今回見つかったのは、巨大ブラックホールを公転する恒星が、約25日ごとに物質を剥ぎ取られて強いX線を放射する現象でした。
恒星が1回の接近で奪われる質量は、地球3個分にも相当するそうです。
このX線源には“Swift J023017.0+283603”という名前が付けられ、ただちに追観測が行われています。
当初、“Swift J023017.0+283603”は次第に減光すると予測されていました。
でも、追観測から分かったのは、この天体が7~10日間にわたって明るいX線を放射し続け、その後突然見えなくなるという振る舞いを約25日ごとに繰り返すことでした。
準周期性爆発は増光が数時間続く現象です。
数十万~数百万太陽質量の超大質量ブラックホールを公転する白色矮星の物質が、周期的に剥ぎ取られてブラックホールに落ち込み、X線が放射される現象だと考えられています。
周期性中心核突発現象も似た現象ですが、こちらは増光の継続時間や周期がもっと長く、主に可視光線を放射。
数千万~数億太陽質量の超大質量ブラックホールを公転する普通の恒星が、繰り返し物質を剥ぎ取られる現象だと考えられています。
“Swift J023017.0+283603”を検出した研究チームは、今回の規則的な増光現象は、準周期性爆発と周期性中心核突発現象の中間的な性質を持っていて、この2種類の現象の間をつなぐ“ミッシングリンク”というべき新現象をとらえたと考えています。
“Swift J023017.0+283603”は、太陽と同程度の質量を持つ恒星が、銀河中心に位置する超大質量ブラックホールの周りを楕円軌道で公転することで発生した現象だと結論付けます。
この恒星は、ブラックホールに近付くたびに、地球質量の約3倍もの物質を恒星の大気から剥ぎ取られていて、剥ぎ取られた恒星の大気は、ブラックホールに落ち込みながら加熱され、約200万度に達すると強いX線を放射することになります。
今回、“ニール・ゲーレルス・スウィフト”によるX線の突発的な増光の検出は、このような現象をとらえたものだと考えられます。
研究チームの解析では、このブラックホールの質量は約20万太陽質量かそれ以上と推定されていて、これは銀河中心の超大質量ブラックホールとしてはかなり小さな部類になります。
私たちの天の川銀河の中心にも超大質量ブラックホール“いて座A*(エースター)”が存在しています。
“いて座A*”は約400万太陽質量を持っていますが、典型的な超大質量ブラックホールの質量は数億太陽質量にもなります。
今回の発見は、太陽に似た恒星が、比較的小さな超大質量ブラックホールに、繰り返し物質を剥ぎ取られて飲み込まれつつある現象を初めてとらえたもの。
いわば、“反復型の部分的潮汐破壊”というべき、全く新たな発見といえます。
これまでに知られている“準周期性爆発”と“周期性中心核突発現象”といった2種類の現象は、数時間おきに発生するか、または年単位の周期を持つもので、今回の現象はこれらの中間に相当します。
詳細な計算では、関連する天体のタイプも、ちょうどこれらの現象の間を埋めるようなものであることが分かっています。
研究チームは、“ニール・ゲーレルス・スウィフト”のデータからX線の突発現象をリアルタイムで検出するシステムを開発していました。
今回の“Swift J023017.0+283603”が、このシステムで初めて検出した現象でした。
このタイプの天体は、この新しいシステムが開発されるまで、本質的に検出不可能なものでした。
今回の現象は、新システムの運用を始めて、すぐに見つけることができたものです。
20年近く運用されている“ニール・ゲーレルス・スウィフト”にとっても、突然全く新たな現象を見つけたことになります。
宇宙を見る新しい方法を見つければ、必ず何かしら新しい未知のものを見つけることができる。
っということを、今回の研究成果は示しているのかもしれませんね。
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恒星が1回の接近で奪われる質量は、地球3個分にも相当するそうです。
この研究は、イギリス・レスター大学のPhil Evansさんを中心とする研究チームが進めています。
約25日ごとに繰り返す明るいX線の放射
2022年6月22日のこと、NASAのガンマ線バースト観測衛星“ニール・ゲーレルス・スウィフト(旧称スウィフト)”が、さんかく座の方向約5億2000万光年彼方に位置する銀河“2MASX J02301709+2836050”の中心近くでX線の突発的な増光を検出しました。このX線源には“Swift J023017.0+283603”という名前が付けられ、ただちに追観測が行われています。
当初、“Swift J023017.0+283603”は次第に減光すると予測されていました。
でも、追観測から分かったのは、この天体が7~10日間にわたって明るいX線を放射し続け、その後突然見えなくなるという振る舞いを約25日ごとに繰り返すことでした。
2種類の現象の間をつなぐミッシングリンク
このような現象は過去にも観測例があり、“準周期性爆発(quasi-periodic eruption; QPE)”や“周期性中心核突発現象(periodic nuclear transient; PNT)”などと呼ばれています。準周期性爆発は増光が数時間続く現象です。
数十万~数百万太陽質量の超大質量ブラックホールを公転する白色矮星の物質が、周期的に剥ぎ取られてブラックホールに落ち込み、X線が放射される現象だと考えられています。
周期性中心核突発現象も似た現象ですが、こちらは増光の継続時間や周期がもっと長く、主に可視光線を放射。
数千万~数億太陽質量の超大質量ブラックホールを公転する普通の恒星が、繰り返し物質を剥ぎ取られる現象だと考えられています。
“Swift J023017.0+283603”を検出した研究チームは、今回の規則的な増光現象は、準周期性爆発と周期性中心核突発現象の中間的な性質を持っていて、この2種類の現象の間をつなぐ“ミッシングリンク”というべき新現象をとらえたと考えています。
NASAのガンマ線バースト観測衛星“ニール・ゲーレルス・スウィフト”のX線望遠鏡で撮影された“Swift J023017.0+283603”付近。左が増工前、右がX線で増光が見られる瞬間。(提供:Phil Evans (University of Leicester) / NASA Swift) |
太陽に似た恒星が比較的小さな超大質量ブラックホールに繰り返し物質を剥ぎ取られる現象
そこで、研究チームでは、準周期性爆発と周期性中心核突発現象のモデルを使って解析を実施。“Swift J023017.0+283603”は、太陽と同程度の質量を持つ恒星が、銀河中心に位置する超大質量ブラックホールの周りを楕円軌道で公転することで発生した現象だと結論付けます。
この恒星は、ブラックホールに近付くたびに、地球質量の約3倍もの物質を恒星の大気から剥ぎ取られていて、剥ぎ取られた恒星の大気は、ブラックホールに落ち込みながら加熱され、約200万度に達すると強いX線を放射することになります。
今回、“ニール・ゲーレルス・スウィフト”によるX線の突発的な増光の検出は、このような現象をとらえたものだと考えられます。
研究チームの解析では、このブラックホールの質量は約20万太陽質量かそれ以上と推定されていて、これは銀河中心の超大質量ブラックホールとしてはかなり小さな部類になります。
私たちの天の川銀河の中心にも超大質量ブラックホール“いて座A*(エースター)”が存在しています。
“いて座A*”は約400万太陽質量を持っていますが、典型的な超大質量ブラックホールの質量は数億太陽質量にもなります。
今回の発見は、太陽に似た恒星が、比較的小さな超大質量ブラックホールに、繰り返し物質を剥ぎ取られて飲み込まれつつある現象を初めてとらえたもの。
いわば、“反復型の部分的潮汐破壊”というべき、全く新たな発見といえます。
これまでに知られている“準周期性爆発”と“周期性中心核突発現象”といった2種類の現象は、数時間おきに発生するか、または年単位の周期を持つもので、今回の現象はこれらの中間に相当します。
詳細な計算では、関連する天体のタイプも、ちょうどこれらの現象の間を埋めるようなものであることが分かっています。
研究チームは、“ニール・ゲーレルス・スウィフト”のデータからX線の突発現象をリアルタイムで検出するシステムを開発していました。
今回の“Swift J023017.0+283603”が、このシステムで初めて検出した現象でした。
このタイプの天体は、この新しいシステムが開発されるまで、本質的に検出不可能なものでした。
今回の現象は、新システムの運用を始めて、すぐに見つけることができたものです。
20年近く運用されている“ニール・ゲーレルス・スウィフト”にとっても、突然全く新たな現象を見つけたことになります。
宇宙を見る新しい方法を見つければ、必ず何かしら新しい未知のものを見つけることができる。
っということを、今回の研究成果は示しているのかもしれませんね。
解説動画“Black Hole Snack Attack”。(提供:NASA's Goddard Space Flight Center) |
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