短時間に大量の電波パルスを発する“高速電波バースト(FRB; Fast Radio Bursts)”は、その正体やメカニズムなどに多くの謎があり、現在も研究が続いている天体現象です。
今回の研究では、周期的な電波の放出が唯一観測されている高速電波バースト“FRB 20121102A”の観測データを精査。
すると、電波の放出時間が0.3~4マイクロ秒と、マイクロ秒単位(1マイクロ秒=100万分の1秒)のバーストを8回観測していたことが明らかになります。
これは、これまでの高速電波バーストの10分の1未満の時間しか持続しない天体現象“超高速電波バースト(Ultra-Fast Radio Bursts)”の初めての観測事例でした。
多くの謎を持つ高速電波バーストのメカニズムを解明するための重要な手掛かりになるようです。
短時間に強力な電波パルスを発する謎の天体現象
高速電波バーストは、マイクロ秒~ミリ秒という短時間に強力な電波パルスを発する天体現象で、数十億光年もの彼方で発生していると考えられています。
ただ、その起源となる天体の正体や発生のメカニズムは未だ分かっていません。
分かっているのは、高速電波バーストが短時間に放出するエネルギー量は膨大で、太陽が数日かけて放出する総エネルギーに匹敵すること。
さらに、1つの例外を除き、高速電波バーストは1回だけ観測される周期的ではない天文現象ということです。
観測された電波の性質から、高速電波バーストの起源天体候補として上がっているのは、中性子星やマグネターなど、強い磁場を持つ天体。
数多くのモデルが提唱されている状況で、天文学における未解決問題になっています。
ただ、ほとんどの高速電波バーストが、銀河系外で発生していることは分かっています。
このように考えられるのは、高速電波バーストの放出時間の多くがミリ秒単位(1ミリ秒=1000分の1秒)で、電波放出源が数百キロ以下だと推定されるからです。
また、これよりさらに短時間だけ、具体的にはマイクロ秒単位での電波放出も予測されていました。
ただ、電波望遠鏡の観測精度の限界や、宇宙空間に薄く存在する物質の影響で電波が変調するなどの影響があり、この現象を観測することは困難でした。
このため、マイクロ秒単位での電波放出は、これまで主のバーストに付随するサブバーストで観測されていたものの、孤立したバーストとして観測されたことはありませんでした。
高速電波バーストの10分の1未満しか持続していないバーストを検出
高速電波バーストは1つの例外を除いて周期的ではない天文現象とされていました。
その唯一の例外となったのが、2012年11月2日に観測された“FRB 20121102A”でした。
ぎょしゃ座の方向に位置する“FRB 20121102A”は、複数の観測チームが複数回の検出に成功している天体です。
現在では、1時間に数十回の電波放出があることが明らかになっていて、“FRB 20121102A”は高速電波バーストの中でも興味深い観測対象の1つになっています。
今回の研究では、アメリカ・ウエストバージニア州のロバート・バード・グリーンバンク望遠鏡が2017年8月26日に収集したデータを使用。
“FRB 20121102A”の5時間分の観測データの分析を進めています。
研究チームでは、観測データ5時間分のうち最初の30分間について、1秒当たり50万分の1までデータを分割したうえで、ソフトウェアおよび機械学習を使用した分析を実施。
これにより、通常とは異なるデータが含まれていないかを調べています。
分析の結果分かったのは、電波の放出時間が0.3~4マイクロ秒と、30マイクロ秒未満の孤立したバーストが8つ含まれていることでした。
これは、通常の高速電波バーストの10分の1未満しか持続していないバースト。
過去の研究で、このような超高速電波バーストがあることは予測されていましたが、実際の観測事例は今回が初めてのことでした。
興味深いことに、超高速電波バーストは持続時間こそ極めて短いものの、電波の性質はそれよりずっと長いバーストとよく似ていることが分かりました。
このことが示唆しているのは、高速電波バーストも超高速電波バーストも似たようなメカニズムで放出されているということ。
これは、高速電波バーストが放出されるメカニズムを解明する上で、重要な手掛かりになるはずです。
研究チームでは、超高速電波バーストは他にも観測されていると考えています。
たとえば、超高速電波バーストの存在を予測した研究では、“FRB 20200120E”の電波放出の継続時間はわずか60ナノ秒(0.06マイクロ秒、1ナノ秒は10億分の1秒)と予測しています。
でも、“FRB 20200120E”を含めた多くの高速電波バーストの観測データには、それを立証できるほど精度の高い観測データがありませんでした。
高速電波バーストの電波は、銀河の間を薄く満たす高温のイオン化したガスの影響を受けていることが知られています。
このことから、高速電波バーストの分布を調べることは、宇宙の大規模構造を調べる上でも重要なことと言えます。
さらに、この研究過程で新たな超高速電波バーストが見つかれば、高速電波バーストに対する新たな知見を得ることができるかもしれませんね。
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今回の研究では、周期的な電波の放出が唯一観測されている高速電波バースト“FRB 20121102A”の観測データを精査。
すると、電波の放出時間が0.3~4マイクロ秒と、マイクロ秒単位(1マイクロ秒=100万分の1秒)のバーストを8回観測していたことが明らかになります。
これは、これまでの高速電波バーストの10分の1未満の時間しか持続しない天体現象“超高速電波バースト(Ultra-Fast Radio Bursts)”の初めての観測事例でした。
多くの謎を持つ高速電波バーストのメカニズムを解明するための重要な手掛かりになるようです。
この研究は、オランダ電波天文学研究所のM. P. Sneldersさんたちの研究チームが進めています。
図1.超高速電波バーストを観測したロバート・バード・グリーンバンク望遠鏡。(Credit: NRAO, AUI, NSF) |
短時間に強力な電波パルスを発する謎の天体現象
高速電波バーストは、マイクロ秒~ミリ秒という短時間に強力な電波パルスを発する天体現象で、数十億光年もの彼方で発生していると考えられています。
ただ、その起源となる天体の正体や発生のメカニズムは未だ分かっていません。
分かっているのは、高速電波バーストが短時間に放出するエネルギー量は膨大で、太陽が数日かけて放出する総エネルギーに匹敵すること。
さらに、1つの例外を除き、高速電波バーストは1回だけ観測される周期的ではない天文現象ということです。
観測された電波の性質から、高速電波バーストの起源天体候補として上がっているのは、中性子星やマグネターなど、強い磁場を持つ天体。
数多くのモデルが提唱されている状況で、天文学における未解決問題になっています。
ただ、ほとんどの高速電波バーストが、銀河系外で発生していることは分かっています。
このように考えられるのは、高速電波バーストの放出時間の多くがミリ秒単位(1ミリ秒=1000分の1秒)で、電波放出源が数百キロ以下だと推定されるからです。
また、これよりさらに短時間だけ、具体的にはマイクロ秒単位での電波放出も予測されていました。
ただ、電波望遠鏡の観測精度の限界や、宇宙空間に薄く存在する物質の影響で電波が変調するなどの影響があり、この現象を観測することは困難でした。
このため、マイクロ秒単位での電波放出は、これまで主のバーストに付随するサブバーストで観測されていたものの、孤立したバーストとして観測されたことはありませんでした。
高速電波バーストの10分の1未満しか持続していないバーストを検出
高速電波バーストは1つの例外を除いて周期的ではない天文現象とされていました。
その唯一の例外となったのが、2012年11月2日に観測された“FRB 20121102A”でした。
ぎょしゃ座の方向に位置する“FRB 20121102A”は、複数の観測チームが複数回の検出に成功している天体です。
現在では、1時間に数十回の電波放出があることが明らかになっていて、“FRB 20121102A”は高速電波バーストの中でも興味深い観測対象の1つになっています。
今回の研究では、アメリカ・ウエストバージニア州のロバート・バード・グリーンバンク望遠鏡が2017年8月26日に収集したデータを使用。
“FRB 20121102A”の5時間分の観測データの分析を進めています。
研究チームでは、観測データ5時間分のうち最初の30分間について、1秒当たり50万分の1までデータを分割したうえで、ソフトウェアおよび機械学習を使用した分析を実施。
これにより、通常とは異なるデータが含まれていないかを調べています。
図2.今回見つかった8つの超高速電波バースト。各バーストは孤立していて持続時間は0.3~4マイクロ秒。(Credit: M. P. Snelders, et al.) |
これは、通常の高速電波バーストの10分の1未満しか持続していないバースト。
過去の研究で、このような超高速電波バーストがあることは予測されていましたが、実際の観測事例は今回が初めてのことでした。
興味深いことに、超高速電波バーストは持続時間こそ極めて短いものの、電波の性質はそれよりずっと長いバーストとよく似ていることが分かりました。
このことが示唆しているのは、高速電波バーストも超高速電波バーストも似たようなメカニズムで放出されているということ。
これは、高速電波バーストが放出されるメカニズムを解明する上で、重要な手掛かりになるはずです。
研究チームでは、超高速電波バーストは他にも観測されていると考えています。
たとえば、超高速電波バーストの存在を予測した研究では、“FRB 20200120E”の電波放出の継続時間はわずか60ナノ秒(0.06マイクロ秒、1ナノ秒は10億分の1秒)と予測しています。
でも、“FRB 20200120E”を含めた多くの高速電波バーストの観測データには、それを立証できるほど精度の高い観測データがありませんでした。
高速電波バーストの電波は、銀河の間を薄く満たす高温のイオン化したガスの影響を受けていることが知られています。
このことから、高速電波バーストの分布を調べることは、宇宙の大規模構造を調べる上でも重要なことと言えます。
さらに、この研究過程で新たな超高速電波バーストが見つかれば、高速電波バーストに対する新たな知見を得ることができるかもしれませんね。
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