minga日記

minga、東京ミュージックシーンで活動する女サックス吹きの日記

琴線に触れる映画

2008年02月18日 | 映画、本、芝居関係
「ジプシーキャラバン」を遂に観てきた。冒頭のエスマの歌声を聴いた瞬間、涙が溢れて・・・。別に悲しいストーリーでもなんでもないのに、何故彼女の歌声がこんなにも突き刺さってくるんだろう・・・?

彼女の歌は、そして次々に登場する「ジプシーキャラバン」の音楽家達の音楽は、彼らの魂の叫びとなって、言葉の壁をも通り越して伝わってくる。彼らの一人一人の人生が演奏中に描かれて行くのだが、生きる喜び、悲しみ、全てが音楽を通じて発散されているのがよくわかる。インドがルーツだったロマ。迫害を受けた歴史など全く知らない私にも、ストレートに伝わるものがあるのだ。音楽って本当に凄い・・・。

この映画の中に出て来る「タラフ・ハイドゥークス」は何年か前に渋谷のライブに行った事があり、その中の笛吹きおじいさんと休憩時間にロビーでばったり会い、私も偶然リコーダーを持っていたので意気投合。ロビーに座って2人でセッションした事があった。

最後に「これ、内緒なんだけど、俺たちのテープなんだ。2000円で買わない?」とポケットからこそっと取り出したテープ。今時・・こんなボロいテープが2000円、さすが、ジプシーだなあ、などと思いながらも2000円を渡した事を思い出す。そのすぐ後でレッスンに来た生徒にその話をしたら「そのテープを僕に売って下さい。」と懇願されたため、今は手元にないけど。

「ジプシー」は差別用語の意味があるようだ。さすが、ジプシー!なんて思ってごめんなさい。音楽に貴賤はありません。お金をどんな手段でも稼ぐという彼らの態度を軽蔑する人たちは大勢いる。でも、本当に彼らは苦しい生活の中で家族を養い、村の人たちを救う手段として音楽家になり、旅をしている。ロマではない(ガッジョという)旦那様との間に子供ができなかったジプシークイーン・エスマは38人の子供を養子にして育てあげ、その何人かが音楽家になり、一緒のステージにあがっている。

ロマの歴史と音楽を堪能でき、久々に琴線に触れる素晴らしいロードムービーだった。音楽を生業とする私は深く深~~く考えさせられたのであります。