『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
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[映画『エスター』を観た]

2009-10-10 23:59:01 | 物語の感想
☆今週末は、多くの映画が公開されるが、この作品と『さまよう刃』は観るつもりなかった。

 どちらも、ジャンルは違えど、精神的にきつそうだったからだ。

 しかし、午後5時半に仕事を終えて、帰宅して風呂入った後でも、2本の映画が観れそうで、タイムスケジュールを見ると、先ずは、この『エスター』が丁度良かったのでチケットを買った。

 しかも、<ワーナーマイカル>はファンサービスデーで、1000円でした^^v

   ◇

 面白かった。

 問題となる少女・エスターを養子にする前の段階(主人公家族の問題点)が結構丹念に描かれていて、果たして、その家族の問題(主に母親ケイトの流産ノイローゼ)が、後の展開に十全に活きてくるかは別にして、なかなか格調高く感じた。

 私は、ちょっとだけ、キューブリックの清潔感のある映像を思い出した。

 ただ、誰の視点か定まらない構図が多く、初期のサム・ライミも思い出した。

 例えば、精神安定剤を飲むケイトを後ろから眺める構図などは、最初は主体がない。

 「最初」と言うからには、二度目もあるのだが、そこでは亭主が後ろからケイトの様子を窺っていて、観ているこちらをちゃんとドキリとさせてくれる。

   ◇

 で、このような「最初」「二度目」と言う律儀な伏線の張り方が、この物語では貫徹されている。

 「バラの由来」「難聴の娘」「氷の張った池」「身体測定や歯科検診を受けないエスタ」「喉と手首のリボン」・・・。

 全てが、ちゃんと後で活きてくる。

 クライマックスでの、ケイト対エスターの構図においても、二階の屋根に逃げたケイトを窓から窺うエスターがいて、でもエスターは気づかずに去るのだが、安心するケイトの画が段々と後ろに引かれると、窓辺にまだエスターがいたりするのだ^^;

 私は感心すると共に、そのあまりにものシナリオ上の無駄のなさが、文学的と言うよりも、本格ミステリ的にも思えた。

 つまり、格調高い作りが、俗なものの印象へと行ったり来たりするのだ。

 最後に明らかにされる「エスターの正体」に、私は感心したが、綾辻行人のホラーに似たものを感じた。

 ただ、例えば、温室のガラス張りの天井窓から、娘を狙うエスターの姿を見、ガラスをぶち破ってエスターに体当たりするケイトや、

 それとは反対に、氷の張る池に、氷(ガラス)をぶち破って落ちていく二人・・・、と言う、計算なのか偶然なのか分からない「対比」の構図を見せられると唸らせられる。

   ◇

 私が、この作品を見たくなかったのが、作品ポスターで見るエスターの顔が気持悪かったからだ。

 しかし、いざ見てみると、エスター役のイザベル・ファーマンは、素材としては、なかなか可愛い。

 目やソバカスなんて魅力的だ。

 そして、物語の構造を考えると、この子役、実に演技がうまい。

 上記の写真の表情を見て欲しい。

 ドシン! と存在感がもの凄い。

 ただ、私は、『ハロウィン』の時も思ったのだが、子供にこのような役を演じさせるのはどうなのだろうと思う。

 この子達の成長に与える影響と言うのは甚大だと思うのだが・・・。

   ◇

 それは、エスターが、ケイトの亭主を誘惑するシーンなどにも言える。

 この子役が、自分の与えられたシナリオの意味を理解しなくては、演じられないだろうからだ。

 つまり、「ファック」や「私に全部任せて」なんてセリフの意味を、エスター役の子は、年齢不相応に演出家に教わるわけだ^^;

 ただ、このシーン、私的には、少しグッとくる点もあった。

 エスターは、確かに気持悪い女の子なのだが、物語的に、もう少し彼女を可愛く描いてくれたら、「サイコ美少女」物として、マスターピースになり得た作品だったのにと惜しい気持が起こってくる。

 ・・・そう、その、エスターの狂気性が「サイコ」であったことも、私は不満だ。

 丁寧な作りの作品なので、エスターの狂気は、もっと具体的な統一性があるのだと思ったからだ。

 でも、『ミラーズ』よりも二段階ぐらいレベルの高い作品だと思う。

 私は、エスターに「裏アメリ」の称号を与えたい^^;

                                     (2009/10/10)