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火星の“核”は地球よりも小さめ。鉄やニッケルは取り込まれず酸化して“マントル”や“地殻”へ

2020年02月19日 | 火星の探査
地球の化学組成や内部構造については、かなり詳しく分かってきているのですが、他の岩石惑星だと多くの不明な点がまだまだあります。
そこで、今回行われたのは、過去に採取された火星隕石や火星探査機の観測データに基づいた、新たな火星の化学組成と内部構造モデルの計算。
そして、分かってきたのは、火星の核は地球の核に比べて惑星全体の質量に対する割合が小さいということ。
鉄やニッケルがあまり“核”に取り込まれず、酸化して“マントル”や“地殻”に取り込まれているようです。
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岩石惑星の化学組成や内部構造はどうなっているのか

地球はどんな物質でできていて、内部はどのような構造になっているのでしょうか?
このことについては、岩石のサンプルや地震波の伝わり方などから、かなり詳しく分かってきています。

地球の表面には主にケイ酸塩でできた厚さ数キロ~数十キロの“地殻”があり、その下には厚さ2900キロほどの“マントル”と呼ばれる層が存在しています。

“マントル”の下には“外核”があり、鉄やニッケルが液体の状態で存在しています。
そして、一番内側にあるのが“内核”で、固体の鉄やニッケルで構成されています。

それでは、水星や金星、火星など地球以外の岩石惑星ではどうでしょうか?

これら岩石惑星については、これまで内部の探査や地震観測が行われた例がほとんどありませんでした。
なので、惑星内部の様子について確実なことはほとんど分かっていません。

ただ、火星については、これまでに多くの探査ミッションが行われていていることや、火星から地球に飛来した“火星隕石”も採取されています。
そう、火星は地球の次に多くの情報が得られている岩石惑星なんですねー

それでも、火星の化学組成や内部構造の詳細については多くの不明な点があります。

現在広く受け入れられている理論では、太陽系の元となった原始惑星系円盤のガスの組成は、炭素質隕石の一種である“CIコンドライト”の組成に近いものだと考えられています。
  原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。

これは、“CIコンドライト”に含まれる重い元素の比率が太陽の大気の組成と非常によく一致しているため。
このため、これまでに行われてきた火星の化学組成の研究でも、火星の重元素の組成は“CIコンドライト”にほぼ等しいという過程に基づいているものが多くありました。

でも、最新の太陽大気の観測や隕石の成分分析の結果からは、“CIコンドライト”の重元素の組成は必ずしも火星の重元素組成に似ているとは言えないという見方も出てきています。


火星探査機“インサイト”の探査活動に期待

今回の研究では、“CIコンドライト”の代わりに、過去に採取された火星隕石や火星探査機の観測データに基づいて、新たに火星の化学組成と内部構造のモデルを導き出しています。
  研究を進めたのは、東北大学大学院理学研究科と東北大学ニュートリノ科学研究センター、アメリカ・メリーランド大学のチーム。

原始惑星系円盤の高温のガスが冷えて、惑星の材料になるチリの微粒子ができるときには、融点や沸点の高い“難揮発性”の元素から先に固体になって行くという性質があります。

一番先に固体物質に取り込まれるのは、アルミニウムやチタン・カルシウム・希土類など。
その次に鉄やニッケル、さらにナトリウムやカリウム・硫黄などを含む物質が固体になっていきます。

研究チームが計算から得たのは、火星ではカリウムや硫黄など、中程度の揮発性を持つ元素が地球よりも多くなるという結果。
さらに、地球の金属核が地球質量の約1/3を占めるのに対して、火星の金属核は火星質量の1/6程度にしかならないことも分かります。

このことが示しているのは、火星では鉄やニッケルがあまり“核”に取り込まれず、酸化して“マントル”や“地殻”に取り込まれやすいということ。火星が地球よりも酸化的な環境にあったことを示唆する結果でした。
今回の研究から導かれた火星内部の構造
今回の研究から導かれた火星内部の構造
2018年に火星に到着したNASAの探査機“インサイト”は、火星の地震の観測や、表面を掘削して史上初めて火星内部を直接観測するなどの探査をしています。

“インサイト”の探査によって火星の“核”と“マントル”の境界面の深さが分かれば、今回構築されたモデルの検証にもつながり、火星の化学組成をより正確に決めるのにも役立つと期待されているんですねー

今後、研究チームが目指しているのは、水星や金星の化学組成や内部構造についても、同じように新たなモデルを構築すること。
個人的には、大きさが地球に近く、公転軌道も比較的近いことから地球の双子星と呼ばれる金星が気になりますね。


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