みゆみゆの徒然日記

日本の伝統芸能から映画や本などの感想、
心に留まった風景など
私の好きなことを綴っているブログです♪

『能楽師 関根祥六・祥人・祥丸 芸三代 心を種として』

2009年07月21日 | 本・マンガ
 18日に花祥会を見に行ったときに、観世能楽堂内の檜書店で入手しました。関根祥六、祥人、祥丸の3人の足跡を追った写真集はまさに関根家ファン必携の一冊!!舞台写真はもちろん、稽古や日常の風景、そして3人それぞれの能に対する思いも綴られています。

 私自身は、この方たちに師事しているわけではないですが、「先生」と思わず呼びたくなってしまうくらい私の心に留めておきたいお言葉(格言?)の数々がこの本に詰まっています。私の師匠も常々おっしゃっていますけれど、最終的には心(内面)が芸に出てくると・・・・。まさにそのとおりだなと思いますが、これを読んでさらに強く思いました。お能は舞台もシンプルですから余計にそう思うのですが・・・関根さんたちのお能は、その最小限のお能の表現でその曲の持つ情景や登場人物の“心”をイメージでき感じ取ることができる・・・そこに私は惹かれているのです。もちろん声の良さや謡、舞などのテクニック的なところにも惚れておりますが(笑)
 
 それにしても、おチビなころの祥丸君はほんとに超かわいい・・・。さすがに初面が済んだ今はかわいいというのは失礼なので、もうかわいいとは言いませんが(笑)その年齢でもうそんなことを考えているのね・・・。祥丸君と同年代の中高生達にこの文を読ませたいです(笑)

 祥六師と祥丸君の稽古風景が表紙の写真ですが、この裏表紙は稽古前か後で祥丸君がおじぎをしてご挨拶している写真なのです。この光景は素人のお稽古でも同じ・・・師匠の真正面に正座をし、時には怒られ、時には褒めて頂き・・・緊張感溢れる時間と距離・・・。私は直接教わっているのは自分の先生からですが、先生は大きい先生に、さらにその先生もその上の先生に・・・私が教わっていることは、その上の先生たちに教わっていることと同じ・・・。もちろん玄人と私なんかのような超末端素人とは稽古の意味合いが違いますが、こうして脈々と続いてきたのだなぁ・・と感じました。

 稽古に対する心構え・・・稽古は摩擦。覚えるまでが稽古なんじゃない、覚えてからが稽古なんだ。という言葉には、はっとさせられました・・・心を入れ替えます。でも新しい曲を覚えるのって大変なんだよね~・・・(言い訳はダメだよ、自分!!)あと、正座はだいぶ慣れましたが、それでも長時間は痛いです。祥人さんは小学校1~2年の作文で舞台で座っている時の脚の痛さを「自分も痛いならきっと板も痛いだろう。ならば板と勝負だ。」と書いていたそうな・・・。恐るべし祥人少年(笑)よし、自分もこれから板と鼓と勝負だ!!(笑)それだけでなく、日々の稽古、そして稽古以外のことにも参考になるようなことがたくさんありました。もちろん謡や鼓の手を覚えることも大事ですが、自然や何気ない日常の風景を見て綺麗だなと思う感性も磨いて、それをきちんと活かせていけたらいいなぁ・・・と思っています。他にもいろいろやらねばならないことはたくさんありますけど。

 なんか本の感想というよりも自分の稽古に対する心改めを綴ってしまいましたね(笑)まあそれだけ自分の心にがつんときた言葉があったのですよね。そして、これからもこのご一家のお能をできる限り見続けていこうと改めて思いました。

松竹大歌舞伎東コース 沼津公演

2009年07月21日 | 歌舞伎
 さて年に一度の地元での歌舞伎公演の季節がやってきました。今年は仁左衛門さん率いる松嶋屋一門が東コースを担当。わが町にも松嶋屋さんがいらっしゃいます~!ということで20日はお稽古を早めに切り上げて急いで会場に向かいました。昼夜2回公演で、私が見たのは夜公演ですが・・なんと申しましょうか・・・役者さんたちの熱演が申し訳ないくらいの客入りの悪さ・・・・しかも今までこんなの見たことないよってくらいの寂しさ・・・。今日は祝日なのに、大ホール半分くらいしか人がいない・・・・何年か前の海老蔵襲名のときは平日にもかかわらず当日券もない満員御礼だったのにね・・・・松嶋屋贔屓として申し訳ないです・・・。ここのホールっていつも思うんだけど・・・隣の市に比べると・・こういう事業がものすごく下手というか・・・(こういうことだけじゃないけど・爆)もうちょっと何とかならないのかしら?学生さんたちを招待するとかさ~・・・。


一、『正札附根元草摺』
 えーと・・・これ先月の歌舞伎座でも見た舞踊だな~・・・ということはおいておいて(笑)、今回は愛之助さんの五郎と孝太郎さんの舞鶴。愛之助さんの隈取姿ってあまり見たことがないかも・・・。でもこういう愛之助さんもかっこいい!!まあ、荒事らしいかと言われるとどうだろう・・・とは思いますが・・・いいんです。眼福眼福(笑)


二、『義経千本桜』  下市村茶店の場 、同 釣瓶鮨屋の場
 何年か前に歌舞伎座で見た仁左衛門さんのいがみの権太。この巡業で久々に仁左衛門さんの権太を拝見しました。『義経千本桜』はとても長く、これもほんの一場面にしか過ぎませんが・・・これは愛嬌ある小悪党の権太が主人公の場面です。ちなみに関西では「やんちゃ」な子供のことを「あんた、ごんたいね~」と言うそうな。私には馴染みのない言葉なのですが、だからこそ、そういうことも頭に入れて見るといいかもしれませんね。
あらすじは、こちらをご覧ください。

 さて、巡業とはいえ、小金吾討死の場面の入っていたことは、後の「すし屋」の場面にも繋がり、地方でもじっくりと仁左衛門さんの作り出す「すし屋」の世界にどっぷり浸かることができました。その小金吾は権太に強請られたり、追っ手に縄をかけられ切られたり・・・平維盛の妻の若葉の内侍と子の六代を護衛する家臣の割には・・・若干の頼りなさ?もあるものの、白塗りで前髪の儚げな青年というのがこれまた愛之助さんにぴったり!立ち回りも綺麗でしたしね。そして、彼が討ち死にして、たまたま通りかかった鮨屋弥左衛門によって首を取られてしまう・・・。これがあると「すし屋」だけの単独上演よりはこちらがあった方がより理解できますね。もちろん、それだけでなく、だいぶしょうもない男の権太だけど家族思いである一面も垣間見ることができるし、あの笛の伏線もありますからね。

 そして「すし屋」の場。この鮨屋の奉公人に身をやつしている維盛と、そういう身分の高い人物とは知らずに維盛に恋してしまう権太の妹、お里。孝太郎さんってこういう役が本当ぴったりだな~と思います。かわいいわ~。「兄さん、びびびびび~」とか(笑)そして、維盛の正体や妻子がいることを知った時の悲しみ・・・このお話自体悲劇ですが、お里ってこのお話では本当に悲しい役ですね。だからこそ、前半の明るさが健気といいますか・・・。
 さて仁左衛門さんの権太は絶品ですね。同じ“ワル”でも先月の『女殺油地獄』とはまた違います。どこかやんちゃで、ダメなやつだな~と思っても憎めない・・・そんな感じ。そんな小悪党がたまには良いことを・・・と思ってしたことが後々の悲劇に繋がってしまいます。やっぱりこれは前の場面があるからこそ生きるんですね。自分の妻と子を、若葉の内侍たちの身代わりに・・・・。維盛を引き渡すようにとやってきた梶原たちに身代わりを差し出す権太。その人たちが本当は誰なのか・・・これを知ってしまっていると・・・この場面での権太の行動は見ていて本当に辛くなってしまいます・・・。そして、梶原に差し出した首が本物の維盛で、若葉の内侍も本人だと思っていた父に刺されてしまう権太。歌舞伎では、もうちょっと話を聞けばとか確認すれば・・・と思うようなことはたくさんありますが(ええ、歌舞伎は理性で見てばかりはいけません・・・。)すでに起きた悲劇の後の悲劇。こういうお話は正直好きな部類ではないですけれども、そういうことを忘れさせてくれる仁左衛門さんの権太の最期でした。
 
 その他で印象的だったのが、やはり愛之助さんの梶原景時。声が今までに聞いたことがないくらいの迫力ある声で・・・こんな一面もあるんだ~・・と感激してしまいました。前の場面が小金吾だったので余計にそう感じたかもしれません。計3役、それもそれぞれ役柄の違うお役、どれも素敵でしたので、愛之助奮闘公演といってもいい舞台です。以前より若手の中でも注目していた役者さんでしたが、こんなに良かったっけ?と思ってしまいました。もちろん座頭の仁左衛門さんをはじめ、みなさんの熱演を感じることができた舞台で、かなり満足でした。それがゆえにこの客入りの悪さは申し訳ないです・・・。皆さん、これからも続く旅公演は大変でしょうけど、お体に気をつけていただきたいです。