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宇宙ゴミの除去へ向けて! “こうのとり”が実験を実施

2017年02月03日 | 宇宙 space
国際宇宙ステーションから分離した補給機“こうのとり”6号機が、
大気圏に突入して燃え尽きるまで、宇宙ゴミの除去技術の実験を行います。

宇宙ゴミ除去システム構築の最初のステップとして、
まず、導電性を持つ“テザー”の実証実験を実施。

ただ、“テザー”の進展が認められず… 
実験は中止され、状況の確認や対策が検討されているようです。


地球の周りを漂うゴミ

地球の軌道上には大量の宇宙ゴミがあります。

これらは、国際宇宙ステーションや人工衛星に衝突して被害を及ぼす恐れがあり、
宇宙ゴミ対策が世界的な課題になっています。

現在地球の周りには、位置が正確に分かっているものだけでも、
1万6000個近くの物体が軌道上を周回。

さらに、レーダーなどでとらえられない数センチから数ミリのものは、
数十万個から数千万個以上あるとも言われているんですねー

こうした物体の大半は、
使われなくなった衛星や打ち上げに使われたロケット、
それらが壊れて発生した破片などで、
宇宙のゴミ“スペースデブリ”と呼ばれています。
  打ち上げ後のロケット機体を安全に処分“制御落下”

これらデブリと衛星との衝突を防ぐため、
世界中の機関が協力して、24時間体制で軌道上の物体を観測しています。

また、軌道上にあるデブリ同士が衝突することによって、
デブリの数がどんどん増加することも…

なので、一刻も早くデブリを積極的に減らしていく必要があり、
デブリ除去の研究も進められています。
地球の周囲にある、位置が分かっている物体を表示したもの。
緑色は使用済みを含む衛星、黄色はロケットの上段、赤色はそれ以外の破片など。


宇宙ゴミの高度を制御

そこでJAXAが考えているのは、
約700メートルの金属製ワイヤーに電流を流して、
地球の磁場の影響で進行方向と逆向きの力を発生させ、
この力により宇宙ゴミの高度を下げる方法です。

宇宙ゴミの高度を自在に下げることができれば、
大気圏に突入させることができ、あとは燃え尽きてなくなります。

今回の実験が成功すれば、宇宙ゴミにワイヤーを付ける小型実験衛星を開発して、
2025年ごろの実用化を目指すそうです。


HTV搭載導電性テザー実証実験

1月28日に補給機“こうのとり”6号機を利用した実証実験が実施されました。

“こうのとり”6号機は国際宇宙ステーションへの物資補給のため、
昨年12月に打ち上げられた無人補給機で、1月28日にステーションから分離しています。

分離後の“こうのとり”はステーションより低い軌道に移動し、
大気圏再突入までの約1週間を使って、
“HTV搭載導電性テザー実証実験(KITE)”を実施することになります。
KIIE実験中の“こうのとり”とKIIE実験装置のイメージ図。

この実証実験で予定されているのは、
“こうのとり”から約20キロの金属製ワイヤーを収納した“エンドマスト”を放出し、
エンドマストに搭載されたリールから700メートル級テザー(ワイヤー)を伸ばし、
電流を流す実験です。

ただ、今のところ、
テザー先端部となる約20キロのエンドマスの放出や、
700メートル級のテザーの伸展が確認されず、実験は中断することに…

状況確認や対策検討が進められていて、
“こうのとり”が大気圏に突入する直前の2月4日までは、
引き続き再試行等を行うことになります。

  2月6日にJAXAから、
  “こうのとり”によって行われた宇宙ゴミの除去実証実験の
  結果報告がありました。

  導電性テザーの放出機構の不具合により、
  ワイヤーの展開が行えず実験は失敗。

  でも、電流を流すことは出来たので、
  電界放出型電子源からの電子の放出機能と、
  電圧を自律的に制御する実験には成功したそうです。

  なお、“こうのとり”は日本時間の2月5日23時42分に、
  軌道離脱マヌーバを実施し大気圏に再突入しています。


なお、実証実験後にはテザーは切断され、
“こうのとり”は大気圏に再突入して燃え尽きることになります。

“こうのとり”自体は計画通りに飛行中で、
2月6日に予定されている大気圏再突入に対して、今回の実験の影響は無いそうです。


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