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ブラックホールの質量や自転を知るには? 恒星がブラックホールに破壊されるときが観測のチャンス

2019年01月25日 | ブラックホール
3億光年彼方の銀河の中心で起こった、恒星が超大質量ブラックホールに破壊される現象。

このような現象では、恒星の残骸がブラックホールに落ち込んでいくときにはX線が放射されるんですねー
そのX線を観測してみると、X線が放射される周期や期間が分かり、ブラックホールの自転速度も調べることができそうです。


恒星がブラックホールに破壊されるとX線が放射される

大質量銀河の中心には、太陽の数百万倍から数億倍の質量を持つ超大質量ブラックホールが存在しています。

こうした超大質量ブラックホールのすぐ近くを恒星が通りかかると、ブラックホールの強力な潮汐力によって恒星は破壊されて飲み込まれていくことになります。

残骸は渦を巻くようにブラックホールへ落ち込んでいくので、この渦巻状の円盤を降着円盤と呼びます。

さらに、降着円盤内を高速で回転する残骸は、摩擦熱によって電離しプラズマ状態へ。
電離したガスは円盤内を回転することで強力な磁場が作られ、降着円盤からは荷電粒子のジェットが噴射しX線などで観測されることになります。

ただ、潮汐力による破壊が起こる確率は、1つの銀河当たり数十万年に1回ほど…
珍しい現象なんですが、観測できればブラックホールの質量や自転について知ることができます。

ブラックホールと銀河の間には密接な関係があると考えられているので、ブラックホールの研究は銀河の成長を知ることにもつながることになります。
  ブラックホールの回転速度から分かる、銀河の成長過程
    



ブラックホールの自転速度

2014年11月、かみのけ座の方向約3億光年彼方にある銀河で突発的な増光現象が観測され“ASASSN-14li”と命名されました。

その後、ヨーロッパ宇宙機関のX線天文衛星“XMMニュートン”やNASAのX線天文衛星“チャンドラ”などにより、“ASASSN-14li”から131秒周期でX線バーストが発生していることや、そのバーストが450日以上にわたって継続していたことが観測されます。
○○○
“ASASSN-14li”をとらえた“チャンドラ”によるX線画像(左下)と、
ハッブル宇宙望遠鏡による可視光線画像(画像中央)。
マサチューセッツ工科大学カブリ物理学宇宙研究所の研究チームによると、このような特徴はまさに潮汐力による破壊現象に由来するもので、X線が“事象の地平線”と呼ばれる境界のすぐ外側にある“最深安定軌道”から放射されているという理論モデルと一致しているそうです。
  “事象の地平線”とは、これよりも内側に入ると
  ブラックホールから逃げられない距離範囲


以前の研究から分かっていたのは、“ASASSN-14li”と呼ばれる現象を起こしたブラックホールの質量は、太陽の100万倍あるということ。

今回の研究では、この質量のデータを合わせた解析から、ブラックホールの自転速度が光速の50%以上もあることが明らかになります。

潮汐破壊現象の観測からブラックホールの自転速度が判明したのは、今回が初めてのこと。
今回の研究成果は、潮汐破壊現象がブラックホールの自転を調べるうえで利用できることを示すことになります。

今後、同様の現象がもっと検出され、初期宇宙から現在までのブラックホールの自転を明らかにすることができれば、ブラックホールの年齢と自転との間の関連性についても貴重な情報を得ることができるようです。


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