今回の研究では、天の川銀河内で何百もの“汚染された”白色矮星を発見しています。
これら発見された白色矮星が汚染されたのは、周囲を公転している惑星を積極的に取り込んだ結果でした。
このことから汚染された白色矮星を研究することは、遠方に位置する太陽系外惑星の組成を研究するための貴重なリソースと言えます。
さらに、このことは太陽系外惑星の多様性や進化の歴史を解き明かすのにも役立つはずです。
ただ、問題となったのは、汚染された白色矮星を発見することが容易ではないことでした。
それは、その兆候が微弱で検出が困難な上、白色矮星が惑星を飲み込んでから時間が経つと、重元素は白色矮星の内部に沈んでしまうからです。
このため、観測可能な期間は限られてしまいます。
そこで、本研究では、多様体学習と呼ばれるAI技術を用いた新し探査方法を開発。
このAI技術を位置天文衛星“ガイア”のデータに適用することで、汚染された白色矮星を効率的に識別することに成功しています。
本研究は、AI技術が天文学にもたらす大きな可能性を示す好例と言えます。
AIは、これまで人間の能力では不可能だった規模と速度で、宇宙の謎を解き明かすための強力なツールとして、ますます重要な役割を果たしていくことが期待されます。
超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星の最期
広大な宇宙において、比較的軽い恒星(質量が太陽の8倍以下)がその一生の最期を迎えると、赤色巨星の段階を経て白色矮星と呼ばれる天体へと姿を変えます。
赤色巨星に進化した恒星は、周囲の宇宙空間に外層からガスを放出して質量を失っていき、その後に残るコア(中心核)が白色矮星になると考えられています。
一般的な白色矮星は直径こそ地球と同程度ですが、質量は太陽の4分の3程度もあり、高密度で重力が非常に強く、地球の約10万倍にも達します。
例えば、私たちの太陽も約60億年後には燃料を使い果たし、白色矮星になると考えられています。
誕生当初の白色矮星の表面温度は10万℃を上回ることもありますが、内部で核融合反応は起こらず余熱で輝くのみなので、太陽のように単独の恒星から進化した白色矮星は長い時間をかけて冷えていくことになります。(※1)
系外惑星による白色矮星の汚染
白色矮星は、その進化の過程で、周囲を公転する惑星に大きな影響を与えます。
恒星が赤色矮星へと進化する際には、その外層が大きく膨張し、周囲の惑星を飲み込んでしまうことがあります。
また、白色矮星は、その強力な重力によって、惑星の軌道を不安定化させ、惑星同士の衝突を引き起こすこともあります。
このようなプロセスで破壊された惑星の内部物質が白色矮星の表面に降り積もり、白色矮星を“汚染”する現象が確認されています。
白色矮星の大気は、ほとんどが水素とヘリウムで構成されているので、他の元素の存在は外部からの物質の降着を示す明確な証拠となります。
この汚染された白色矮星は、太陽系外惑星の内部構造を研究する上で、他に類を見ない貴重な情報源となります。
これは、白色矮星の表面に観測される重元素が、かつて飲み込まれた惑星の内部組成を反映しているためです。
なので、太陽系外惑星の形成過程や進化、そして生命が存在する可能性を探る上で重要な手掛かりとなります。
でも、汚染された白色矮星を発見することは容易ではないんですねー
それは、その兆候が微弱で検出が困難な上、白色矮星が惑星を飲み込んでから時間が経つと、重元素は白色矮星の内部に沈んでしまうからです。
このため、観測可能な期間は限られてしまいます。
AI技術を用いた汚染された白色矮星探し
これまでの探査方法では、天文学者が膨大な天文観測データを手作業で調べて、汚染された白色矮星の兆候を探す必要がありました。
この作業は非常に時間と努力を要するもの。
このため、効率的な探査方法の開発が課題となっていました。
この課題を克服するため、今回の研究では多様体学習と呼ばれるAI技術を用いた新し探査方法を開発しています。
多様体学習とは、データセット内の類似した特徴を見つけ出し、類似した項目を簡略化された視覚的なチャートにまとめるアルゴリズムです。
このチャートを調べることで、どのグループが調査する価値があるのかを判断することができる訳です。
AIは、人間よりもはるかに高速かつ正確に、大量のデータを処理することができます。
また、人間では見つけることが難しい、隠れたパターンや規則性を見つけることも得意としています。
これらのAIの能力は、天体探査の分野においても、その威力をいかんなく発揮しています。
研究チームは、このAI技術をヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星“ガイア”のデータに適用。
“ガイア”は、これまでにない規模で白色矮星の分光観測を行っていますが、データの解像度が低いので、汚染された白色矮星を発見することは困難だと考えられてきました。
でも、多様体学習を用いることで、“ガイア”のデータから汚染された白色矮星を効率的に識別することに成功しています。
具体的には、研究チームは10万個以上の白色矮星の候補を分類。
その結果、375個の星からなるグループが汚染された白色矮星の可能性が高いことを突き止めています。
これらの星は、大気に重元素を含むという、汚染された白色矮星の重要な特徴を示していました。
さらに、テキサス大学マクドナルド天文台のホビー・エバリー望遠鏡(口径10メートル)による追跡観測により、これらの星が実際に汚染された白色矮星であることが確認されました。
この新しい探査方法は、汚染された白色矮星の数を10倍に増やす可能性を秘めていて、太陽系外惑星の多様性や組成に関する研究を大きく前進させるはずです。
研究チームは、将来的にこの技術を用いることで、生命が存在できる可能性のある太陽系外惑星を発見したいと考えています。
本研究は、AI技術が天文学にもたらす大きな可能性を示す好例と言えます。
AIは、これまで人間の能力では不可能だった規模と速度で、宇宙の謎を解き明かすための強力なツールとして、ますます重要な役割を果たしていくことが期待されます。
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これら発見された白色矮星が汚染されたのは、周囲を公転している惑星を積極的に取り込んだ結果でした。
このことから汚染された白色矮星を研究することは、遠方に位置する太陽系外惑星の組成を研究するための貴重なリソースと言えます。
さらに、このことは太陽系外惑星の多様性や進化の歴史を解き明かすのにも役立つはずです。
ただ、問題となったのは、汚染された白色矮星を発見することが容易ではないことでした。
それは、その兆候が微弱で検出が困難な上、白色矮星が惑星を飲み込んでから時間が経つと、重元素は白色矮星の内部に沈んでしまうからです。
このため、観測可能な期間は限られてしまいます。
そこで、本研究では、多様体学習と呼ばれるAI技術を用いた新し探査方法を開発。
このAI技術を位置天文衛星“ガイア”のデータに適用することで、汚染された白色矮星を効率的に識別することに成功しています。
本研究は、AI技術が天文学にもたらす大きな可能性を示す好例と言えます。
AIは、これまで人間の能力では不可能だった規模と速度で、宇宙の謎を解き明かすための強力なツールとして、ますます重要な役割を果たしていくことが期待されます。
この研究は、テキサス大学オースティン校の大学院生Malia Kaoさんを中心とする研究チームが進めています。
本研究の成果は、アメリカの天体物理学専門誌“Astrophysical Journal”に“Hunting for Polluted White Dwarfs and Other Treasures with Gaia XP Spectra and Unsupervised Machine Learning”として掲載されました。DOI: 10.3847/1538-4357/ad5d6e
本研究の成果は、アメリカの天体物理学専門誌“Astrophysical Journal”に“Hunting for Polluted White Dwarfs and Other Treasures with Gaia XP Spectra and Unsupervised Machine Learning”として掲載されました。DOI: 10.3847/1538-4357/ad5d6e
図1.Credit: NASA, ESSA, Joseph Olmsted (STScI). |
超新星爆発を起こさない比較的軽い恒星の最期
広大な宇宙において、比較的軽い恒星(質量が太陽の8倍以下)がその一生の最期を迎えると、赤色巨星の段階を経て白色矮星と呼ばれる天体へと姿を変えます。
赤色巨星に進化した恒星は、周囲の宇宙空間に外層からガスを放出して質量を失っていき、その後に残るコア(中心核)が白色矮星になると考えられています。
一般的な白色矮星は直径こそ地球と同程度ですが、質量は太陽の4分の3程度もあり、高密度で重力が非常に強く、地球の約10万倍にも達します。
例えば、私たちの太陽も約60億年後には燃料を使い果たし、白色矮星になると考えられています。
誕生当初の白色矮星の表面温度は10万℃を上回ることもありますが、内部で核融合反応は起こらず余熱で輝くのみなので、太陽のように単独の恒星から進化した白色矮星は長い時間をかけて冷えていくことになります。(※1)
※1.単独で存在する白色矮星が爆発することはない。ただ、連星の場合だと、白色矮星と連星をなすもう一方の星(伴星)の外層部から流れ出した物質が、主星である白色矮星へと降り積もる“降着”という現象が起こる。この降着により、白色矮星の質量が増えて太陽質量の約1.4倍(チャンドラセカール限界)を超えてしまうと、自己重力を支えられなくなって収縮し、暴走的な核融合反応が起こって爆発してしまうことに… この爆発を起こして星全体が吹き飛ぶ現象をIa型超新星爆発と呼ぶ。
系外惑星による白色矮星の汚染
白色矮星は、その進化の過程で、周囲を公転する惑星に大きな影響を与えます。
恒星が赤色矮星へと進化する際には、その外層が大きく膨張し、周囲の惑星を飲み込んでしまうことがあります。
また、白色矮星は、その強力な重力によって、惑星の軌道を不安定化させ、惑星同士の衝突を引き起こすこともあります。
このようなプロセスで破壊された惑星の内部物質が白色矮星の表面に降り積もり、白色矮星を“汚染”する現象が確認されています。
白色矮星の大気は、ほとんどが水素とヘリウムで構成されているので、他の元素の存在は外部からの物質の降着を示す明確な証拠となります。
この汚染された白色矮星は、太陽系外惑星の内部構造を研究する上で、他に類を見ない貴重な情報源となります。
これは、白色矮星の表面に観測される重元素が、かつて飲み込まれた惑星の内部組成を反映しているためです。
なので、太陽系外惑星の形成過程や進化、そして生命が存在する可能性を探る上で重要な手掛かりとなります。
でも、汚染された白色矮星を発見することは容易ではないんですねー
それは、その兆候が微弱で検出が困難な上、白色矮星が惑星を飲み込んでから時間が経つと、重元素は白色矮星の内部に沈んでしまうからです。
このため、観測可能な期間は限られてしまいます。
AI技術を用いた汚染された白色矮星探し
これまでの探査方法では、天文学者が膨大な天文観測データを手作業で調べて、汚染された白色矮星の兆候を探す必要がありました。
この作業は非常に時間と努力を要するもの。
このため、効率的な探査方法の開発が課題となっていました。
この課題を克服するため、今回の研究では多様体学習と呼ばれるAI技術を用いた新し探査方法を開発しています。
多様体学習とは、データセット内の類似した特徴を見つけ出し、類似した項目を簡略化された視覚的なチャートにまとめるアルゴリズムです。
このチャートを調べることで、どのグループが調査する価値があるのかを判断することができる訳です。
AIは、人間よりもはるかに高速かつ正確に、大量のデータを処理することができます。
また、人間では見つけることが難しい、隠れたパターンや規則性を見つけることも得意としています。
これらのAIの能力は、天体探査の分野においても、その威力をいかんなく発揮しています。
研究チームは、このAI技術をヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星“ガイア”のデータに適用。
“ガイア”は、これまでにない規模で白色矮星の分光観測を行っていますが、データの解像度が低いので、汚染された白色矮星を発見することは困難だと考えられてきました。
でも、多様体学習を用いることで、“ガイア”のデータから汚染された白色矮星を効率的に識別することに成功しています。
具体的には、研究チームは10万個以上の白色矮星の候補を分類。
その結果、375個の星からなるグループが汚染された白色矮星の可能性が高いことを突き止めています。
これらの星は、大気に重元素を含むという、汚染された白色矮星の重要な特徴を示していました。
さらに、テキサス大学マクドナルド天文台のホビー・エバリー望遠鏡(口径10メートル)による追跡観測により、これらの星が実際に汚染された白色矮星であることが確認されました。
この新しい探査方法は、汚染された白色矮星の数を10倍に増やす可能性を秘めていて、太陽系外惑星の多様性や組成に関する研究を大きく前進させるはずです。
研究チームは、将来的にこの技術を用いることで、生命が存在できる可能性のある太陽系外惑星を発見したいと考えています。
本研究は、AI技術が天文学にもたらす大きな可能性を示す好例と言えます。
AIは、これまで人間の能力では不可能だった規模と速度で、宇宙の謎を解き明かすための強力なツールとして、ますます重要な役割を果たしていくことが期待されます。
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