『甘噛み^^ 天才バカ板!』 byミッドナイト・蘭

ジュリアナから墓場まで・・・。森羅万象を語るブログです。
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[映画『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』を観た]

2009-10-23 23:09:30 | 物語の感想
☆<ワーナーマイカル・日の出>で、『スラムドッグ・ミリオネア』と『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』が1000円でリバイバル上映されている。

 私は、後者は未見だったので、いそいそと行く。

 昨夜の最後の回で、客は、私と、どこぞのお姉さん二人だけだった^^;

   ◇

 未見だったのには理由があり、他のブロガーの評判がすこぶる悪かったからだ。

 でも、私には非常に面白かった。

 このような観念的と言うか、イマージュ重視の作品ばかりだけの映画界ならば厭だが、30作品に1作ぐらいならばいいものだ。

 物語はシンプルで、アジアに消えたシタオ(木村拓哉)と言う青年の捜索を依頼された、LAの警官崩れの探偵クライン(ジョシュ・ハートネット)が、行き着いた香港で、シタオが共に行動することになった女・リリ、その恋人・中国人ヤクザ・ドンポ(イ・ビョンホン)との愛憎状況を絡めて描いている。

 「人捜し」の点では同じだが、『96時間』と対極の作風である。

   ◇

 雰囲気が実に面白い。

 本来、話をグイグイ牽引していくような要素を排して、あたかも編集時にカットするかのような「二の線」のシーンばかりを集めて、物語を展開させているのだ。

 これが、キューブリックが言うところの「マジック」効果を生んで、他愛のない物語に深みを加えてくれていた。

 そして、その雰囲気の中で、これでもかと、主演の3人の男優の男臭さを描いてくれる。

 とは言え、不必要な猟奇風味や、汚い映像、ショッキング展開もあるのだが、イケメンっちゅうのは、何やってもカッコいいようで、清潔感がある。

 クラインなんて、かつての警官失格の理由としての、猟奇殺人鬼を捕まえるための「猟奇殺人鬼との同調」なんて危ういことをしておきながらも格好良い。

 そのクラインが、今回は、超自己に埋没した情念の捜査をする。

   ◇

 シタオの彷徨へのキリスト暗喩も不必要だと思った。

 木村拓哉の演技はとても見事で、シナリオ上の暗喩なくとも、シタオの自他問わない救済希求の旅には、何らかの聖人の生き様が滲み出てくると思うのだ。

   ◇

 作中、3人の男の裸体が惜しげもなく披瀝されるが、3人とも、無駄な肉がついてなくて、「ザ・男」って感じでよかったっス^^;

 イ・ビョンホンは、どうにも、私は顔が嫌いなのだが、その肉体は、研ぎ澄まされた強さが感じられた。

 私は、イ・ビョンホン演じるヤクザのリーダー・ドンポの部下たちに非常に魅力を感じた。

 仕事に失敗して殺されるのに戻った男の表情など、なかなか記憶に残る。

 ボスの横にいつも待機している丸顔のひげの奴も良い。

   ◇

 クラインの旧友の香港警察の男も格好良くて、クラインと水を掛け合ってじゃれあったり、下らない話をしている空間描写が秀逸だと思った。

 男が少年のあどけなさを垣間見せるのだ。

 そんな横道のシーンを楽しく見せてくれたこの作品の監督は非凡だと思うのだ。

                                     (2009/10/23)