みずがめ座の赤色矮星“トラピスト1”を周回する7つの地球サイズの惑星。
今回発表されたのは、これら惑星の大気が二次的にもたらされたものだという可能性。
大気は地球大気などと同様に、天体衝突や火山活動などでもたらされたもののようです。
太陽よりも小さく低温な星を回る地球サイズの惑星
みずがめ座の方向約40光年の彼方に位置する赤色矮星“トラピスト1”は、太陽の9%ほどの質量で、表面温度が約2500Kとかなり低温の星です。
この“トラピスト1”の周りには、2015年から2017年にかけて7個の惑星が発見されています。
惑星の直径はいずれも地球の0.3~1.1倍で、7個のうち3個はハビタブルゾーンに位置していました。
“ハビタブルゾーン”とは、主星(恒星)からの距離が程良く惑星の表面に液体の水が存在できる領域。この領域にある惑星では生命が居住可能だと考えられている。
また、惑星が主星の手前を通過する“トランジット”の際に行われた分光観測からは、7個のうち6個には何らかの大気が存在していると考えられています。
惑星が大気を持つ過程には“一次大気”と“二次大気”がある
一般に、惑星が大気を持つ過程には2種類あります。
1つは惑星が生まれた原始惑星系円盤の水素やヘリウムのガスを、惑星が重力で引き付けて自らの大気にするもの。こうしてできた大気を“一次大気”といいます。
木星などの巨大ガス惑星の大気は、こうして作られたと考えられています。
原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。
もう1つは、原始惑星系円盤からガスが消え去った後の時代に、原始惑星に別の小天体が衝突したり火山活動が起こったりすることで、固体物質から二酸化炭素や水蒸気などが放出されて惑星大気になるというもの。こうしてできた大気は“二次大気”と呼ばれます。
現在の地球や金星の大気は“二次大気”だと考えられています。
“二次大気”に含まれる二酸化炭素や水蒸気は、温室効果によって惑星を温暖な環境に保つ働きを持っています。
また、“一次大気”に含まれる水素も惑星表面の温度を上げる効果を持つとされています。
惑星環境が生命の存在に適しているか知る方法
そこで、惑星環境が生命の存在に適しているかどうかを考える上で重要になることがあります。
それは、大気が“一次大気”なのか“二次大気”なのか、どんな成分がどのくらい含まれているかを知ることです。
今回の研究では、水素を多く含む“一次大気”に着目。
“トラピスト1”の惑星が、“一次大気”を得てから現在まで保持し続けることができるかどうかを理論計算で調べています。
そして分かってきたのは、惑星が作られる初期段階では、“トラピスト1”の7個の惑星はそれぞれ惑星質量の0.01%から数%を占める量の“一次大気”を、原始惑星系円盤のガスから取り込むこと。
でも、その後主星から放射されるX線や紫外線によって、長くても数億年たつと、すべての惑星の“一次大気”が宇宙空間に散逸して失われてしまうことも明らかになります。
この結果から、現在の“トラピスト1”の惑星に大気が存在するとすれば、それは“一次大気”が失われた後の時代に生じた“二次大気”である可能性が高いことになります。
水素は温室効果ガスとして働くが、主星に近い距離を公転する惑星が水素に富んだ大気を持っていると、惑星表面が熱くなりすぎて生命の存在が難しくなる。
これらの惑星が水素を失った後に大気を得ていたとすれば、その厚さはガス惑星より薄く、二酸化炭素やメタン、酸素といったより重い分子からなるガスが主成分で、地球や金星の大気に似ている可能性を示すことになります。
2020年代にはNASAの赤外線宇宙望遠鏡“ジェームズ・ウェッブ”の打ち上げが予定されています。
“トラピスト1”の惑星の大気組成を詳しく知るためには、この次世代の赤外線宇宙望遠鏡による観測を待つことになりそうです。
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赤色矮星を巡る系外惑星が注目されているけど、大気を維持するメカニズムなどがない限り生命の居住は難しいようです。
今回発表されたのは、これら惑星の大気が二次的にもたらされたものだという可能性。
大気は地球大気などと同様に、天体衝突や火山活動などでもたらされたもののようです。
太陽よりも小さく低温な星を回る地球サイズの惑星
みずがめ座の方向約40光年の彼方に位置する赤色矮星“トラピスト1”は、太陽の9%ほどの質量で、表面温度が約2500Kとかなり低温の星です。
この“トラピスト1”の周りには、2015年から2017年にかけて7個の惑星が発見されています。
惑星の直径はいずれも地球の0.3~1.1倍で、7個のうち3個はハビタブルゾーンに位置していました。
“ハビタブルゾーン”とは、主星(恒星)からの距離が程良く惑星の表面に液体の水が存在できる領域。この領域にある惑星では生命が居住可能だと考えられている。
また、惑星が主星の手前を通過する“トランジット”の際に行われた分光観測からは、7個のうち6個には何らかの大気が存在していると考えられています。
“トラピスト1”の周りを回る7個の惑星と太陽系の4惑星との比較。それぞれ上から、公転周期(Orbital Perjod)、主星からの距離(Distance to Star)、半径(Planet Radius)、質量(Planet Mass)、密度(Planet Density)、表面重力(Surface Gravity)を表している。 |
惑星が大気を持つ過程には“一次大気”と“二次大気”がある
一般に、惑星が大気を持つ過程には2種類あります。
1つは惑星が生まれた原始惑星系円盤の水素やヘリウムのガスを、惑星が重力で引き付けて自らの大気にするもの。こうしてできた大気を“一次大気”といいます。
木星などの巨大ガス惑星の大気は、こうして作られたと考えられています。
原始惑星系円盤とは、誕生したばかりの恒星の周りに広がるガスやチリからなる円盤状の構造。恒星の形成や、円盤の中で誕生する惑星の研究対象とされている。
もう1つは、原始惑星系円盤からガスが消え去った後の時代に、原始惑星に別の小天体が衝突したり火山活動が起こったりすることで、固体物質から二酸化炭素や水蒸気などが放出されて惑星大気になるというもの。こうしてできた大気は“二次大気”と呼ばれます。
現在の地球や金星の大気は“二次大気”だと考えられています。
“二次大気”に含まれる二酸化炭素や水蒸気は、温室効果によって惑星を温暖な環境に保つ働きを持っています。
また、“一次大気”に含まれる水素も惑星表面の温度を上げる効果を持つとされています。
惑星環境が生命の存在に適しているか知る方法
そこで、惑星環境が生命の存在に適しているかどうかを考える上で重要になることがあります。
それは、大気が“一次大気”なのか“二次大気”なのか、どんな成分がどのくらい含まれているかを知ることです。
今回の研究では、水素を多く含む“一次大気”に着目。
“トラピスト1”の惑星が、“一次大気”を得てから現在まで保持し続けることができるかどうかを理論計算で調べています。
そして分かってきたのは、惑星が作られる初期段階では、“トラピスト1”の7個の惑星はそれぞれ惑星質量の0.01%から数%を占める量の“一次大気”を、原始惑星系円盤のガスから取り込むこと。
でも、その後主星から放射されるX線や紫外線によって、長くても数億年たつと、すべての惑星の“一次大気”が宇宙空間に散逸して失われてしまうことも明らかになります。
“トラピスト1”の周りを回る地球サイズの惑星(イメージ図)。この惑星系の惑星の大気は“二次大気”である可能性が高い。 |
水素は温室効果ガスとして働くが、主星に近い距離を公転する惑星が水素に富んだ大気を持っていると、惑星表面が熱くなりすぎて生命の存在が難しくなる。
これらの惑星が水素を失った後に大気を得ていたとすれば、その厚さはガス惑星より薄く、二酸化炭素やメタン、酸素といったより重い分子からなるガスが主成分で、地球や金星の大気に似ている可能性を示すことになります。
2020年代にはNASAの赤外線宇宙望遠鏡“ジェームズ・ウェッブ”の打ち上げが予定されています。
“トラピスト1”の惑星の大気組成を詳しく知るためには、この次世代の赤外線宇宙望遠鏡による観測を待つことになりそうです。
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