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モバライダー mobarider

重力レンズを調べて分かったこと。宇宙の膨張は予想よりも速い?

2017年02月04日 | 宇宙 space
重力レンズ効果を利用して、
宇宙の膨張率を表す“ハッブル定数”の値が調べられました。

この結果は近傍宇宙では従来の値との一致がみられたのですが、
衛星“プランク”による初期宇宙観測に基づく値とは一致しないことが確かめられることに…

さて、この不一致はなぜ起こったのでしょうか?


重力レンズ

ある天体の重力がレンズのような役割を果たして、
より遠方の天体からの光を曲げたり、増幅したりする現象を“重力レンズ”効果といいます。

たとえば、遠方のクエーサーの手前に大質量の銀河があると、
銀河がレンズ源として働き、背景のクエーサーの像が複数に分かれたり、
アーク状に引き伸ばされたりします。

一般にレンズとなる銀河は、完全に球形の歪みを生み出すことはできず、
またレンズとなった銀河とクエーサーとは完全に一直線には並びません。

なので、背景のクエーサーの複数の像から届く光は、
それぞれわずかに異なる距離の経路を辿ることになるんですねー

そして、クエーサーの輝きが時間によって変化すると、
異なる像が異なる時刻に明滅する様子を見ることになり、
その時間の遅れは光がやってくる経路の長さに依存することになります。
  100億光年彼方のクエーサーを複数アングルから観測

この遅れは宇宙の膨張率を表す“ハッブル定数”の値と直接的に関係していて、
複数の像の間での時間的遅れを正確に測ることで、
高い精度で“ハッブル定数”を確かめることができます。


観測結果の矛盾

今回の研究では“ハッブル定数”を調べるために、
ハッブル宇宙望遠鏡やハワイのすばる望遠鏡など、複数の望遠鏡を用いて、
強い重力レンズ効果を引き起こしている5つの銀河を観測。

すると、近傍宇宙における“ハッブル定数”の値は、
これまでに超新星やケフェイド変光星の観測から得られている値と、
極めてよく一致していました。
重力レンズ効果を受けたクエーサー像と5つの前景の銀河の画像。
これらの天体を使って“ハッブル定数”を独立に調査。
その結果、現在の標準的な宇宙論モデルから期待される値より速く、
宇宙が膨張していることを予測することに…

ただ一方で、
その値は、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“プランク”による、
初期宇宙の宇宙背景放射の観測から得られた値とは一致しませんでした。

この不一致が非常に興味深い問題なんですねー

“プランク”で確かめられた“ハッブル定数”の値は、
現在の標準的な宇宙論モデルから期待される値とよく合っているのですが、
今回のような局所宇宙の様々な観測から求めた値とは一致していません。

今回の結果から予測できるのは、
標準的なモデルで期待される値より速く宇宙が膨張していること。

そして、高い精度を持った異なる方法で宇宙の膨張率を測れば…

現在の私たちの宇宙に対する理解を超える新しい物理が、
観測結果の矛盾から示されるのかもしれませんね。


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