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太陽系は天の川銀河を約2億年で1周している

2012年10月07日 | 太陽系・小惑星
天の川銀河は、大まかな分類でいえば渦巻銀河だということが分かっています。
でも、その正確な大きさや形状、回転速度などは、まだはっきりと分かっていないんですねー
これは、天の川銀河を外から見た姿は誰にも分からないからです。
今回の研究で用いられたのは、複数のアンテナを組み合わせる電波干渉計という仕組み。
天の川銀河にある星を測定し、天の川銀河の中心から太陽系までの距離や銀河の回転速度が、これまでに無い精度で得られたそうです。

複数のアンテナを組み合わせて巨大な望遠鏡を作る

天体の距離を仮定なしに測定するには、地球が太陽の周りを周回することによって発生する三角視差がよく使われます。
三角視差は、遠い天体では小さく近い天体は大きいので視差を測れば距離が分かる。
三角視差は、遠い天体では小さく、近い天体では大きくなるので視差を測れば距離が分かる。
三角視差とは測量などに用いられる三角法のようなもので、太陽を中心として地球が公転すると、目標とする天体の見かけ上の位置がズレることを利用した測定法です。

でも、この三角視差は遠くの天体では、とても小さくなるんですねー
なので、これまで三角視差が計測できた領域は、太陽系から1000光年以内に留まっていました。
これは直径約10万光年の天の川銀河の中では、ごくわずかな領域といえます。

そこで、国立天文台の研究チームでは他の方法を用いることにします。
それは、4か所に設置された電波望遠鏡の受信データを組み合わせることで、見かけ上1つの巨大な望遠鏡を作るというものでした。
VERAの望遠鏡の配置図。
VERAの望遠鏡の配置図。
複数のアンテナを組み合わせて、巨大な望遠鏡を合成する仕組みを電波干渉計といいます。
すでに、水沢局(岩手県)、入来局(鹿児島県)、小笠原局(東京都小笠原)、石垣島局(沖縄県)の直径20メートルの電波望遠鏡からなる電波干渉計“VERA”を用いて、天体までの距離を精密に計測し、天の川銀河の3次元立体構造の研究が進められています。
このように遠い場所にある複数の電波望遠鏡が協力して観測を行うことを“VLBI(Very Long Baseline Interferometry : 超長基線干渉計)”という。
今回、国立天文台の研究チームも、電波干渉計のデータを用いて距離を測定。
“VERA”で観測した星形成領域の19天体の観測結果と、アメリカの電波干渉計“VLBA”やヨーロッパの電波干渉計“EVN”の観測データを用いて調べられたのは、合計52天体の距離と運動でした。
外から見た天の川銀河。赤印は計測された52の天体。
外から見た天の川銀河。赤印は計測された52の天体。
これらの天体の距離と運動から、天の川銀河の基本尺度になる銀河中心距離(太陽系から天の川銀河の中心までの距離)と、太陽系の場所での銀河回転速度を高い精度で得ることに成功しています。
天の川銀河の基本尺度。距離と速度から太陽系は、天の川銀河を約2億年で1周することが分かった。
天の川銀河の基本尺度。距離と速度から太陽系は、天の川銀河を約2億年で1周することが分かった。

銀河の回転を測ると質量が分かってくる

今回得られた銀河中心距離は約26100±1600光年。
これは推奨値の約27700光年と誤差の範囲内でほぼ一致していました。
ただ、今回の測定はより高精度な直接測定の結果。そこが重要な点になります。

また、太陽系の位置における銀河回転速度は、秒速240±14キロです。
こちらは、1985年以来の国際天文学連合の推奨値である秒速220キロよりも大きな値になっています。

さらに、これらの基本尺度に加えて、天の川銀河の回転速度が銀河中心距離1万~5万光年の間でほぼ一定であることも分かりました。

一般に銀河の回転速度は、銀河の重力との釣り合いで決ります。
なので、銀河の回転を測ることは、銀河の質量を測ることにもなるんですねー

今回得られた最新の銀河回転速度を用いて、太陽系よりも内側の天の川銀河質量を求めてみると、これまでの値を用いた場合に比べて約20%も大きいことが分かります。
これは、この領域にある暗黒物質の量が、これまで推定されていたものより多くなることを意味しています。

いまのところ暗黒物質はミクロな素粒子だとする説が主流です。
実際、地球に降り注ぐ暗黒物質粒子を直接とらえようとする実験が、素粒子実験物理学で進められています。

今回の研究結果は、地球に降り注ぐ暗黒物質粒子の数や速さにも関わってくるものなので、素粒子物理学実験にもインパクトを与えるものになります。

2013年には、銀河系の非常に高精度の3次元地図をつくることを目的とした位置天文衛星“ガイア”が打ち上げ予定です。
これに日本とアメリカ、ヨーロッパの電波干渉計を用いた観測結果を合わせると…
今後10年、天の川銀河の解明が飛躍的に進むはずですよ。


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