肝臓病と共に生きる人たちを応援します

肝臓友の会との関わりで成長した肝臓専門医のブログです。2017.2.12より新規開始しました。

09ペグインターフェロンとリバビリン

2007年11月23日 | インターフェロン療法について

現在国内では、ペグインターフェロンとリバビリンの組み合わせが二つあります。
一つは、最初に保険適応になったペグイントロンとレベトール。もうひとつは、ペガシスとコペガスです。

どちらも、C型肝炎ウイルスに対して、聞きにくいとされる。セロタイプ1,高ウイルス量のウイルスに50%以上の効果があるということで、非常に効果的です。インターフェロンの単独療法では、10%も効果がなかったというのも、インターフェロンが保険適応になった当初、効きやすいウイスルも込みでだした30%という成績でも、さらに効かないウイルスがいたという。なんだか、ややこしい話で済みません。従来の方法の5倍の効果なんてものではないということ。

しかし、裏を返せばまだ効きにくいとされるタイプの場合は40%くらいの人たちは、ウイルスが残るということ。この併用療法が繰り返せることで、効果が出る可能性はあるはずで、まだデータが出ていないため、保険としては積極的に認めるという形になっていないという現実も、悩ましいところです。

とにかく、副作用が耐えられる状態の患者さんであれば、少しでもウイルスが減って炎症がとれることが、肝癌から遠ざかる方法になる可能性はあるわけで、なんとしても、可能な限り、検討していきたい治療です。

副作用として、催奇形性があるため、避妊が必要であることがあります。また、貧血が進む場合も注意が必要です。

08ペグインターフェロン イラスト

2007年11月23日 | インターフェロン療法について

このスライドは、中外製薬さんのペグインターフェロンである、ペガシスのものです。シェリングさんのペグインターフェロンも構造的には似たようなもの(分子量とかが違いますが)で、インターフェロン本体(スライドでは白いひょうたんのような形のもの)のおしりにテープ状のものがついてインターフェロンがつつまれているようなイメージ。これが、インターフェロンを分解されないように守ったり、異物として認識されて抗体ができるのを予防する働きがあるといわれています。

この構造によって、長期間体内で効果を持続させることが可能になったと言うことなのです。いろいろと長時間作用させるインターフェロンの研究がされてきたなかでこの構造のインターフェロンが開発されたというものです。なかなか、安定して効果が出せる構造を作るのは大変だったようです。今後またいいものが出来てくればいいと思います。

ペグインターフェロンは、構造的には似たものとして分類されていますが、それぞれ、特徴があり、使い方についても工夫が色々されています。これからも、患者さんにやさしい効果のある薬がでてくれることを祈っています。

07ペグインターフェロン

2007年11月21日 | インターフェロン療法について

インターフェロン療法の進歩の一つに、効果が持続するインターフェロンの出現があります。これは、ペグインターフェロンというもので、従来のインターフェロンが効果を持続するには、連日や週三回の注射が必須でしてが、これが、週一回でよくなったのです。投与回数が減るだけではなく、ペグインターフェロンの種類によっては1カ月近く効果が持続する可能性もあり、今までのインターフェロン療法とは違った使い方が出来るようになりました。
効果も副作用も改善されて、いいことづくめのようですが、単独療法の限界は、このインターフェロンにもあり併用療法がやはり現在は効果としては優先されます。しかし、単独療法が望ましい方もいるわけでその場合は非常に効果的です。

現在、単独療法が出来るペグインターフェロンはペガシスしかありませんが、ペグイントロンが単独使用できる時代も来ることが期待されています。

05C型肝炎ウイルスの種類と頻度

2007年11月17日 | インターフェロン療法について

スライドは、日本におけるC型肝炎ウイルスの種類と割合、インターフェロンの効きやすさを表にしたものです。日本以外の国では比率が変わってきます。日本での特徴は、セロタイプ1、その中でもゲノタイプ1bというのがとても多いと言うことです。これは、インターフェロンが効きにくいといわれるタイプで、インターフェロンの単独療法の半年投与では、10%を切っていたものです。現在は、リバビリン併用ペグインターフェロン療法で50%以上の効果が期待されるまでになっています。なんとか100%に近い効果が出る方法が早く開発されて欲しいところです。
ウイルスの型の測定方法は、セロタイプというウイルスの作るタンパク質の種類で判定する保険診療が使える測定方法と、保険がきかないゲノタイプという遺伝子の型を見る方法があります。ゲノタイプのほうがより細かい効果予測が出来るので、より効果があるかどうかがわかるという意味では、早く普通にはかれるようになって欲しいところです。
ゲノタイプでは、2aでウイルス量が少ない場合が9割前後効果があり、この方が出た患者さんはまずウイルスは、消えると言える時代です。

04悪者にされたインターフェロン?

2007年11月16日 | インターフェロン療法について

インターフェロン療法は、C型肝炎ウイルスに対して保険適応になったとき、たくさんの人に使われることになり、副作用が注目されました。うつ病による自殺、間質性肺炎が致命傷になったり、眼底出血が出現したり、副作用を並べると、こんなのが薬なのって思うようなものがたくさん出現したのです。マスコミも危険な薬として、非常に注目しインターフェロンの害の記事を読んだだけで患者さんは、この治療はしたくないと決意した方も少なくなかったのです。
現在は、副作用がほぼわかり、その副作用に対しての対策が早めに行えるようになり、なんとか治療を継続することは可能な時代になってきています。そうは言っても、会わない人がいますので必ず主治医とよく相談しつつ、専門医との連携をとりながら、最大限の効果が得られるように、がんばっていきたいところです。
最近は、少量長期投与というやりかあもあり、限界にチャレンジということではなく、出来る範囲でいつでもやめられる方法を検討する場合もあります。

そして、以外と忘れられているのが、インターフェロンが体で普通に作られている物質であるということ。風邪やインフルエンザなど、ウイルス性の感染症にかかったときは、体がウイルスを排除するために作っている物質なんです。抗ガン剤として開発されたというのを知っているかたの方が多いのですが、本来、体がウイルスを排除するために作っている物質で、それが足りないから補うという発想の治療なんです。なぜ足りないか、これが難しい話で、C型もB型も体にインターフェロンを作らせないように大人しく住み着く仕組みを持っているんです。ですから、強制的にインターフェロンを投与して体のウイルス排除の仕組みを最大限に引き出してもらうと言うことなんです。

03インターフェロン療法の変遷 C型肝炎について

2007年11月16日 | インターフェロン療法について

C型肝炎ウイルスに対してのインターフェロン療法は、私が医学部の学生だった頃治験がされていたのでしょうね。卒業してすぐ、保険適応になり、抗ガン剤として認識されていたインターフェロンが肝炎の治療に使われると、びっくりしたものでした。インターフェロン自体は、体で作られる物質の一つであり、インフルエンザなどのウイルスにかかったとき体がたくさん作り発熱などを起こしてウイルスを排除するものなんですよね。それが、C型肝炎ウイルスはうまい具合に体にインターフェロンを作らせずに住み着くことができる。だから、体の外からインターフェロンを投与して、C型肝炎ウイルスを排除するって考え方でできた治療法なんです。

1992年2月 インターフェロン療法の6ヶ月投与が始まりました、これは筋肉注射です。静脈注射のタイプは6週から8週という投与期間でした。全国的には一生のうちで1度だけのものというしばりで行われていたため、複数回の治療は原則認められないというものでした。自治体によっては、複数回の治療ができたこともあり、可能な限りウイルスを排除することが努力されました。
静脈注射タイプの場合は、一日2回に分けた方が効果があるなど、今から思えば苦しい戦いでしたが、みんながどうやるといいかと頑張っていました。
このころは、まだウイルスのタイプなどが分かっていなかったので、IFNが効きやすい人たちを集めた場合と、効きにくい人を集めた場合で効果が全然違ったものでした。その後ウイルスの型や量によって効果が違うことが分かるようになりました。

2001年12月には、やっと、リバビリンの併用療法(イントロンとレベトール)が保険適応となり、それまで、高ウイルス量の場合には1割に満たなかった効果が、3割弱になりました。しかし、その分副作用は強くなっていたと言えます。

2002年2月 インターフェロンの単独療法の6ヶ月縛りがなくなりました。これにより、長期間インターフェロン療法を行うことが可能となりました。ネオファーゲンのように、炎症を抑えることを目的にしたり、発癌を抑制することを目的としてインターフェロンを投与する可能性がでてきたことは、画期的なことでした。

2003年12月 週一回投与のペガシスが承認、48週投与が基本となりました。この間週3回投与だったインターフェロンが週一回で済むようになったと喜ばれました。しかし、血小板減少が予想以上にでることがあり、採血によるチェックが義務づけられました。これが、足かせになっている場合もありますが、副作用も週3回のときよりは少ない感じで、少量長期投与向きと言えるインターフェロンの出現でした。

2004年12月 レベトールのあいかたのイントロンのペグ化をしたペグイントロンが承認。半年投与だった併用療法が48週投与が基本となり、ウイルス除去率もはじめて治療を受けるセロタイプ1の人では、5割前後となりました。

2005年4月 インターフェロンの自己注射が承認されました。これにより、通院困難な方へのインターフェロン療法のチャンスが増えました。しかし、自己注射はなれるまでは、患者さんにとっては辛いものです。

2006年4月 ウイルスが消える可能性の高い一部の肝硬変の人に、フェロンというインターフェロンが適応になりました。

このように時代と共に進歩してきています。肝硬変へのインターフェロンの併用療法も治験が進んでいます。肝癌を作らないでいけるようみんなが頑張っているのが、わかります。しかし、世界はもっと先に行っている、日本は負けられないんですよね、ほんとは。

02インターフェロンの目的

2007年11月15日 | インターフェロン療法について

インターフェロンの目的は、一番はウイルスを体から排除したいということです。
このことによって、肝炎を落ち着かせ、肝癌の発生が予防できるということが期待されます。しかし、すべての人に効果があるということではないのが辛いところです。
また、今のC型肝炎の治療においてより確実な効果があるといわれているのもの唯一です。健康食品などさまざまなものが肝機能が良くなったと宣伝していることがありますが、一時的に良くなったものをさしている場合があり、長期の経過で進行していないと保証するものではありません。肝機能は、変動するもので、たまたま落ち着いているかどうかを見極めるのはデータを集めないと言えないことで、体験談で述べているものは注意が必要です。

01 インターフェロンをするかしないか

2007年11月15日 | インターフェロン療法について

以前も書いたことがありますが、記事を整理してみようかなともう一度書いたら違う内容になっていますね。(笑い)
インターフェロン療法をする上で、考慮することはたくさんあります。
肝臓がどのような状態であるか、肝硬変に近いのか肝癌が出来る可能性がたかい状態になっているか、これは、肝生検などをして急ぐかどうかを決めていく必要があります。初期の段階で炎症が強い状態であったり、肝臓の線維化が進行して異型細胞がでやすい状態であったり、この点がある場合は急いだ方がいいと言うことになります。
また、仕事や家庭環境によっても、すぐ出来ない場合があります。どうしても、体調が悪い状態になれない時期、新しい仕事を始めたときとか、自分が抜けられない仕事であったり、子供が受験、親が病気だったりなど、いろんな条件があります。自分一人だけの体ではないことは、病気と生きていくためには考慮すべき重要な点です。自分が生きていること、重要な存在であることは、治癒力をあげるためにも大切なことです。
また、年令的なことも考慮する場合があります。若いうちは肝炎の進行が軽く効果があることから、勧められますし。80歳以上の方で落ち着いている方であれば、肝硬変や肝癌の可能性がほとんどないため、無理する必要がないとも言われています。
また、合併症を持っている人、眼底出血や脳出血など、インターフェロンで起こりうる合併症を治療前から持っている人や、治療後の副作用で起こる場合があり、この点を覚悟しつつ、最大限の効果を期待して行っていく必要があります。ほとんどの副作用は、大事にいたることなく治療を終了できる時代にはなっていますので、必要以上に心配することは避けていく必要があります。
あと、経済的な問題、費用がかかることは無視できない問題です。北海道では助成があるとはいえそれでも、まだまだ仕事が出来ない状況となる場合がある治療であり、収入のない方もいることから、制度の確立も患者さんや国民の健康を取り戻すためにも必要です。
このようにいろんなことを検討して、インターフェロン療法をした方がいいかどうかを判断していきます。
治療法として、インターフェロン療法は一番有効ですが、人によっては副作用などにより他の治療が望ましい場合があることはどんな治療でも言えることですので、この治療しかないと思い込まないようにも注意してください。

32 インターフェロンについて

2007年09月26日 | インターフェロン療法について

インターフェロンがC型肝炎ウイルスによる慢性肝炎に保険適応になって、副作用がとても強いと言うことがマスコミで取り上げられました。抗ガン剤として当時は知られていたのでなおさら強調されたと言えると思います。
間質性肺炎、うつ病などによる死亡が報告され、こんなに辛い治療を患者さんにさせるのは問題があるというような記事が多かったのを覚えています。当時研修医になったばかりの私でしたから、これは、大変な薬だなと思ったものでした。医師である私がちょっと聞いてこう思うくらいなので、患者さんにとってはとても不安になる薬であったことは間違いありませんし、いまだに副作用が心配で、考えるのも憂うつとインターフェロンはしないと心に決めている方に会うことがあります。
現在は、副作用に対する対策がかなり進んでいるので、命に関わることは滅多になくなりましたが、医師にきちんと診てもらう必要はあります。

また、インターフェロンは、もともと、自分たちの体で作られているものであることを知らないかたもたくさんいます。インフルエンザなどのウイルス感染のときに、熱が出たり節々が痛くなるのは、自分の体で作ったインターフェロンのせいなのです。

慢性化する肝炎ウイルスは、体が本来ウイルス排除のために作るインターフェロンを作ることをさせない働きを持っていることがわかっていて、これを、逆に作らないなら外から補給しましょうという考え方が、肝炎のインターフェロン療法なのです。ですから、インターフェロン療法中は、ひどい風邪に長い間かかっているときにでる副作用が出ると考えるとわかりやすいと思いますし、そのために出る熱などの反応に対して熱冷ましなどでしのぐことで継続が可能になると言うことなのです。

最初の頃は、IFNが効かないタイプのウイルスには1割弱も効かなかったインターフェロン療法でしたが、現在は6割前後の方にウイルス排除の恩恵をもたらすことが出来るまでになってきました。さらにより安全で効果的な治療法として進歩してくれると思いますし、抗炎症(GPTを下げる働き)、発癌抑制という効き目も普通に言われるようになってきていますので、副作用が心配な方には少量で長期という使用方法も可能になってきています。

C型肝炎による慢性肝炎の方で1度もインターフェロンをしたことがない方は、ちょっとでも試してみるといい結果につながる方が多いと思います。もちろん、そういうときは、途中でやめてもいいのです、辛かったら無理しないを心がけることも大切です。

31 インターフェロンの目的

2007年09月05日 | インターフェロン療法について

インターフェロンの目的は、一番はウイルスを体から排除したいということです。
このことによって、肝炎を落ち着かせ、肝癌の発生が予防できるということが期待されます。しかし、すべての人に効果があるということではないのが辛いところです。
また、今のC型肝炎の治療においてより確実な効果があるといわれているのもの唯一です。健康食品などさまざまなものが肝機能が良くなったと宣伝していることがありますが、一時的に良くなったものをさしている場合があり、長期の経過で進行していないと保証するものではありません。肝機能は、変動するもので、たまたま落ち着いているかどうかを見極めるのはデータを集めないと言えないことで、体験談で述べているものは注意が必要です。