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決め手は質量と金属量にあった! Ia型超新星爆発が作り出す大量のマンガンやニッケル

2018年10月30日 | 宇宙 space
大質量の恒星が生涯を終える(燃え尽きる)と大規模な爆発現象“超新星爆発”を起こします。

でも多くの恒星は、太陽と同程度から数分の1程度の大きさの質量で、地球くらいの直径に縮小した高密度の天体“白色矮星”になるんですねー

今回の研究対象は、限界に近い質量を持った“白色矮星”が、太陽を越えるような高い金属量を持っていた場合に発生する現象。

数値シミュレーションが示したのは、“白色矮星”が起こすIa型超新星爆発で大量のマンガンやニッケルなどが作り出されることでした。


Ia型超新星は色んな元素を作ることができる

Ia型超新星は、高密度の星“白色矮星”と伴星とが連星を成しているとき、“白色矮星”が熱核反応の暴走を起こすことによって生じる爆発現象です。

鉄やニッケル、マンガン、ケイ素や硫黄などがIa型超新星爆発によって合成され、こうした元素が爆発で周囲にばら撒かれて、次世代の恒星や惑星、生命の材料になります。
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Ia型超新星(イメージ図)
右の伴星の外装が左の“白色矮星”の重力に引かれて“白色矮星”に流れ込み、
“白色矮星”の質量が限界を超えると、Ia型超新星として爆発する。
伴星も“白色矮星”というモデルも提唱されている。
最近、多くの観測結果から分かってきたのが、Ia型超新星とその超新星残骸に含まれている元素の組成に多様性があること。
特にマンガンやニッケルなどが鉄の量に比べて多いという特徴が見られています。

たとえば、わし座の方向に位置する超新星残骸“3C 397”では、鉄に対するマンガンの存在比が太陽の値の2倍、鉄に対するニッケルの存在比だと太陽の4倍にもなることが観測されています。

これは、標準的な理論モデルでは説明出来ない特異な化学組成なんですねー
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超新星残骸“3C 397”
X線、可視光線、赤外線の各波長で観測した画像を合成している。


作られる元素は“白色矮星”の質量と金属量で決まる

“白色矮星”の特性や“白色矮星”になる前の星の特性の違いにより、爆発によって合成される元素の組成にどのようにな違いが生じるのか?

この違いを調べるため、今回の研究ではIa型超新星の多次元流体シミュレーションを用いています。

シミュレーションにより明らかになったのは、マンガンと鉄、ニッケルと鉄の存在比は、“白色矮星”の質量や金属量の影響を受けていること。

超新星残骸“3C 397”での存在比の値は、超新星の元になる“白色矮星”がチャンドラセカール質量と同じくらい重く、太陽より高い金属量を持っていれば説明が可能なことが示されます。
  チャンドラセカール質量は理論上の白色矮星の上限質量、太陽の1.4倍程度になる。

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異なる金属量を持つ“白色矮星”の爆発モデルが生成するニッケル(Ni)と鉄(Fe)、
マンガン(Mn)と鉄(Fe)の質量比。
赤は太陽と同じ金属量の“白色矮星”、青は太陽の5倍の気温属領に対応している。
矢印で示された方向に沿ったデータポイントは、
それぞれ太陽質量の1.30倍~1.38倍の質量を持つ“白色矮星”のモデルのデータを示している。
このことが示しているのは、“3C 397”が比較的軽い“白色矮星”の爆発で作られた超新星残骸ではないこと。

そして、一般的なのが、天の川銀河の円盤部分に存在る星の多くは、太陽の金属量に近いか下回る程度の金属量を持つこと。
でも、“3C 397”の爆発前の“白色矮星”は、太陽よりも高い金属量を持っていたと考えられるんですねー

今回の研究成果は、Ia型超新星を起こす“白色矮星”の質量がチャンドラセカール質量に近いか、それよりも小さいかという論争に重要な手がかりを与えるものになります。

また、太陽を超えるような高い金属量を持つ星の進化や、銀河の化学進化の研究にも重要性を示しています。

今後、より多くの観測データを用いたり、モデルを他のIa形超新星に拡張させたりして、シミュレーションでのテストをさらに進めるようです。


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