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モバライダー mobarider

すばる望遠鏡と機械学習で見つけた、星が活発に生まれる形成初期の銀河。 

2020年08月06日 | 銀河・銀河団
すばる望遠鏡の大規模データと機械学習に基づく新手法を組み合わせることで、数億光年という近い距離の宇宙に、形成から間もない銀河“HSC J1631+4426”が発見されました。
観測から分かったのは、この銀河の酸素含有率が、これまでに報告された中で最も小さな値だったこと。
この低い酸素含有率は何を意味しているのでしょうか?
どうやら、この銀河は形成初期にあり、含まれるほとんどの星はごく最近に作られたようです。

すばる望遠鏡で撮影された銀河“HSC J1631+4426”。この銀河の酸素含有率は、これまでに報告された中で最も小さな値だった。この低い酸素含有率は、この銀河に含まれるほとんどの星が、ごく最近に作られたことを意味している。(Credit: 国立天文台/Kojima et al.)
すばる望遠鏡で撮影された銀河“HSC J1631+4426”。この銀河の酸素含有率は、これまでに報告された中で最も小さな値だった。この低い酸素含有率は、この銀河に含まれるほとんどの星が、ごく最近に作られたことを意味している。(Credit: 国立天文台/Kojima et al.)

重い元素を含まない形成初期の銀河

ビッグバンで誕生したばかりの宇宙には、水素とヘリウム、そしてごく少量のリチウムしか存在していませんでした。

でも、長い宇宙の歴史の中で、恒星の中心で起こる核融合反応を通じて、酸素のような重い元素が作られてきました。

そのため、宇宙初期の銀河には重い元素がほとんど含まれておらず、このような形成初期の銀河が現在の宇宙にも存在する可能性があるようです。

今回、東京大学や国立天文台の研究者を中心とする国際研究チームが開発したのは、機械学習を用いた新たな手法でした。

この手法により、すばる望遠鏡“HSC”で撮影された高感度かつ膨大な画像データの中から、形成初期の銀河を探しています。
“HSC(Hyper Suprime-Cam:ハイパー・シュプリーム・カム)”は、すばる望遠鏡に搭載されている超広視野主焦点カメラ。満月9個分の広さの天域を一度に撮影でき、独自に開発した116個のCCD素子により計8億7000万画素を持つ。まさに巨大な超広視野デジタルカメラ。
理論モデルから予想される形成初期の銀河の詳細な色を、繰り返しコンピュータに学習させることにより、形成初期の銀河の候補となる天体を絞り込んでいるんですねー

その候補天体を、すばる望遠鏡やケック望遠鏡で分光観測して酸素含有率を測定。
すると、ヘルクレス座の方向約4.3億光年彼方に位置する銀河“HSC J1631+4426”の酸素含有率が、太陽のわずか1.6%であることが分かります。
銀河の酸素含有量としては、これまでに報告された中で最も小さなものでした。

酸素の含有率がこれほど低いということは、この銀河の中のほとんどの星が、ごく最近に作られたことを意味しています。

“HSC J1631+4426”にある星の総質量は太陽質量の80万倍。
天の川銀河のわずか10万分の1ほどしかなく、単独の銀河としては極めて軽いことが明らかになっています。

現在、この銀河では星が活発に生まれていて、大部分の星が形成されたのは約1千万年程度という短い時間のようです。

このことから、研究チームが結論付けたのは、“HSC J1631+4426”が形成初期の銀河であること。
この銀河の研究をさらに続けることで、宇宙と銀河の進化を解明するための重要な知見が得られると期待されています。
現在の宇宙に残された形成初期の銀河を発見。(Credit: 国立天文台/Kojima et al.)


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