一人前の恒星になる前段階の星“けんびきょう座AU”を公転する惑星が見つかったんですねー
周囲に微惑星同士の衝突でできた岩石や氷の微粒子からなる円盤“残骸円盤”が、まだ残っている“けんびきょう座AU”。
そのため、惑星がどのように生まれ、どうやって惑星大気を持つようになるのか? っといった惑星と主星がどのように相互作用するかを研究する上で格好の実験室になるようです。
2000万~3000万歳ほどの幼児期の恒星
研究者たちが10年以上にわたって探していた恒星“けんびきょう座AU”を公転する惑星。
この惑星“けんびきょう座AU b”を発見したのは、アメリカ・ジョージ・メイソン大学を中心とする研究チーム。
地球から31.9光年の距離に位置する“けんびきょう座AU”の観測に用いられたのは、NASAの系外惑星探査衛星“TESS”と赤外線天文衛星“スピッツァー”でした。
“けんびきょう座AU”は低温の赤色矮星(M型矮星)で、推定年齢は2000万~3000万歳。
約46億歳の太陽と比べれば幼児期の恒星と言えます。
この段階の恒星は“前主系列星”と呼ばれていて、エネルギーのほとんどはまだ核融合ではなく、自身の重力収縮でまかなわれています。
“前主系列星”としては太陽から2番目に近く、微惑星同士の衝突でできた岩石や氷の微粒子からなる円盤“残骸円盤”が“けんびきょう座AU”の周囲には、まだ残っていました。
そのため、惑星がどのように生まれ、どうやって惑星大気を持つようになるのか?
っといった惑星と主星がどのように相互作用するかを研究する上で、“けんびきょう座AU”は格好の実験室といえます。
まだ、年齢も若く、太陽系の近くにあるM型矮星で、大きな“残骸円盤”に囲まれている“けんびきょう座AU”。
こうした特徴を全て持つ恒星系が見つかったのは、今回が初めてのことでした。
“けんびきょう座AU”には同じ星間ガス雲から同時期に誕生した兄弟がいた
主星である“けんびきょう座AU”の周りを8.46日周期で公転している“けんびきょう座AU b”は、海王星より8%ほど大きく、質量は地球の58倍(木星の0.18倍)以下と見積もらています。
さらに、“けんびきょう座AU”は“がか座β運動星団”と呼ばれる恒星の集団の一員で、この集団の星々は、かつて同じ星間ガス雲から同時期に誕生したと考えられています。
集団の代表メンバーである“がか座β”は“けんびきょう座AU”より大きく温度が高いA型恒星ですが、やはり“残骸円盤”を持っていて、惑星も2個(がか座β b、がか座β c)存在しています。
同じ年齢のはずの“けんびきょう座AU”と“がか座β”ですが、何故かそれぞれの惑星の性質はかなり違っているんですねー
“けんびきょう座AU b”の質量は海王星に近く、主星のすぐそばを回っています。
一方、“がか座β b”と“がか座β c”は“けんびきょう座AU b”より50倍以上重く、それぞれの公転周期は長く21年と33年…
そこで、研究チームが考えているのは、“けんびきょう座AU b”は主星から遠く離れた場所で作られ、現在の軌道まで移動してきたという説。
こうした惑星の軌道が移動する現象は、惑星がガス円盤や他の惑星と相互作用することで起こります。
一方、“がか座β b”の軌道はそれほど移動していないようです。
年齢がほぼ同じなのに両者でこのように違いがあることから、今回の研究では惑星の形成や移動について多くの手掛かりが得られると期待されています。
惑星の存在を検出して公転周期と質量を求める
実は、“けんびきょう座AU”のような恒星で惑星を検出するのは難しいことだったりします。
系外惑星の発見には“トランジット法”という手法が用いられます。
“トランジット法”では、地球から見て惑星が主星の手前を通過(トランジット)するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探ることになります。
ただ、“けんびきょう座AU”のようなタイプの星は強い磁場を持っていて、表面に多くの黒点があり強力なフレアをしばしば発生させています。
こうした黒点やフレアによって星の明るさが絶えず変わっていくことで、“トランジット法”による惑星の発見は難しくなってしまいます。
そこで、研究チームが考えたのは、詳細な解析を行うことで黒点やフレアの影響を観測データから取り除くこと。
これにより、惑星による減光だけを抽出することに成功しています。
ちょっとした問題は、惑星の公転周期を求める時にもありました。
それは、“TESS”がデータを地球に送信するため観測を中断しているときにやってきました。
ちょうどその時、3回のトランジットのうちの2回目の減光が始まってしまうんですねー
研究チームでは、“TESS”が観測できない時間を埋めるため“スピッツァー”の利用を思い立ちます。
“スピッツァー”による観測で、さらに2回のトランジットをとらえ、惑星の公転周期を確定できたわけです。
また、惑星の質量を求めるため“ドップラーシフト法”も使われています。
主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づいたりします。
“ドップラーシフト法”では、この動きによる光の波長の変化“ゆらぎ”を読み取り惑星の質量を計測。
観測に用いられたのは、ハワイにあるケック天文台やNASAの3メートル赤外線望遠鏡“IRTF”、南米チリのヨーロッパ南天天文台といった地上の望遠鏡でした。
“TESS”の観測データからは、今回の惑星とは別のトランジット現象候補も見つかっています。
今年の後半には“TESS”の延長ミッションにより、もう一度“けんびきょう座AU”を観測することができます。
恒星の運動についても、“ドップラーシフト法”による観測が現在も続いているので、新しい発見が期待できますね。
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周囲に微惑星同士の衝突でできた岩石や氷の微粒子からなる円盤“残骸円盤”が、まだ残っている“けんびきょう座AU”。
そのため、惑星がどのように生まれ、どうやって惑星大気を持つようになるのか? っといった惑星と主星がどのように相互作用するかを研究する上で格好の実験室になるようです。
2000万~3000万歳ほどの幼児期の恒星
研究者たちが10年以上にわたって探していた恒星“けんびきょう座AU”を公転する惑星。
この惑星“けんびきょう座AU b”を発見したのは、アメリカ・ジョージ・メイソン大学を中心とする研究チーム。
地球から31.9光年の距離に位置する“けんびきょう座AU”の観測に用いられたのは、NASAの系外惑星探査衛星“TESS”と赤外線天文衛星“スピッツァー”でした。
“けんびきょう座AU”(左)と今回見つかった惑星“けんびきょう座AU b”(右)のイメージ図。(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center/Chris Smith (USRA)) |
約46億歳の太陽と比べれば幼児期の恒星と言えます。
この段階の恒星は“前主系列星”と呼ばれていて、エネルギーのほとんどはまだ核融合ではなく、自身の重力収縮でまかなわれています。
“前主系列星”としては太陽から2番目に近く、微惑星同士の衝突でできた岩石や氷の微粒子からなる円盤“残骸円盤”が“けんびきょう座AU”の周囲には、まだ残っていました。
そのため、惑星がどのように生まれ、どうやって惑星大気を持つようになるのか?
っといった惑星と主星がどのように相互作用するかを研究する上で、“けんびきょう座AU”は格好の実験室といえます。
まだ、年齢も若く、太陽系の近くにあるM型矮星で、大きな“残骸円盤”に囲まれている“けんびきょう座AU”。
こうした特徴を全て持つ恒星系が見つかったのは、今回が初めてのことでした。
“けんびきょう座AU”には同じ星間ガス雲から同時期に誕生した兄弟がいた
主星である“けんびきょう座AU”の周りを8.46日周期で公転している“けんびきょう座AU b”は、海王星より8%ほど大きく、質量は地球の58倍(木星の0.18倍)以下と見積もらています。
さらに、“けんびきょう座AU”は“がか座β運動星団”と呼ばれる恒星の集団の一員で、この集団の星々は、かつて同じ星間ガス雲から同時期に誕生したと考えられています。
集団の代表メンバーである“がか座β”は“けんびきょう座AU”より大きく温度が高いA型恒星ですが、やはり“残骸円盤”を持っていて、惑星も2個(がか座β b、がか座β c)存在しています。
同じ年齢のはずの“けんびきょう座AU”と“がか座β”ですが、何故かそれぞれの惑星の性質はかなり違っているんですねー
“けんびきょう座AU b”の質量は海王星に近く、主星のすぐそばを回っています。
一方、“がか座β b”と“がか座β c”は“けんびきょう座AU b”より50倍以上重く、それぞれの公転周期は長く21年と33年…
そこで、研究チームが考えているのは、“けんびきょう座AU b”は主星から遠く離れた場所で作られ、現在の軌道まで移動してきたという説。
こうした惑星の軌道が移動する現象は、惑星がガス円盤や他の惑星と相互作用することで起こります。
一方、“がか座β b”の軌道はそれほど移動していないようです。
年齢がほぼ同じなのに両者でこのように違いがあることから、今回の研究では惑星の形成や移動について多くの手掛かりが得られると期待されています。
惑星の存在を検出して公転周期と質量を求める
実は、“けんびきょう座AU”のような恒星で惑星を検出するのは難しいことだったりします。
系外惑星の発見には“トランジット法”という手法が用いられます。
“トランジット法”では、地球から見て惑星が主星の手前を通過(トランジット)するときに見られる、わずかな減光から惑星の存在を探ることになります。
ただ、“けんびきょう座AU”のようなタイプの星は強い磁場を持っていて、表面に多くの黒点があり強力なフレアをしばしば発生させています。
こうした黒点やフレアによって星の明るさが絶えず変わっていくことで、“トランジット法”による惑星の発見は難しくなってしまいます。
そこで、研究チームが考えたのは、詳細な解析を行うことで黒点やフレアの影響を観測データから取り除くこと。
これにより、惑星による減光だけを抽出することに成功しています。
ちょっとした問題は、惑星の公転周期を求める時にもありました。
それは、“TESS”がデータを地球に送信するため観測を中断しているときにやってきました。
ちょうどその時、3回のトランジットのうちの2回目の減光が始まってしまうんですねー
研究チームでは、“TESS”が観測できない時間を埋めるため“スピッツァー”の利用を思い立ちます。
“スピッツァー”による観測で、さらに2回のトランジットをとらえ、惑星の公転周期を確定できたわけです。
また、惑星の質量を求めるため“ドップラーシフト法”も使われています。
主星の周りを公転している惑星の重力で、主星が引っ張られると地球からわずかに遠ざかったり近づいたりします。
“ドップラーシフト法”では、この動きによる光の波長の変化“ゆらぎ”を読み取り惑星の質量を計測。
観測に用いられたのは、ハワイにあるケック天文台やNASAの3メートル赤外線望遠鏡“IRTF”、南米チリのヨーロッパ南天天文台といった地上の望遠鏡でした。
“TESS”の観測データからは、今回の惑星とは別のトランジット現象候補も見つかっています。
今年の後半には“TESS”の延長ミッションにより、もう一度“けんびきょう座AU”を観測することができます。
恒星の運動についても、“ドップラーシフト法”による観測が現在も続いているので、新しい発見が期待できますね。
NASAの“TESS”や“スピッツァー”により幼年期の恒星を回る惑星を発見。(Credit: NASA's Goddard Space Flight Center) |
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