2003年に打ち上げられ、天文学の様々な分野の研究に貢献してきたNASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”。
ついに、最後に残された観測装置の液体ヘリウムが失われ、機体はセーフモードへ移行することに… これにより16年にわたる観測ミッションに幕を閉じました。
“スピッツァー”の運用は、当初想定されていたミッション期間を大幅に超えるもの。 おつかれさまでした。
天文学の様々な分野の研究に貢献
NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”は、“ハッブル宇宙望遠鏡”・X線天文衛星“チャンドラ”・“コンプトンガンマ線観測衛星”とともに、さまざまな波長の電磁波で宇宙を観測する衛星群“グレート・オブザーバトリーズ”の1機として2003年8月に打ち上げられました。
以来、16年にわたって数多くの成果を上げてきた“スピッツァー”ですが、1月31日午前6時30分(日本時間)に機体はセーフモードに移行、すべての科学運用を終了しています。
“スピッツァー”が投入されたのは、地球とほぼ同じ公転軌道で太陽を周回する“人工惑星”の軌道。
1年に約0.1天文単位ずつ地球から遠ざかる速さで公転していました。
ちょうど地球から距離を置いて、追いかけるような位置関係で太陽の周りを公転している“スピッツァー”。
これにより、地球から出る熱放射の影響を避けることができ、より口径の大きな地上望遠鏡を上回る感度を達成していたんですねー
さらに、“スピッツァー”は、これまでの赤外線天文衛星と比べてはるかに暗い天体を観測でき、より遠方の宇宙の姿を私たちに届けてくれました。
“スピッツァー”が貢献していたのは、恒星や惑星の形成、初期宇宙から今日に至る銀河の進化、恒星間チリの組成など、天文学の様々な分野の研究など。
土星を取り巻く未知の巨大な環を発見したのが2009年のこと。
2014年には、できたばかりの惑星系で小惑星同士が衝突した証拠を検出。
こうした天体衝突が太陽系の形成初期にも頻繁に起こり、惑星形成に重要な役割を果たした可能性があることを示すことになりました。
2016年には、“スピッツァー”と“ハッブル宇宙望遠鏡”による観測から、これまでに検出された中で最も遠い銀河の画像が得られています。
“スピッツァー”は系外惑星の発見や惑星大気の研究でも大きな成果を挙げています。
特に、2017年にみずがめ座の方向約40光年の彼方にある赤色矮星“TRAPPIST-1”の周りに7個の地球サイズの惑星を発見したことは、最も広く知られた“スピッツァー”の成果の1つでした。
赤外線観測では観測装置を極低温に冷却する必要がある
一般的に、赤外線観測では望遠鏡や観測装置を極低温に冷却する必要があります。
これは、温度を持つ物体はすべて赤外線を放射するので、望遠鏡や観測装置自身が出す赤外線がノイズとなって観測の妨げになるからです。
“スピッツァー”が冷媒に用いているたのは液体ヘリウム。
でも、液体ヘリウムは極めて蒸発しやすいんですねー
なので、搭載されている液体ヘリウムがすべて失われた時点で、本来の性能での運用は終了になってしまいます。
実は“スピッツァー”の初期観測ミッションは、すでに終了しています。
“スピッツァー”には3種類の観測装置が搭載されているのですが、このうち“赤外線分光計(IRS)”と“多波長撮像光度計(MIPS)”のヘリウムが2009年に尽きたからです。
この時点で“スピッツァー”のミッションは成功したと判断。
初期の科学目標を達成してさらに成果を積み重ねている状態でした。
延長ミッションで得られた画期的な成果
でも、運用チームはまだ諦めていなかったんですねー
最後に残された観測装置“赤外線アレイカメラ(IRAC)”の観測波長4つのうち2つを使って、延長ミッションを行うことにします。
これにより、“スピッツァー”はさらに10年半もの間、画期的な成果を挙げ続けることになります。
これは、当初想定されていたミッション期間を大幅に超えるもの。
史上最遠の銀河の撮影や“TRAPPIST-1”の惑星発見などは、すべて延長ミッションで得られた成果でした。
2016年には、“スピッツァー”のミッションは2018年で終了することが決定します。
これは、次世代の赤外線宇宙望遠鏡である“ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡”の打ち上げを見越してのことでした。
でも、“ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡”の打ち上げは延期されることに…
これにより、“スピッツァー”の運用が今年まで継続されていたわけです。
新しい天文衛星や探査機が打ち上げられる度にワクワクしますよね。
でも、これまで運用され成果を上げてきた天文衛星や探査機が運用を終えるのは寂しいものです。
ただ、“スピッツァー”がこれまでに取得したすべての観測データは無償で一般に公開されています。
なので、期待されるのは、今後も長期にわたってこのデータから数々の発見が続くとこと。
ミッションが終了した“スピッツァー”ですが、天文学への貢献がまだまだ続くといいですね。
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ついに、最後に残された観測装置の液体ヘリウムが失われ、機体はセーフモードへ移行することに… これにより16年にわたる観測ミッションに幕を閉じました。
“スピッツァー”の運用は、当初想定されていたミッション期間を大幅に超えるもの。 おつかれさまでした。
天文学の様々な分野の研究に貢献
NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”は、“ハッブル宇宙望遠鏡”・X線天文衛星“チャンドラ”・“コンプトンガンマ線観測衛星”とともに、さまざまな波長の電磁波で宇宙を観測する衛星群“グレート・オブザーバトリーズ”の1機として2003年8月に打ち上げられました。
以来、16年にわたって数多くの成果を上げてきた“スピッツァー”ですが、1月31日午前6時30分(日本時間)に機体はセーフモードに移行、すべての科学運用を終了しています。
赤外線天文衛星“スピッツァー”(イメージ図) |
1年に約0.1天文単位ずつ地球から遠ざかる速さで公転していました。
ちょうど地球から距離を置いて、追いかけるような位置関係で太陽の周りを公転している“スピッツァー”。
これにより、地球から出る熱放射の影響を避けることができ、より口径の大きな地上望遠鏡を上回る感度を達成していたんですねー
さらに、“スピッツァー”は、これまでの赤外線天文衛星と比べてはるかに暗い天体を観測でき、より遠方の宇宙の姿を私たちに届けてくれました。
“スピッツァー”が貢献していたのは、恒星や惑星の形成、初期宇宙から今日に至る銀河の進化、恒星間チリの組成など、天文学の様々な分野の研究など。
土星を取り巻く未知の巨大な環を発見したのが2009年のこと。
2014年には、できたばかりの惑星系で小惑星同士が衝突した証拠を検出。
こうした天体衝突が太陽系の形成初期にも頻繁に起こり、惑星形成に重要な役割を果たした可能性があることを示すことになりました。
2016年には、“スピッツァー”と“ハッブル宇宙望遠鏡”による観測から、これまでに検出された中で最も遠い銀河の画像が得られています。
“スピッツァー”は系外惑星の発見や惑星大気の研究でも大きな成果を挙げています。
特に、2017年にみずがめ座の方向約40光年の彼方にある赤色矮星“TRAPPIST-1”の周りに7個の地球サイズの惑星を発見したことは、最も広く知られた“スピッツァー”の成果の1つでした。
TRAPPIST-1系のイメージ図 |
赤外線観測では観測装置を極低温に冷却する必要がある
一般的に、赤外線観測では望遠鏡や観測装置を極低温に冷却する必要があります。
これは、温度を持つ物体はすべて赤外線を放射するので、望遠鏡や観測装置自身が出す赤外線がノイズとなって観測の妨げになるからです。
“スピッツァー”が冷媒に用いているたのは液体ヘリウム。
でも、液体ヘリウムは極めて蒸発しやすいんですねー
なので、搭載されている液体ヘリウムがすべて失われた時点で、本来の性能での運用は終了になってしまいます。
実は“スピッツァー”の初期観測ミッションは、すでに終了しています。
“スピッツァー”には3種類の観測装置が搭載されているのですが、このうち“赤外線分光計(IRS)”と“多波長撮像光度計(MIPS)”のヘリウムが2009年に尽きたからです。
この時点で“スピッツァー”のミッションは成功したと判断。
初期の科学目標を達成してさらに成果を積み重ねている状態でした。
延長ミッションで得られた画期的な成果
でも、運用チームはまだ諦めていなかったんですねー
最後に残された観測装置“赤外線アレイカメラ(IRAC)”の観測波長4つのうち2つを使って、延長ミッションを行うことにします。
これにより、“スピッツァー”はさらに10年半もの間、画期的な成果を挙げ続けることになります。
これは、当初想定されていたミッション期間を大幅に超えるもの。
史上最遠の銀河の撮影や“TRAPPIST-1”の惑星発見などは、すべて延長ミッションで得られた成果でした。
2016年には、“スピッツァー”のミッションは2018年で終了することが決定します。
これは、次世代の赤外線宇宙望遠鏡である“ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡”の打ち上げを見越してのことでした。
でも、“ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡”の打ち上げは延期されることに…
これにより、“スピッツァー”の運用が今年まで継続されていたわけです。
新しい天文衛星や探査機が打ち上げられる度にワクワクしますよね。
でも、これまで運用され成果を上げてきた天文衛星や探査機が運用を終えるのは寂しいものです。
ただ、“スピッツァー”がこれまでに取得したすべての観測データは無償で一般に公開されています。
なので、期待されるのは、今後も長期にわたってこのデータから数々の発見が続くとこと。
ミッションが終了した“スピッツァー”ですが、天文学への貢献がまだまだ続くといいですね。
ミッションの12周年を祝って公開された“スピッツァー”による過去の撮影画像(2015年) |
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