楕円銀河の中心に位置する超大質量ブラックホール連星の質量が、周囲の恒星の運動から求められました。
この超大質量ブラックホールの連星は、これまで観測された中で最も質量の大きなもの。
2つのブラックホールを合わせた質量は、太陽の280億倍にもなるようです。
しかも、超大質量ブラックホール連星の間隔はわずか24光年…
ブラックホール同士の間隔が直接測定された連星としては最も接近した天体でした。
この超大質量ブラックホール連星は、なぜか過去30億年間にも渡ってこの間隔を保っているようです。
超大質量ブラックホール連星の合体
超大質量ブラックホールを持つ2つの銀河が衝突・合体すると、中心の超大質量ブラックホール同士も連星となり、最終的には合体すると考えられています。
銀河が衝突合体するとき、超大質量ブラックホール同士は正面衝突するのではなく、互いに接近してはすれ違う“二体散乱”を繰り返します。
この二体散乱が起こる際に、別の恒星も同時に接近する“三体相互作用”が起こると、恒星は超大質量ブラックホール連星から運動エネルギーをもらって弾き飛ばされ、残された2個の超大質量ブラックホールは位置エネルギーを失うことで間隔が近づくことになります。
この現象を“スリングショット(パチンコ効果)”と言います。
超大質量ブラックホール連星がスリングショットを繰り返して間隔が数光年まで近づくと、重力波を放出し最後には合体してしまいます。
恒星質量ブラックホールの連星では、2015年以来、重力波望遠鏡によってこうした合体が観測されてきました。
でも、超大質量ブラックホールの連星では、まだ観測されたことは無いんですねー
そのため、超大質量ブラックホールの連星が本当に合体するのかについては、長年議論が続いています。
最も接近したブラックホール連星
今回の研究では、ペルセウス座の方向約8億光年彼方に位置する、楕円銀河“B2 0402+379”の超大質量ブラックホール連星に着目しています。
この超大質量ブラックホールは、アメリカ・ハワイのマウナケア山にあるジェミニ北望遠鏡(口径8.1メートル)に搭載された多天体分光器“GMOS”がとらえたものでした。
この超大質量ブラックホール連星の間隔はわずか24光年。
ブラックホール同士の間隔が直接測定された超大質量ブラックホールの連星としては、最も接近した天体でした。
これまでの研究から分かっていたのは、“B2 0402+379”の超大質量ブラックホール連星が、なぜか過去30億年間にも渡ってこの間隔を保っていることでした。
そこで、研究グループでは超大質量ブラックホール連星の質量を求めるため、“GMOS”のデータから超大質量ブラックホール連星の周囲に存在している恒星の速度を見積もっています。
“GMOS”の高い感度により、恒星が銀河中心へ近づくにつれて速度が上がる様子をとらえることができ、2個のブラックホールの合計質量を求めることに成功。
解析の結果、この超大質量ブラックホール連星の合計質量は、太陽質量の約280億倍と見積もられました。
この値は、過去に測定された超大質量ブラックホール連星の質量としては最大のものでした。
何度も合体することで成長してきたブラックホール
これまでの研究から、“B2 0402+379”の超大質量ブラックホール連星は、数回の銀河合体を経ていると見られていました。
それは、“B2 0402+379”が“銀河団の化石”らしいという点が理由になっています。
つまり、1個の銀河団が持つ星とガスの大半が合体してできた1個の巨大楕円銀河が“B2 0402+379”という訳です。
しかも、超大質量ブラックホールが2個存在し、合計質量がこれほど大きいことから、複数の銀河にあった複数個の超大質量ブラックホールが何度も合体することで、ここまで成長してきたことになります。
今回求められた質量の大きさから考えると、この超大質量ブラックホール連星の軌道をここまで接近させるには、莫大な数の恒星が必要だったはずです。
2個の超大質量ブラックホールがこの距離になるまでの間に、その周囲の物質をスリングショットでほぼ全て弾き飛ばすことで、銀河中心部から星やガスを一掃。
その結果、超大質量ブラックホール連星を、これ以上近づけるのに必要な物質がもう周りには存在せず、現在の軌道に留まっていることになります。
もっと軽いブラックホール連星を持つ銀河なら、素早く合体できるほどの十分な星や物質が周囲にあったはずです。
ただ、今回のペアは非常に重いので、合体させるには大量の星や物資が周りに必要になったんですねー
最終的に銀河中心部から物質を無くしてしまうことで、現在の軌道を保っていることが着目され、今回の研究に繋がったということです。
もし、この超大質量ブラックホール連星が合体すれば、放射される重力波は恒星質量ブラックホール連星の重力波より数億倍も強いものになるはずです。
それでは、このペアは停滞を乗り越えて数百万年後に合体するのでしょうか?
それとも、永遠に今の軌道にとらわれ続けるのでしょうか?
それは、まだ分かっていません。
もし、“B2 0402+379”が別の銀河とさらに衝突合体すれば、追加の物質と3個目のブラックホールが供給されることで、超大質量ブラックホール連星の間隔がさらに近付き、連星を保てなくなるかもしれません。
でも、“B2 0402+379”が“銀河団の化石”状態であることを考えると、他の銀河との合体は無さそうです。
今後、“B2 0402+379”の中心核を追跡調査し、どれくらいのガスが存在するのかを調べることで、超大質量ブラックホールの連星が合体するのか、連星でい続けるのかを知る、さらなる手掛かりが得られるかもしれません。
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この超大質量ブラックホールの連星は、これまで観測された中で最も質量の大きなもの。
2つのブラックホールを合わせた質量は、太陽の280億倍にもなるようです。
しかも、超大質量ブラックホール連星の間隔はわずか24光年…
ブラックホール同士の間隔が直接測定された連星としては最も接近した天体でした。
この超大質量ブラックホール連星は、なぜか過去30億年間にも渡ってこの間隔を保っているようです。
この研究は、アメリカ・スタンフォード大学のTirth Surtiさんたちの研究グループが進めています。
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図1.2個の超大質量ブラックホールからなる連星(イメージ図)。超大質量ブラックホール連星の合体は長年予言されているが観測例はない。(Credit: NOIRLab/NSF/AURA/J. daSilva/M. Zamani) |
超大質量ブラックホール連星の合体
超大質量ブラックホールを持つ2つの銀河が衝突・合体すると、中心の超大質量ブラックホール同士も連星となり、最終的には合体すると考えられています。
銀河が衝突合体するとき、超大質量ブラックホール同士は正面衝突するのではなく、互いに接近してはすれ違う“二体散乱”を繰り返します。
この二体散乱が起こる際に、別の恒星も同時に接近する“三体相互作用”が起こると、恒星は超大質量ブラックホール連星から運動エネルギーをもらって弾き飛ばされ、残された2個の超大質量ブラックホールは位置エネルギーを失うことで間隔が近づくことになります。
この現象を“スリングショット(パチンコ効果)”と言います。
超大質量ブラックホール連星がスリングショットを繰り返して間隔が数光年まで近づくと、重力波を放出し最後には合体してしまいます。
恒星質量ブラックホールの連星では、2015年以来、重力波望遠鏡によってこうした合体が観測されてきました。
でも、超大質量ブラックホールの連星では、まだ観測されたことは無いんですねー
そのため、超大質量ブラックホールの連星が本当に合体するのかについては、長年議論が続いています。
最も接近したブラックホール連星
今回の研究では、ペルセウス座の方向約8億光年彼方に位置する、楕円銀河“B2 0402+379”の超大質量ブラックホール連星に着目しています。
この超大質量ブラックホールは、アメリカ・ハワイのマウナケア山にあるジェミニ北望遠鏡(口径8.1メートル)に搭載された多天体分光器“GMOS”がとらえたものでした。
この超大質量ブラックホール連星の間隔はわずか24光年。
ブラックホール同士の間隔が直接測定された超大質量ブラックホールの連星としては、最も接近した天体でした。
これまでの研究から分かっていたのは、“B2 0402+379”の超大質量ブラックホール連星が、なぜか過去30億年間にも渡ってこの間隔を保っていることでした。
そこで、研究グループでは超大質量ブラックホール連星の質量を求めるため、“GMOS”のデータから超大質量ブラックホール連星の周囲に存在している恒星の速度を見積もっています。
“GMOS”の高い感度により、恒星が銀河中心へ近づくにつれて速度が上がる様子をとらえることができ、2個のブラックホールの合計質量を求めることに成功。
解析の結果、この超大質量ブラックホール連星の合計質量は、太陽質量の約280億倍と見積もられました。
この値は、過去に測定された超大質量ブラックホール連星の質量としては最大のものでした。
何度も合体することで成長してきたブラックホール
これまでの研究から、“B2 0402+379”の超大質量ブラックホール連星は、数回の銀河合体を経ていると見られていました。
それは、“B2 0402+379”が“銀河団の化石”らしいという点が理由になっています。
つまり、1個の銀河団が持つ星とガスの大半が合体してできた1個の巨大楕円銀河が“B2 0402+379”という訳です。
しかも、超大質量ブラックホールが2個存在し、合計質量がこれほど大きいことから、複数の銀河にあった複数個の超大質量ブラックホールが何度も合体することで、ここまで成長してきたことになります。
今回求められた質量の大きさから考えると、この超大質量ブラックホール連星の軌道をここまで接近させるには、莫大な数の恒星が必要だったはずです。
2個の超大質量ブラックホールがこの距離になるまでの間に、その周囲の物質をスリングショットでほぼ全て弾き飛ばすことで、銀河中心部から星やガスを一掃。
その結果、超大質量ブラックホール連星を、これ以上近づけるのに必要な物質がもう周りには存在せず、現在の軌道に留まっていることになります。
もっと軽いブラックホール連星を持つ銀河なら、素早く合体できるほどの十分な星や物質が周囲にあったはずです。
ただ、今回のペアは非常に重いので、合体させるには大量の星や物資が周りに必要になったんですねー
最終的に銀河中心部から物質を無くしてしまうことで、現在の軌道を保っていることが着目され、今回の研究に繋がったということです。
もし、この超大質量ブラックホール連星が合体すれば、放射される重力波は恒星質量ブラックホール連星の重力波より数億倍も強いものになるはずです。
それでは、このペアは停滞を乗り越えて数百万年後に合体するのでしょうか?
それとも、永遠に今の軌道にとらわれ続けるのでしょうか?
それは、まだ分かっていません。
もし、“B2 0402+379”が別の銀河とさらに衝突合体すれば、追加の物質と3個目のブラックホールが供給されることで、超大質量ブラックホール連星の間隔がさらに近付き、連星を保てなくなるかもしれません。
でも、“B2 0402+379”が“銀河団の化石”状態であることを考えると、他の銀河との合体は無さそうです。
今後、“B2 0402+379”の中心核を追跡調査し、どれくらいのガスが存在するのかを調べることで、超大質量ブラックホールの連星が合体するのか、連星でい続けるのかを知る、さらなる手掛かりが得られるかもしれません。
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