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モバライダー mobarider

“重力レンズ効果”を利用せず発見された最遠の星形成銀河のなぞ。 どうして初期宇宙にチリに富んだ銀河が存在しているのか?

2020年02月14日 | 宇宙 space
アルマ望遠鏡による高感度観測でとらえたもの。
それは、ビッグバンから9億7000万年後という初期宇宙に存在した銀河の光でした。
“重力レンズ効果”の助けを借りることなく観測された天体としては最遠の星形成銀河だそうです。


宇宙誕生からわずか9億7000万年後の時代に存在する銀河

星の材料となるチリやガスが大量に含まれている星形成銀河。

ここでは激しい勢いで恒星が生み出されていて、中には星形成率が天の川銀河(1年間で太陽3個分ほど)の1000倍にも達する星形成銀河もあります。

これまで考えられていたのは、このような爆発的星形成が進む銀河は、宇宙の初期段階には形成されないということ。
でも、近年の観測により宇宙誕生から10億年に満たない時代にも、こうした銀河が発見されるようになってきました。

とはいえ、そうした銀河を発見するのは容易ではありません。
その理由の1つが、大量のチリによって星の光が隠されてしまうからです。

今回、このような銀河の研究を進めたのはアメリカ・テキサス大学オースティン校のチーム。
ろくぶんぎ座の方向に位置する“MAMBO-9”と呼ばれる銀河をアルマ望遠鏡で観測しています。

実はこの銀河、10年前に別の観測で発見されていました。
これまで距離が不明だったので、初期宇宙に存在する(遠方にある)かどうかが分かっていなかったんですねー

そして、今回アルマ望遠鏡による高感度観測で明らかになったのは、“MAMBO-9”は宇宙誕生からわずか9億7000万年後の時代に存在する銀河だということでした。
星形成銀河“MAMBO-9”の電波画像。合体の途上にある2つの部分で構成されていて、将来は天の川銀河の100倍以上の星を持つ超巨大銀河へ進化すると考えられている。
星形成銀河“MAMBO-9”の電波画像。合体の途上にある2つの部分で構成されていて、将来は天の川銀河の100倍以上の星を持つ超巨大銀河へ進化すると考えられている。


初期宇宙に見つかったのはチリに富んだ銀河

この観測の大きなポイントは、“MAMBO-9”が“重力レンズ効果”による増光の助けを借りずに観測された最遠のチリに富んだ銀河だということ。

遠方の銀河は、その手前に存在する銀河や銀河団による“重力レンズ効果”を受けて増光、拡大されることで、発見や観測が容易になります。

ただし、“重力レンズ効果”は天体の像を歪めるので、銀河の詳細を把握するのは難しくなるというデメリットもあるんですねー

その点、“MAMBO-9”は“重力レンズ効果”を受けていないので、質量の測定が容易にできたというわけです。

そして分かってきたのが、“MAMBO-9”のガスとチリの総質量が、天の川銀河の星の合計の10倍もあること。
つまり、“MAMBO-9”のほとんどの星がまだ形成されていないということでした。
可視光線で見た“MAMBO-9”のイメージ図。<br>
大量のチリが含まれ、ほとんどの星がまだ形成されていない。
可視光線で見た“MAMBO-9”のイメージ図。
大量のチリが含まれ、ほとんどの星がまだ形成されていない。
銀河内におけるチリは、星が死を迎えた時の副産物でもあり、星はチリの100倍あると想定されています。
でも、“MAMBO-9”ではほとんどの星がまだ形成されていません。

初期宇宙において、どうしたらチリがこれほど早い時期に形成されるのでしょうか? 気になりますね。


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