JAXAの赤外線天文衛星“あかり”による観測で、17個のC型小惑星から水の存在を示す証拠が見つかりました。
これほど多くの小惑星から水を検出した観測結果は世界初。
探査機による直接観測でなく、天文衛星によるスペクトル観測で示した世界初の研究になるようです。
水や有機物を多く含む天体
地球には液体の水が大量に存在しています。
でも、この水が地球の形成初期から存在していたのか?
それとも、後の時代に地球の外から持ち込まれたものなのか?
どちらなのかは、現在もよく分かっていません。
もし、水が地球の外から持ち込まれたものだとしたら、可能性のある天体の1つに小惑星があります。
小惑星は、岩石惑星のように内部が融けて核やマントルに分化していません。
なので、太陽系が出来た当時の状態をそのまま保っている“化石”のような天体だと考えられています。
中でも、C型小惑星と呼ばれる天体は、有機物や水などの揮発性物質を多く含む“炭素質コンドライト”という隕石とスペクトルが似ているので、水や有機物が多く存在する天体だと予想されているんですねー
小惑星探査機“はやぶさ2”が現在探査を行っている“リュウグウ”や、NASAの“オシリス・レックス”が探査している“ベンヌ”もC型小惑星になります。
C型小惑星は、さらにB型小惑星、F型小惑星、G型小惑星に分類され、
NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”が探査を行う“ベンヌ”は、
C型の中ではB型小惑星に分類される。
ただ、これまでに小惑星で水を検出した確実な観測例は、探査機が小惑星を直接訪れて観測した数例のみ…
2016年にNASAの小惑星探査機“ドーン”がC型小惑星に分類されている準惑星“ケレス”の表面に水の氷を発見し、今年“オシリス・レックス”が“ベンヌ”で水を検出しています。
小惑星帯に位置する天体としては最も大きい“ケレス”は、
C型の中ではG型小惑星に分類される。
“リュウグウ”については、表面の水がほぼ枯渇していることが“はやぶさ2”の観測によって分かっています。
探査に行かなくても水の存在を知る方法
直接探査を行わず小惑星に水があるかどうかを調べることはできるのでしょうか?
それには、小惑星の表面で反射される太陽光のスペクトルを観測する必要があります。
結晶の中にヒドロキシ基(水酸基)や水分子を含んでいる“含水鉱物”が小惑星の表面にあると、波長2.7μメーター付近の赤外線が吸収されます。
なので、反射スペクトル中にこの吸収があれば、水が存在する証拠になります。
ただ、この波長域の赤外線は、地球の大気に含まれる水蒸気や二酸化炭素によってほとんど吸収されてしまいます。
そう、地上の望遠鏡では観測できないんですねー
なので、地球大気の影響を受けない衛星を使った観測が必要になるんですねー
赤外線天文衛星“あかり”を使った観測
神戸大学大学院理学研究科のチームは、2008年から2010年まで、JAXAの赤外線天文衛星“あかり”を使って、水がありそうな小惑星66個の分光観測を行っています。
2006年2月22日にM-Vロケットによって打ち上げられた日本初の赤外線天文衛星“あかり”は、赤外線専用の望遠鏡と2種類の観測装置を搭載。
波長1.7μメートルの近赤外線から180μメートルの遠赤外線まで、幅広い波長域の赤外線を高い感度で観測できる唯一の天文衛星でした。
“あかり”は目標寿命の3年を超えて運用されていましたが、
2011年11月24日に停波され運用を終えている。
観測により明らかになったのは、22個のC型小惑星のうち17個で、波長2.7μメートル付近に含水鉱物による吸収が見られること。
このことは、多くのC型小惑星に実際に水が存在することを、スペクトル観測で示した世界初の研究になるんですねー
また、この吸収の強さが小惑星によって異なることや、一部の小惑星では3.1μメートル付近に氷やアンモニア化物による吸収も見られています。
さらに、研究チームが発見したのは、波長2.7μメートルの吸収が強い(含水鉱物が多い)小惑星ほど、吸収のピークの波長が長い方向にズレること。
これは、小惑星ができた後で太陽風や微小隕石の衝突などによって、表面が二次的に加熱されて水が失われた痕跡のようです。
地球にある水の一部は小惑星が運んできたのかも
研究チームは、今回の観測結果からC型小惑星の進化のシナリオを考えています。
太陽系ができたばかりの頃、比較的低温の環境で岩石と氷が集まってC型小惑星が形成された。
その後、氷が解けて液体の水になり、この水が岩石と反応して含水鉱物が作られ、さらに後の時代に二次的な加熱脱水で次第に水が失われていったというもの。
このシナリオにより“ベンヌ”で水が検出された一方で、同じくC型小惑星の“リュウグウ”では、ほとんど水が検出されなかったことも説明できるんですねー
そう、“ベンヌ”に比べて“リュウグウ”は加熱脱水が進んだ段階にあるということです。
さらに、通常は水を含まないと考えられているS型小惑星(岩石質の小惑星)のうち2天体でも、わずかに水による吸収スペクトルが観測されます。
この観測結果について研究チームは、この水はS型小惑星の中にあったものではなく、小惑星の外から持ち込まれたものではないかと考えています。
複数のS型小惑星で小惑星外に由来すると思われる水が検出されたことから、研究チームはある推測をします。
それは、原始の地球でもこれと同じような過程で、地球外から水が持ち込まれたのかもしれないということ。
今回の研究で、少なくとも小惑星に水があることは確実になりました。
地球ができた時代には、現在よりも小惑星の数は多かったはずです。
なので、現在の地球にある水のうち一定の割合は小惑星が運んできたのかもしれませんね。
こちらの記事もどうぞ
小惑星“ベンヌ”の泥の中に水の存在を確認!
探査機“オシリス・レックス”はサンプル採取場所を探し中。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/f6/cc4e75c3dda21d1fb07ed501b69221e3.jpg)
これほど多くの小惑星から水を検出した観測結果は世界初。
探査機による直接観測でなく、天文衛星によるスペクトル観測で示した世界初の研究になるようです。
水や有機物を多く含む天体
地球には液体の水が大量に存在しています。
でも、この水が地球の形成初期から存在していたのか?
それとも、後の時代に地球の外から持ち込まれたものなのか?
どちらなのかは、現在もよく分かっていません。
もし、水が地球の外から持ち込まれたものだとしたら、可能性のある天体の1つに小惑星があります。
小惑星は、岩石惑星のように内部が融けて核やマントルに分化していません。
なので、太陽系が出来た当時の状態をそのまま保っている“化石”のような天体だと考えられています。
中でも、C型小惑星と呼ばれる天体は、有機物や水などの揮発性物質を多く含む“炭素質コンドライト”という隕石とスペクトルが似ているので、水や有機物が多く存在する天体だと予想されているんですねー
小惑星探査機“はやぶさ2”が現在探査を行っている“リュウグウ”や、NASAの“オシリス・レックス”が探査している“ベンヌ”もC型小惑星になります。
C型小惑星は、さらにB型小惑星、F型小惑星、G型小惑星に分類され、
NASAの小惑星探査機“オシリス・レックス”が探査を行う“ベンヌ”は、
C型の中ではB型小惑星に分類される。
ただ、これまでに小惑星で水を検出した確実な観測例は、探査機が小惑星を直接訪れて観測した数例のみ…
2016年にNASAの小惑星探査機“ドーン”がC型小惑星に分類されている準惑星“ケレス”の表面に水の氷を発見し、今年“オシリス・レックス”が“ベンヌ”で水を検出しています。
小惑星帯に位置する天体としては最も大きい“ケレス”は、
C型の中ではG型小惑星に分類される。
“リュウグウ”については、表面の水がほぼ枯渇していることが“はやぶさ2”の観測によって分かっています。
探査に行かなくても水の存在を知る方法
直接探査を行わず小惑星に水があるかどうかを調べることはできるのでしょうか?
それには、小惑星の表面で反射される太陽光のスペクトルを観測する必要があります。
結晶の中にヒドロキシ基(水酸基)や水分子を含んでいる“含水鉱物”が小惑星の表面にあると、波長2.7μメーター付近の赤外線が吸収されます。
なので、反射スペクトル中にこの吸収があれば、水が存在する証拠になります。
ただ、この波長域の赤外線は、地球の大気に含まれる水蒸気や二酸化炭素によってほとんど吸収されてしまいます。
そう、地上の望遠鏡では観測できないんですねー
なので、地球大気の影響を受けない衛星を使った観測が必要になるんですねー
赤外線天文衛星“あかり”を使った観測
神戸大学大学院理学研究科のチームは、2008年から2010年まで、JAXAの赤外線天文衛星“あかり”を使って、水がありそうな小惑星66個の分光観測を行っています。
2006年2月22日にM-Vロケットによって打ち上げられた日本初の赤外線天文衛星“あかり”は、赤外線専用の望遠鏡と2種類の観測装置を搭載。
波長1.7μメートルの近赤外線から180μメートルの遠赤外線まで、幅広い波長域の赤外線を高い感度で観測できる唯一の天文衛星でした。
“あかり”は目標寿命の3年を超えて運用されていましたが、
2011年11月24日に停波され運用を終えている。
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赤外線天文衛星“あかり”による小惑星の近赤外線分光観測(イメージ図)。 |
このことは、多くのC型小惑星に実際に水が存在することを、スペクトル観測で示した世界初の研究になるんですねー
また、この吸収の強さが小惑星によって異なることや、一部の小惑星では3.1μメートル付近に氷やアンモニア化物による吸収も見られています。
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“あかり”で得られた小惑星の近赤外線反射スペクトルの例。 緑色の矢印で示した谷が、水による2.7μメートル付近の吸収。 青の矢印で示した谷は、氷やアンモニア化物による吸収。 |
これは、小惑星ができた後で太陽風や微小隕石の衝突などによって、表面が二次的に加熱されて水が失われた痕跡のようです。
地球にある水の一部は小惑星が運んできたのかも
研究チームは、今回の観測結果からC型小惑星の進化のシナリオを考えています。
太陽系ができたばかりの頃、比較的低温の環境で岩石と氷が集まってC型小惑星が形成された。
その後、氷が解けて液体の水になり、この水が岩石と反応して含水鉱物が作られ、さらに後の時代に二次的な加熱脱水で次第に水が失われていったというもの。
このシナリオにより“ベンヌ”で水が検出された一方で、同じくC型小惑星の“リュウグウ”では、ほとんど水が検出されなかったことも説明できるんですねー
そう、“ベンヌ”に比べて“リュウグウ”は加熱脱水が進んだ段階にあるということです。
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今回の研究結果から推定されるC型小惑星の形成と進化の過程。 |
この観測結果について研究チームは、この水はS型小惑星の中にあったものではなく、小惑星の外から持ち込まれたものではないかと考えています。
複数のS型小惑星で小惑星外に由来すると思われる水が検出されたことから、研究チームはある推測をします。
それは、原始の地球でもこれと同じような過程で、地球外から水が持ち込まれたのかもしれないということ。
今回の研究で、少なくとも小惑星に水があることは確実になりました。
地球ができた時代には、現在よりも小惑星の数は多かったはずです。
なので、現在の地球にある水のうち一定の割合は小惑星が運んできたのかもしれませんね。
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小惑星“ベンヌ”の泥の中に水の存在を確認!
探査機“オシリス・レックス”はサンプル採取場所を探し中。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/f6/cc4e75c3dda21d1fb07ed501b69221e3.jpg)
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