあります。

                  

             去年娘からもらった白いシクラメンも健在です。夫が切ってきた太い

             竹の筒にさしてあります。「真綿色したシクラメンほどすがしいものは

             ない、、、」この花にも小椋佳の名曲がありますね。ピンクのシクラメ

             ンに「シューベルト」という品種があります。何故シクラメンの名前に

             シューベルトかと思いますが、「シュトラウス」というのもあるんです。

             きっと名前をつけた人が、クラシックファンだったのかもしれません。

             

             これは八重咲きのプリムラ・ポリアンサ。さすがにプリムラ・ポリアンサの歌

             なんていうのは知りませんが、プリムラってサクラ草のこと。「春まだ冷たい

             風のなかで、小さく揺れるさくら草、君への可憐な応援花、、、」っていうス

             テキな歌があります。その名も「さくら草」。卒業式なんかに歌われるよう

             です。桜に似ているからさくら草。可憐な花です。

                  少女等やいつもささやき櫻草         中村汀女
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あらたしき年

2014-01-07 09:59:40 | 季節
           

             新しき年の初めの初春の今日降る雪のいや重げ吉事     大伴家持

           万葉集編者大伴家持の天宝宝字3年(759年)の歌です。万葉集の最後の歌だとか。

           1255年も前の歌ですが、今もなお新しい年の初めに相応しい、めでたくも格調高い

           名調子ですね。その時代には、富士のお山は煙を吐いていたのかもしれません。

           どの時代もそれぞれに問題を抱え、今年も一筋縄ではいかない気がしますが、

           この歌のように、世界中なるべく良いことが重なってほしいものです。

           

             

           今年も主人の実家で、いつもどおりのお煮しめとお節でお祝いしました。

           

               お雑煮はもちろん関西風の白味噌仕立てです。

           

           ただ、奈良県の中部だけの風習で、お雑煮にいれた丸餅をとりだして、甘い甘い

           きなこをまぶして食べるんです。結婚して30年以上になりますが、この食べ方だ

           けは、南部の出身の私には未だに馴染めません。
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年の瀬の大和の古刹

2014-01-06 14:11:04 | 旅行
            

            年末の帰省の機会に、昔住んだことのある奈良市の北西部、法蓮町、法華寺町

            の辺りを訪ねました。住んでいたのはもう数十年前のこと、道沿いには大きな建

            物が増え、交通量も多くなりっているようですが、寺々の静かなたたずまいは、当

            時のままでした。

            

            在原業平が開いたので「業平寺」とも呼ばれる不退寺。うっそうとした木立の中

            にあり、年の瀬の忙しさにか、訪れる人もほとんどなく、時を忘れたかのような、

            ひっそりとした趣でした。

                

            不退寺-不退転法輪寺-は、伊勢物語でお馴染みの、美男の代名詞のような

            在原業平が、祖父の平城天皇が譲位後隠棲した所に建てたお寺だそうです。

            

            当時は華やかな貴公子の建立に相応しい大寺だったようですが、幾星霜を経た

            今はこじんまりとした古刹で、車で行った私はお寺に通じる道のあまりの狭さ

            にたどり着くのを断念しかけたほどでした。

            

            門の前の小さな駐車場に車を停めさせてもらって(長時間停めないでと書かれて

            いたのに、数時間置いて戻ったら、イケメンの若いお坊さんに叱られたのですが)

            西の法華寺の方へブラブラと歩きました。一条通りを行くと、いかにも古い町らし

            い趣きのある家々が並んでいます。この家は尺八のお教室のようです。

                 

            道ばたに磐之媛命陵という石碑がありました。仁徳天皇の皇后さまの御陵

            です。この皇后さまは記紀には大層嫉妬深かったとあるけれど、これはどう

            もでっち上げではないかとも言われています。今では気性の荒い嫉妬深い

            女性として定着してしまっているのはいかんともしがたいですね。この辺りは

            佐紀古墳群と言われ、近くに前方後円墳のウワナベ古墳、コナベ古墳があり

            ます。コナベ古墳は奈良時代の女帝元正天皇の陵ではないか言われた時期

            もあるそうです。古代史好きにはたまらない地域です。

                 

            そこからほんの数百メートル行くと法華寺に到着です。光明皇后が父親の藤

            原不比等の屋敷跡に建立したという、言わずと知れた国分尼寺の総本山です。

            

            建立当時は威容を誇る壮大華麗な大寺だったようですが、平安以後衰退していた

            のを、豊臣秀頼、淀君が再建したのだそうです。なかなかの紆余曲折ですね。今は

            清らかに美しい魅力的なお寺です。

            

            訪れた日は人影もまばらで、敷き詰められた砂利のすがすがしかったこと。

            

            浴室(からふろ)は光明皇后が千人の病人の背中を流したという蒸し風呂です。

            法華寺のご本尊は光明皇后をかたどったという秘仏の観音像です。マリアさま

            やマザー・テレサにも比するお方だったのでしょう。

            

            法華寺には、尼寺であることもあり、奈良や京都の権威と威厳に満ちた壮大

            な大寺にはない、清らかさと親しみやすさがあります。心が弱った時、訪ねて

            みると、きっと心の安らかさを取り戻せるようなお寺です。
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